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製作家/商品名 ショーン・ハンコック Sean Hancock
モデル/品番 Model/No. ハウザー1世モデル model Hauser I
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弦長 Scale Length 647mm
国 Country オーストラリア Australia
製作年 Year 2015年
表板 Top 松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides 中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option 軽量ケース
備考 Notes
ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:セラック
糸 巻:ライシェル
弦 高:1弦 3.9mm /6弦 4.2mm

[製作家情報]
1981年クイーンズランド(オーストラリア)生まれ。デンマークの木材加工業の血筋を引く父キム・ハンコックから11歳の時より製作を学ぶ。1997年16歳の時に彼の楽器がNestle Australia開催のネスカフェ・ビッグ・ブレークで1位を獲得し、これを機に本格的に製作の道を歩むことを決意、その後、Griffith大学にてプロダクトデザインを学びながら製作技術にもさらに磨きをかけてゆきます。

1999年のアメリカ旅行中に多くの名器にじかに触れる機会を得、特にヘルマン・ハウザーのギターに深い感銘を受けた彼は、セゴビアが使用したハウザーI世1937年製のレプリカモデル製作を開始します。そして2007年にはスペインでホセ・ロマニリョス主宰のマスタークラスにも参加し、スペインの伝統工法についての研鑚を積んでいます。

現在は父親のキム、兄のデインとともにHancock Guitarsとして工房を構え、それぞれの嗜好と技術を活かしたラインナップはアーチトップ、アコースティック、ウクレレなどにも及び、ハンドメイドにこだわった高品質ブランドとしてオーストラリア国内はじめ高い人気を獲得しています。


[楽器情報]
ショーン・ハンコック製作のハウザー1世モデル 2015年製Used 表面板は松、横裏板が中南米ローズウッド仕様の1本。
表面板は全体に細かなキズがあり、特に高音側の指板脇からサウンドホールにかけてと駒板下部分などに集中して見られます。横裏板も演奏時に身体が当たる箇所に掻き傷などありますがそれ以外は衣服などによる軽微な摩擦跡のみとなっており比較的綺麗な状態です。横板ボトムのエンドブロック付近に木目に沿って3センチほどの微妙な段差がありますが現状で修理調整等の必要はございません。ネック、フレットなど演奏性に関わる部分も良好です。弦高値は3.2/4.3mm(1弦/6弦 12フレット)でサドル余剰が1.5~2.5mmありますのでお好みに応じてさらに低く調整が可能です。

表面板の力木配置はもちろんハウザー1世オリジナルに準拠したものとなっており、サウンドホール上側(ネック側)に2本、下側(ブリッジ側)に1本のハーモニックバー、左右対称7本の扇状力木とこれらの先端をボトム部で受け止める2本のクロージングバー、ブリッジ位置には駒板とほぼ同じ範囲に薄いプレートが貼られているという全体構造。レゾナンスはF#の少し上に設定されています。

品切れ 定価(税込) : 時価 販売価格(税込) :  660,000 円

製作家/商品名 ヘルマン・ハウザー3世 Hermann Hauser III
モデル/品番 Model/No. セゴビアモデル Segovia No.109
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弦長 Scale Length 645mm
国 Country ドイツ Germany
製作年 Year 1983年
表板 Top 松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides インディアンローズウッド Solid Indian Rosewood
付属品 Option ハードケース
備考 Notes
ネック:マホガニー
指 板:黒檀
塗 装:ラッカー
糸 巻:シェラー
弦 高:1弦 2.8mm /6弦 3.9mm

〔製作家情報〕
ヘルマン・ハウザー Hermann Hauser
20世紀ドイツ最高のギターブランドであり、現在も4代目がその伝統を継承し製作を続けている、クラシックギターの世界では屈指の名門です。ヘルマン・ハウザーI世(1882-1952)が、ミゲル・リョベートが所有していたアントニオ・トーレスとアンドレス・セゴビア所有のマヌエル・ラミレスをベースにして自身のギターを改良し、後に「セゴビアモデル」と呼ばれることになる「究極の」名モデルを製作した事は良く知られています。それはトーレスがギターの改革を行って以降最大のギター製作史における事件となり、その後のギター演奏と製作との両方に大きな影響を与えることになります。1世が成し遂げた技術的な偉業は2世(1911-1988)、更に1958年生まれの3世に受け継がれ、それぞれが独特の個性を放ちつつ、このブランドならではの音色と驚異的な造作精度を維持したギターづくりを現在も続けています。1世はいまやトーレスと並ぶほどの高値がオークションではつけられ、1世のニュアンスにドイツ的な要素を加味した2世の作品もまたヴィンテージギター市場では高額で取引されています。3世はますますその工作精度に磨きをかけながら、長女のカトリン・ハウザーとともに現在も旺盛に製作を続けています。

ヘルマン・ハウザー3世(1958~)が初めてギターを製作したのは1974年、そして翌年地元の弦楽器工房で修行を始めており、ここですでにその技術は優秀だったようで、優れた徒弟に送られる賞を国から授与されるなどしています。この後ドイツ弦楽器製作の中心地とされているミッテンヴァルトの楽器製作学校に入学(父親も同地のヴァイオリン工房で修行)。これと並行して1978年から父であるハウザー2世のもとで製作を始めています。この最初期からそのクオリティはすでに瞠目すべきものがあり、マスタークラフツマンとして円満に製作していたかと思わせるものの、やはり父親の(そして祖父の)あまりにも輝かしい歴史と厳しい指導のプレッシャーは相当なものだったようです。しかし3世はここでただのコピーモデルを製作することに落ち着くことなく、ブランドの美学を十全に継承しながら自身の創意や工夫を凝らしたモデルラインナップを展開してゆきます。それは1980年代から始まり、1988年にハウザー2世が亡くなり正式にこのブランドを継いだ後の1990年代から2000年代にかけて進められてゆくことになるのですが、いわばドイツ性の極限までの洗練化とでもいうべきもので、鍵盤楽器のように整った音響設計、音像はそのクリアネスをさらに増し、さらには楽器本体の造作精度もこの上ないものになってゆく、モダンギターの趨勢には全く与することのない姿勢を保ちながら彼なりの現代性を獲得してゆくことになります。ハウザー家には彼の曾祖父の時から100年以上にわたって受け継がれてきた豊富な良材があり、これらの材を贅沢に使用した豪華な外観もまた3世の楽器の大きな魅力の一つとなっています。

〔楽器情報〕                                   
ヘルマン・ハウザー3世製作の「セゴビア」モデル、1984年製 No.109が入荷いたしました。3世最初期の佳品と呼べる1本。父2世の教えと影響を如実に受けながら、やはり非凡と言える工作精度と音響における確かな完成度は見事なもので、ハウザーブランドの名に恥じぬ個体となっています。1980年代のこの時期(つまり2世存命の時期)の特徴としては軽めなボディと明朗でスペイン的な発音とがあり、これは1世のキャラクターとも通底するもので、1990年代後半以降ドイツ的な傾向を深めてゆくものとは対照的な魅力に溢れたものとして現在も人気があります。

1世が開発したセゴビアモデルをベースにしながら、ここでは3世独自の(おそらくは2世からの影響も受けての)力木構造における試みが為されています。サウンドホール上下に1本ずつのハーモニックバーを配置し、左右対称7本の扇状力木と駒板位置には同じ幅の薄いプレートが貼り付けられているという全体の構造。サウンドホール下側のハーモニックバーはちょうど真ん中(サウンドホール真下の部分)でほんのわずかにネック側に向かって屈折しており、これは2世後期のギターにも見られた特徴です。また通常のセゴビアモデルでは設置されている2本のクロージングバー(ボトム部で扇状力木の先端を受けとめるようにハの字型に配置される)がなく扇状力木がボトム近くまで伸びています。7本の扇状力木は1世そして2世のセゴビアモデルと比べると扇の中心角の角度が小さく、力木が表面板の中央にやや寄り添うようにして配置されているのも特徴と言えます。レゾナンスはG#~Aの間に設定されています。

ハウザー的な特性である、全体に位相差のない定位感のしっかりした音響設計で、適切な重心感覚を持った低音から高音までが均質に、鍵盤的と言ってよいほどのバランスで構築されています。スペイン的な木の感触を持った音像というよりは、しっかりと音楽的に精製されたような音像が心地よい反発感を伴いながら発音されます。ハウザーにおいては時に非常な透徹さで現れるこの音像は、ここではふっくらとした奥行き(オーディトリアム感)があり、ブランドが不可避的に内包している厳しさと彼の優しさとの案配がいかにもこの時期の3世らしい。音の表情もやや明るめで、あくまで気品を失わずロマンティックに表情を変化させてゆくその表現力、スタッカートやスラ―など装飾的な身振りをはじめとする反応性など機能的な面でも秀逸です。

割れ等の大きな修理履歴はなく、表面板は指板両脇やサウンドホール高音側などに軽微な打痕や弾きキズ、駒板下には1弦位置に弦とび跡などありますが概ねきれいな状態、横裏板も衣服等による摩擦が少々あるのみできれいな状態です。ネック、フレットなど演奏性に関わる部分も問題ありません。ネックシェイプは薄めのDシェイプ、ネックとヘッドはVジョイント方式で接合されています。弦高値は2.8/3.9mm(1弦/6弦 12フレット)でサドル余剰は0.5~1.0mmとなっています。糸巻はドイツの高級メーカーScheller 製に交換されており、現状で動作状況は良好です。重量は1.60㎏。


新入荷 定価(税込) : 時価 販売価格(税込) :  お問い合わせ下さい。

製作家/商品名 クリストファー・ディーン Christopher Dean
モデル/品番 Model/No. No.326
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弦長 Scale Length 650mm
国 Country イギリス England
製作年 Year 2003年
表板 Top 松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides 中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option ハードケース
備考 Notes
ネック:セドロ
指 板:黒檀
塗 装:表板 セラック /横裏板 ラッカー
糸 巻:ロジャース
弦 高:1弦 3.0mm /6弦 3.6mm

[製作家情報]
クリストファー・ディーン Christopher Dean 1958年生まれ。イギリス、オックスフォードに工房を構える。10代の頃よりギターを演奏していましたが、17歳の時にプレゼントされたIrving Sloane のギター製作マニュアルを読んだことをきっかけに製作への興味を持ち始めます。1979年には有名なLondon College of Furnitureに入学し3年間楽器製作についての基礎を学びます(同校はゲイリー・サウスウェル、マイケル・ジーらの出身校でもあります)。ここでのカリキュラムにはホセ・ルイス・ロマニリョスやポール・フィッシャーの工房での実地研究も含まれていたことがきっかけになり、卒業後1年間ニュージーランドで家具製作に従事したのちに1982年フィッシャーの工房に職人として入ります。ディーン自身はフィッシャーのことを師として尊敬し実際に多くを学んでゆきましたが、フィッシャーはこの青年の成熟した感性と技術をすぐに見抜き、わずか3か月の「研修期間」のあとすぐに正式な職工としてフィッシャーラベルのギター製作を託すことになります。ここで充実した3年間を過ごした後に独立し自身の工房を設立、現在に至ります。

その作風は師であるフィッシャーや、さらにさかのぼってデヴィッド・ルビオをも想起させる堂々たる外観とたっぷりと濃密な艶を含んだ音色、力強い響きなどが挙げられますが、そうした彼の出自に直接つながるラインとは別にフランスのフレドリッシュ、トーレス、ハウザーからも多くのインスピレーションを得ており、とりわけサントス・エルナンデスからの大きな影響を受けています。1929年製のサントスギターを修繕する機会を得た彼は実地にオリジナルの構造を研究し、その後すぐれたサントスモデルを発表。憧れてやまないと公言する伝説的ギタリスト アンドレス・セゴビアへのオマージュさえも含んだすぐれたモデルとして高い評価を得ています。


[楽器情報]
クリストファー・ディーン製作 2003年製 No.326 Usedの入荷です。伝統的であることの必然的な多様性を十分に認識しているこのイギリス屈指の製作家の、古風なものと新しい感性とが互いの個性を認め合いながら同居しているような、独特の魅力のある一本。

表面板力木設計は、サウンドホール上側(ネック側)に長短2本のハーモニックバーとこれらに挟まれたスペースいっぱいに補強板が貼られ、下側(ブリッジ側)には1本のハーモニックバー、サウンドホール周りには同心円状に円形の補強板が貼られておりその一部は下側ハーモニックバーを通過して円周を継続させています。扇状力木は左右対称に5本、駒板の幅に収まるようにセンターに寄り添うような配置。駒板サドル位置には駒板幅と同じ長さのバーを設置し(つまり5本の扇状力木の設置されている範囲にちょうど収まるように)、5本の力木の中央3本はこのバーを貫通するような形になっています。5本の力木のうち両外側の計2本はサウンドホール下のハーモニックバーを貫通してホール縁付近まで延伸し、ボトム側も後述するクロージングバーの端を通過してボトムまで伸びています。
2本のクロージングバーがハの字型に配置されていますが、通常は扇状力木すべての先端を受け止めるようにして設置されるのですが、ここでは5本の力木の範囲内に収まるように短く、実際に先端を受けとめているのはセンターの中央の3本のみとなっています。レゾナンスはG#の少し下の設定になっています。

駒板サドル位置にバーを設置し5本の力木と交差させるという配置関連性はあのフランスの名工ロベール・ブーシェの特徴的な設計を思い起こさせますが、ディーンはここでバーの形状やサイズ(ブーシェのバーは表面板横幅いっぱいの長さで、低音側と高音側の高さを変化させていますが、ディーンは先述の通り駒板の幅に収まっており、高さも低めで一定にしてあります)交差部分の方法などを独自に設定しています。またクロージングバーの設置もブーシェには(初期のトーレス設計の時期を除いては)見られない設計であるばかりか、ディーンの場合はその配置自体に特徴があり、あえて言えば同じフランスのダニエル・フレドリッシュとの関連性が見て取れます。

そしてここで聴くことのできる音色はそうしたブーシェ的な要素を幾分か感じさせつつも、ディーン固有の感性とイギリス的資質が現れたもの。全体的にストイックなまでに音色の華やかさを抑えながらも、身振りが非常に雄弁なので音楽自体の表情はとても豊かになります。特に高音の、木を叩いたような発音と濃密な音像は時にギター以上の何かのような佇まいを聴かせ(この点でデビッド・ルビオ初期の「銀鐘のような」高音を思わせもします)、これが十分な強さとうねりを持ちながらもやはりあくまでもストイックな低音の響きに支えられるその対照とバランス感は大変に魅力的。そしてそれぞれの音像そのものに独特のエコー感があり、これこそはあのブーシェ的な特徴が現れた部分と言えます。タッチに対する反応も実に心地よく、音量と表情変化に関するリニアニティが高いことに加え、弦の張りも弱めから中庸なので演奏時のストレスをあまり感じません。

よく弾き込まれていることもあり、表面板は全体に(特に高音側)弾きキズ、スクラッチ跡、大小の打痕等多く見られます。ネック裏は爪による塗装摩耗を部分的にタッチアップした跡が数か所あります。裏板は演奏時に胸の当たる部分にタッチアップ補修歴、横板のボトム部分に割れ補修歴があります。ネックは低音側はほんのわずかに順反りですが標準設定の範囲内、指板とフレットは1~5フレットでやや摩耗していますが演奏性には影響のない範囲です。指板は高音側20フレット仕様。ネック形状は薄めのDシェイプ、弦高値は3.1/3.mm(1弦/6弦 12フレット)で現在値でも十分に弾きやすく感じますがサドル余剰が2.0mmありますのでお好みに応じてさらに低く設定することが可能です。糸巻はカナダの高級ブランドRodgers製を装着、こちらも現状で動作状況は良好です。


品切れ 定価(税込) : 時価 販売価格(税込) :  880,000 円

製作家/商品名 ヘロニモ・ペーニャ・フェルナンデス Jeronimo Pena Fernandez
モデル/品番 Model/No. Especial
001_JeronimoPF_02_178
弦長 Scale Length 670mm
国 Country スペイン Spain
製作年 Year 1978年
表板 Top 杉 Solid Ceder
横裏板 Back & Sides 中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option ハードケース
備考 Notes
ネック:セドロ
指 板:黒檀
塗 装:ラッカー
糸 巻:フステーロ
弦 高:1弦 2.8mm /6弦 3.9mm

[製作家情報]
ヘロニモ・ペーニャ・フェルナンデス Jeronimo Pena Fernandez(1933~)スペイン、アンダルシア州のハエン県、マルモレホに生まれ、同地に工房を構える製作家。農家の子として育ちますが、9歳の時に大工の工房に弟子入りし(この工房ではしばしば地元の演奏家たちの楽器も修理していたようです)、ここで木工と装飾彫刻を学んでゆきます。幼少期からギターには興味を持っており、1950年代には独学でギターを作り始めています。それら初期の作の一つがフラメンコギタリストPepe Marchenaを通じてある数学教授兼コレクターのもとに渡り、その出来栄えに感動した彼は自身のコレクションから勉強のために銘器を貸し与えるとともに、フレッティングについての数学的な助言を与えるなどしています。1967年(1966年と記載している文献もあります)にはギター製作家として完全に独立して仕事をするようになりますが、ここに至るまでやはり全くの独学で製作技法を学んでいたものの、その木工技術の精密さ、音とデザインの独創性、すぐれた演奏性など楽器としてのトータルな完成度の高さによって評価と人気を得てゆくことになります。

1993年には自身の製先技法を詳細に記した著書「El Arte de un Guitarrero Espanol」を上梓しており、書中では大工工房でみっちりと修行した彼らしく木材の適正な伐採時期(彼によると1月の、満月から一日経った最初に欠ける日に伐採するのが最適だという)から極めてユニークな内部構造の設計についてなどが語られています。

彼のギターの特徴はまずその外観において、ヘッドと駒板の彫刻、厳選された木材の美しさ、やや大きめなサイズ感とその全体の比類の無い威容、エレガンスにまずはあると言えます。加えて内部構造ではアントニオ・デ・トーレスの伝統的なスペイン工法を土台としながら、より緻密で複雑な設計が為され、それは音響において彼がむしろアーティスティックな感性において追求し続けた音の丸み(redondez)を体現するものとして発想されているがゆえの、ある種数学的な有機性によって統一された極めて美しいものとなっています。またこうした独創性が決して発想の特異さのみに堕することなく、楽器として音楽的な豊かさに帰結しているところはやはり特筆すべきでしょう。

フラメンコとクラシックの両方を製作し、フラメンコではマノロ・サンルーカルらの名手が使用しそのカテゴリーでの名声が高まりますが、杉材の荘重な佇まいが印象的なクラシックがむしろ現在は人気のアイテムと言えるでしょう。付言すれば、イギリスのヘヴィメタルアーティストOzzy Osbourneの初期バンドメンバーであった夭折の天才ギタリストRandy Rhodes(彼は優れたメタルギタリストであると同時にクラシックの正統な教育も受けていました)が1979年製のヘロニモ・ペーニャ製作のクラシックモデルを愛用していたことで、ハードロックファンにはいまも伝説的かつ垂涎のアイテムの一つとなっています。

[楽器情報]
ヘロニモ・ペーニャ・フェルナンデス製作、1978年製 Especial モデル。非常に状態の良い美品Usedが入荷致しました。このブランドの符牒とも言える尖塔形のヘッドシェイプではなく、トーレスを思わせるスタイルで彫刻のデザインも異なります。またラベルも羊皮紙の巻物を紐解いたようなレトロなデザインでこれも彼の通常モデルとは異なり、Especialモデルのみの仕様のようです。ヘッドと駒板などの、印象的ですがしかしぎりぎりのところで抑制されたデザインの彫刻や意匠、彼の面目躍如たる厳選された材(おそらくSequoia杉を使用した表面板の赤みの深さ、横裏板は野趣溢れる中南米ローズウッドの組み合わせ)の美しさ、たっぷりとした容量のあるボディながらしかしスマートさを感じさせるきりっとした外観がやはり素晴らしい。指板エンド部分もささやかな木彫が施され、サウンドホールラベルを慎ましく引き立てていることも特筆すべき点でしょう。

実に特徴的な内部構造を持ったギターです。基本となるのはトーレス的なハーモニックバーと扇状力木の組み合わせ。サウンドホール上下に一本ずつのかなり強固なハーモニックバーを設置していますが、このうち下側のほうのバーはサウンドホールの真下部分を頂点として大きくネック方向に湾曲して設置されています。またネック脚を貫通するようにして1本、そしてネック脚と上側ハーモニックバーとの間にも1本の短くやや繊細な造りのバーを設置。下側ハーモニックバーの低音側のほぼくびれに近い部分からは同じように強固な造りのバーが横板に向かって斜めに下がってゆくようにしかもやはり湾曲して設置されています。サウンドホール周りにはまず一枚の補強板が貼られた上に高音側と低音側それぞれに一枚ずつの幅の狭い補強板が貼られているという二層構造。そしてボディ下部は左右対称5本の扇状力木と3本の等間隔に設置されたバー(これらはハーモニックバーよりも細く低い形状)とが交差しており、そのグリッド状になった枡目の一つ一つに対角線を結ぶようにしてX状の力木が設置されています。この小さなX状力木はサウンドホールの高音側と低音側にも(補強板縁から横板との範囲を覆うように)設置されています。これらXの延長線をつなげてゆくとちょうど表面板下部全体がモダンギターの特徴的な構造の一つラティスブレーシングと同じような格子状配置になるのが興味深い(ちなみにオーストラリアの製作家Greg Smallman が格子状力木を実用化したのも1970年代後半であり、名手ジョン・ウィリアムスが使用したのが1981年製で世界中に認知されるのは1980年代以降であるから、ヘロニモ・ペーニャとスモールマンの直接の影響関係は考えにくいのですが、両者の同時代的な進歩的精神の偶然の一致はギターの製作史を俯瞰してみると非常に象徴的なものを感じさせもします)。また裏板には両横板を繋ぐ計5本のバーと、センターの接ぎ部分にやはり二層構造で補強プレートが設置されている他、高音側と低音側のボトムからネック付け根までを繋ぐ各一本の補強板(裏板と同じ素材で作られている)がほんのわずかに湾曲して設置されてています。レゾナンスはF#とGの間に設定されています。

表面板のはスタンダードなサイズですが、ボディ厚みがアッパー部で10.6cm、ボトム部で11cmあるその容量の大きさと、木材の性質を十全に活かした響き。ふっくらとした奥行きを持ち、レゾナンスが低めながら低音に偏ることがなくむしろ高音域に渡るまで全体に整った、そして非常に洗練された統一感があり、構造的に格子状力木と近似しているせいか、弾性感をともなった、表面板から直に立ち上がってくるような発音が心地よい。音量はしかしモダンギターのような過度に増幅されたような感覚はなく、あくまでも自然に豊かに響きます。演奏において、特に高音の輪郭のはっきりした艶やかな音像が、十分なサスティーンと奥行きを持ちながらまるで形の整った玉のように連なってゆくのがなんとも魅力的で、それを低音の(低音自体も非常に引き締まった音像なのですが)たっぷりした響きが支えるような全体の音響はやはりスペインならではと言えるでしょう。

(コンディションについて)
表面板は駒板下1弦側に弦とび跡がありますが、その他は指板脇に数か所の軽微なスクラッチあとと衣服等による微細な摩擦あとのみで、横裏板もほぼ無傷に近く、年式を考慮すると全体に非常な美品と言える一本。割れ等の大きな修理や改造等の履歴はありません。ネックもほぼ真直ぐを維持しており、フレットも適正値、糸巻きはスペインの老舗ブランドFusteroを装着し、こちらも動作状況に問題ありません。ネックは普通の厚みのDシェイプ。ネックの差し込み角、ブリッジの設定などが絶妙で、670㎜の長いスケールを全く感じさせてない左手の演奏性。弦高値は2.8/3.9mm(1弦/6弦 12フレット)で、サドル余剰は0.5~1.0mm。弦の張りはスケールの割には中庸からむしろ弱めで、この点でも左手のストレスが軽減されています。重量は1.9㎏。


定価(税込) : 時価 販売価格(税込) :  お問い合わせ下さい。

製作家/商品名 マイケル・オリアリー Michael O’Leary
モデル/品番 Model/No. No.192
001_OLearyM_02_214
弦長 Scale Length 640mm
国 Country アイルランド Ireland
製作年 Year 2014年
表板 Top 松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides 中南米ローズウッド合板 South American Rosewood
付属品 Option オリジナルハードケース
備考 Notes
ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:表板 セラック /横裏板 ラッカー
糸 巻:ロジャース
弦 高:1弦 3.1mm/6弦 4.1mm

[製作家情報]
マイケル・オリアリー Michael O’Leary アイルランド、キルケニーの生まれ。現在はカーロウ県に工房を構える、同国を代表する製作家。ギター演奏を能くした父親の影響で自身も幼少の頃よりギターに親しみ、やがて木工への興味と両立できる楽器製作へと彼を導くことになります。のちに息子のアレックが工房スタッフに加わり、デザイン・テクノロジーの学士号を有する彼はその知識とイノヴェイティヴな発想をギター製作に応用して着実な成果をあげています。マイケルとアレックの二人はまた同国におけるクラシックギター文化の発展と発信にも積極的で、The Guitar Festival in Ireland を主宰し多くの世界的名手が交流する機会を提供するとともに自身の製作におけるギタリストたちからの極めて有効なフィードバックを獲得できる場としても機能させています。伝統性と同時に革新性に対しても柔軟であった彼らはやがてスペイン的工法とオーストラリアに発祥を持つLattice(格子状)構造によるモダンなスタイルとの融合という発想に至り、コンサートホールにおけるパフォーマンス性の高さと同時に繊細な表現力を併せ持つギターへと着地させます。そのギターは名手ベルタ・ロハスやシャロン・イスビンが愛用し、デビッド・ラッセルが激賞することとなる、現代における優れたギターの仲間入りを果たします。世界的な名声を獲得した後も年に10本にも満たない丁寧な手作りの作業を今も継続しており、マーケットに出ることの貴重な楽器となっています。

[楽器情報]
マイケル・オリアリー 2014年製 Used の入荷です。伝統性とモダンの融合を標榜するこのブランドの特徴が構造的にも音色的にも円満に現れた秀作です。内部構造的には、表面板のくびれ部から上はトラディショナルな、下はモダンな設計。サウンドホール上側(ネック側)に2本のハーモニックバーとサウンドホールの直径と同じくらいの幅の補強板を設置。この2本のバーは高音側と低音側とにそれぞれ一か所ずつ開口部が設けられています。そしてホール下側(ブリッジ側)は1本のハーモニックバーを設置。ネック両脇の肩の部分からサウンドホール下側のほうのバーにまで、高音側と低音側それぞれ2本の力木が垂直に交差するように(つまり表面板の木目と同じ方向に)して設置されており、サウンドホール上側の2本のバーの開口部をくぐり抜けるような設計になっています。そしてホール下側バーからボトムにかけてのエリアは9+9本の力木が互いに交差する格子状力木構造(Lattice bracing system)となっておりそれぞれの力木は高さが1~3㎜ほどの薄めの成形で上部がカーボンで補強されています。この格子は表面板の木目に対しおよそ45度の角度で交差しており、ギターを正面から立てて見たとして枡目が菱形になるような配置関係になっています。この表面板のくびれから上部分の構造はホセ・ルイス・ロマニリョスの、そして下側の格子状構造の部分はオーストラリアの製作家グレッグ・スモールマンにその規範を見て取ることができます。レゾナンスはG#~Aの間に設定されています。ボディの組み立てとしては裏板は厚みのあるココボロをアーチ型に成形して(内側にバーは一本も設置していません)塗装はラッカー、表板は非常に薄く塗装もセラックで仕上げられています。また表面板と横板との接合部分には大小のペオネス(断面が三角形をした小型の木製ブロック)を交互にして設置しており、これもまたロマニリョス的構造となっています。

格子状構造のギター特有の空気を多く含んだような響きですが音像は基音がくっきりとしており、発音も表面板の震えというよりはボディの容量を十分に活かしながら引き締まった音が出てくるようなスペインギター的感触。モダンギターならではの非常な音圧と鋭敏な反応を備えつつ、あくまでも奏者の自然な感覚でドライヴしてゆくような適度なレスポンスが心地良い。反応の鋭敏さは音色の変化についても言え、それは表情の変化や移ろいというよりは音そのものがタッチによって別のものに変わってしまうかのように純機能的なもの。音像には(特に高音は)柔らかな触感があり、穏やかでそして凛として、音色は常に明るい。和音では深い奥行きとさすがと思わせる迫力が生まれますが、あくまでも音は濁らず、その調和をクリアに聴かせます。全体の音響としてのバランスも各弦各音間の均質性があり、この点でも秀逸な一本です。

裏板の木目に沿って割れの補修あとがありますが、恐らくは出荷前の製作時からによるもので、現状で全く使用には問題ありません。表面板は駒板下の1弦とび跡のほか、わずかに弾きキズなど見られますが軽微なものでほとんど目立ちません。横裏板は先述の割れ補修跡のほかは演奏時の衣服等による細かな摩擦あとのみとなっています。ネック、フレットなど演奏性に関わる部分も良好です。ネックはDシェイプの普通の厚みでフラットな形状。弦高値は3.1/4.1mm(1弦/6弦 12フレット)でサドルには2.5~3.5mmの余剰がありますのでお好みに応じて低く設定することが可能です。弦長は640mm、指板は高音側20フレット仕様。糸巻はカナダの高級ブランドRodgers を装着、こちらも現状で機能的に問題ありません。重量はやはりクラシックギターとしては重く2.42㎏。ブランドオリジナルロゴ入りの高級ハードケース付き。


新入荷 定価(税込) : 時価 販売価格(税込) :  お問い合わせ下さい。

製作家/商品名 ルベン・モイセス・ロペス Ruben Moises Lopez
モデル/品番 Model/No.
001_Rlopez_2_03_202
弦長 Scale Length 648mm
国 Country スペイン Spain
製作年 Year 2002年
表板 Top 松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides インディアンローズウッド Solid Indian Rosewood
付属品 Option 軽量ケース
備考 Notes
ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:セラック
糸 巻:ゴトー
弦 高:1弦 3.4mm/6弦 4.0mm

[製作家情報]            
1967年 スペイン、マドリッドの生まれ。父親は同地の名工として名高いマルセリーノ・ロペス・ニエト(1931~2018)。楽器ミュージアムと工房が一緒になったような自宅の環境の中で、彼は5歳の頃より木工についての基礎知識とギター製作を学び始めます。父親の工房でじっくりと熟成させるようにその技術を磨いていった彼は、満を持して1990年代の後半より自身のラベルにてギターを出荷するようになります。父親譲りの丁寧な仕事で仕上げられたギターは音色と外観とに独特の滋味を漂わせ、スペインの先達への敬意に溢れた楽器として、当初より高い評価を得てきました。現在は製作を行っておらず、父マルセリーノも他界してこの工房からの新作の知らせがなくなったことが、多くのギターファンから惜しまれています。

<楽器情報>
ルベン・モイセス・ロペス 2002年製 クラシック、オリジナルモデルです。父親であるマルセリーノ・ロペスの作風をさらに渋くしたようなヴィンテージ感漂うたたずまいは、同時代の製作家の中ではむしろ個性的とさえいえるマドリッド独特の雰囲気を湛えています。音色と響きも同様に渋く、しかしながら音量、表情、ダイナミックレンジや発音の反応性などどれも不足ありません。

全体に弾き傷、打痕等やや多くありますが大きな修理履歴はなく、ネック、フレット等演奏性に関わる部分での問題もありません。現在では貴重となってしまったブランドの珍しい中古での入荷です。


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製作家/商品名 グレッグ・スモールマン Greg Smallman演奏動画あり
モデル/品番 Model/No.
001_smallmanG_02_189
弦長 Scale Length 650mm
国 Country オーストラリア Australia
製作年 Year 1989年
表板 Top 杉 Solid Ceder
横裏板 Back & Sides 中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option ハードケース
備考 Notes
ネック:マホガニー
指 板:エボニー
塗 装:ラッカー
糸 巻:シャーラー
弦 高:1弦 3.0mm /6弦 4.0mm

[製作家情報]
グレッグ・スモールマン Greg Smallman 1947年オーストラリア生まれ。トーレス以降、クラシックギターの製作法において最大の革新を成し遂げた製作家です。1970年代からギターづくりを始め、最初はスペインの名工イグナシオ・フレタなどの「伝統的な」スタイルで製作していましたが、やがて独自の発想による設計を模索し、実践することになります。ラティス構造と呼ばれる格子状に配置された表面板の力木構造と、まるで現代建築のように加工され配置された堅牢なバーの構造は独特極まりなく(それゆえ重量も従来のクラシックギターの2倍近くと重くなっています)、それまでのいわゆ扇状力木と平行に配置されたハーモニックバーという基本的な構造とは完全に異なる発想で造られています。そして表面板を薄く、横裏板を厚いアーチシェイプ仕様にすることで表面板の振動を最大限に音響化することに成功し、その結果発音の反応、音量、各音と各弦のバランス、ダイナミクスと遠達性、サスティーンが文字通り驚異的に向上しています。スモールマンによるとこの独創的な構造は子供の時に熱中した模型飛行機の構造原理からからインスピレーションを得ているのだそう。

従来のギターではレゾナンスの設定とそれに伴いどうしても発生してしまう音響の不均質も、ここで飛躍的に解消され、全体のピッチもナイロンギターとしてはこれ以上望む程がないほどに正確に設定されています。そして最も特筆すべきは、こうした音響的な弱点の克服が為されたあとでも機械的な響きに堕することなく、音楽的な豊かさも同時に獲得していることでしょうか。それは彼を発掘し、彼のギターによってそのキャリアの後半を形成していった名手ジョン・ウィリアムスの演奏が如実に語るところです(ジョンは1981年からスモールマンのギターを使用)。ジョンのあとも数々の名手たちが愛奏し、またJ.ペロワやG.ビアンコなど現代的感性を持った若きマエストロ達のスモールマンを使用しての演奏は、このギターが革命であると同時に普遍性を備えたものであることの証左といえるでしょう。

1999年よりラベルには二人の息子DamonとKym の名が記され、Greg Smallman&Sonとなっています。ネックは可動式になり、専用のレンチで角度を簡単に変えることができ、奏者に合った演奏性にすぐに対応できるような仕様になっています。また初期には単板仕様となっていた横裏板もラミネート加工としてより堅固な設計となり、表面板はラティス構造を基本形として継続しながらバーの設計や配置については大幅な改変が試みられています。初期において(特に1980年代)はその発音と音色にどこかまだトラディショナルなギターのニュアンスを感じさせていましたが、もともと高かった音圧はさらに増大し、響きはより乾いた感触でオーディトリアムな音響へと変化してゆきます。

[楽器情報]
グレッグ・スモールマン 製作 1989年製 ラティス・ブレーシング仕様モデルUsed です。1970年代に入ってからギターを作り始め、その独自の理念を発展させラティス構造というスタイルに帰結させたあと、名手ジョン・ウィリアムスの演奏とそのあまりにも特徴的な音響によってギター製作とステージ演奏の在り方を一気に変えたと言えるモデル。現在ラティス(格子状)構造は製作家や国によってそれぞれ独自の受容と変化がなされ多様化しているとも言えるのですが、スモールマンを祖とするオーストラリア派はやはりそのオリジナルとしての確固たる理論的土台とそれによる個性、それゆえのマーケット的な強い訴求力を現在でも維持しています。

本作1989年はスモールマンのキャリアの中では初期から中期に差しかかかる時期のもので、もともとスペインギターに傾倒していた彼の、歌う楽器への嗜好が如実に感じられる魅力的なものとなっています。横裏板を厚く、表面板を極端に薄く加工し、しかも駒板を中心とするウェストから下のエリア以外は表面板も堅固に柱で固定されているという構造ゆえの(太鼓の構造原理を想像していただくとわかりやすいと思います)、板の鋭敏な震えがそのまま音になったような独特な発音。それと同時に非常な深さをもった奥行きとオーディトリアム感、そして従来のクラシックギターでは未聞であった音圧の異様な高さといった機能的特徴とともに、タッチの変化と直に連動するような音色の繊細な変化とロマンティックな表情が加わります。後年の機能面を充実させた彼の楽器ではその機能が音を従属させているようなところがあり、好悪が分かれるところですが、本作ではあくまでも奏者の指の感覚に音がシンクロしてゆく感覚があり、音量の豊かさや反応の速さといった機能性もここではあくまでも表現のための必然としてあるところが彼の製作家としての感性の確かさを裏付けているといえるでしょう。

今も変わらぬ標準仕様となっているウェスタンレッドシダーの表面板、横裏板には野趣あふれる中南米産ローズウッド。表面板は薄く加工され、裏板はそれに比して厚くそして理論的に追及されたアーチ加工で単板仕様(現在の彼の新作では合板仕様になっています)、構造上の必然として重いボディとなっており重量は2.49㎏。表板の塗装はセラック、横裏板はラッカーで仕上げており、表面板のセダーをはじめ全体に深みのある赤色に落ち着いて実に渋い外観。表面板内部構造はもちろんラティス構造になっており、一本一本が高さと形状の若干異なる9本×9本の合計18本の力木を格子状に組み合わせ、薄く加工された表面板下部をまんべんなく覆うように設置されています。表面板上部はサウンドホールの両脇の一部エリアをのぞいてほぼすべてがなんと3cmもの厚みの板で頑丈に固定されています。横板には(通常なら表面板と横板とを接合するようにしてライニング等が設置されるところ)表面板には直接触れずに少し隙間を空けてこれもまた厚みを持った強固なライニングが設置されて横板を補強しています。この横板に設置された厚いライニングのちょうどボディウェストの位置とエンドブロックとを繋ぐように、さらに各一本の4センチという厚みをもった柱が橋の
ようにして(つまりこれも表面板には直接触れず格子状力木の上を渡るようにして)設置されており、しかもこの二本の「橋」は厚いカーボンと木の二重構造になっています。表面板がこのような建築のような複雑で(格子状力木に覆われた部分以外は)堅固な造りになっているのに対し裏板はバーとそれに類するものを一本も設置していません。レゾナンスはF#~Gの間に設定されています。

割れなどの大きな修理履歴はありません。表面板全体に年代相応の弾きキズや摩擦、打痕等あります。サウンドホール高音側はおそらく製作時に貼られていた保護板をその後より小型のものに貼り換えた形跡があります。横裏板はほんのわずかに塗装白濁していますが外観を損ねるほどではありません。その他演奏時に衣服当たる箇所などに摩擦や擦れなどがあります。ネックは固定式(現行モデルでは可動式)でネックシェイプは普通の厚みのDシェイプ。一度フレットの交換と指板調整履歴が施されており、現在はネックは真っ直ぐを維持、フレットも適正値となっています。弦高値は3.0/4.0mm(1弦/6弦 12フレット)でサドル余剰は2.0~2.5mmありますのでお好みに応じてさらに低く設定することも可能です。現行モデルとその他異なる点として、演奏時に右腕肘部分を支えるアームレストは装着されていません。ブリッジサドルは各弦を溝で固定する仕様ではなく通常のフラットな形状のものが設置されています。糸巻はシャーラ―製を装着しており、現状で機能的に良好です。





新入荷 定価(税込) : 時価 販売価格(税込) :  お問い合わせ下さい。

製作家/商品名 トビアス・ブラウン Tobias Braun
モデル/品番 Model/No. サントス・エルナンデス 1924モデル
001_TobiasB_02_219
弦長 Scale Length 650mm
国 Country オーストリア Austria
製作年 Year 2019年
表板 Top 松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides シープレス Solid Cypress
付属品 Option ハードケース
備考 Notes
ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:セラック
糸 巻:ルブナー
弦 高:1弦 2.8mm /6弦 4.0mm

[製作家情報]
トビアス・ブラウン Tobias Braun 1960年 ドイツ、ホルツミンデン生まれ。のちオーストリア、ウィーン郊外の町ペルヒトルツドルフに移り、青年時代を過ごす。学業を終えた後はドイツ文学とジャーナリズムの勉強をしながら同時に独学でギター製作を習得し、1983年に最初の1本を製作。翌年には彼の製作家としての道筋を決定づけることになる名工ホセ・ルイス・ロマニリョス(1932~2022)のギター製作コースに参加。その後1988年にベルギーで開催された2回目を、その翌年1989年にもスペインのコルドバで3回目のコースを受講。同年にはウィーンでのマイスター資格を取得しており、製作家としての地歩を着実に固めてゆきます。1990年にロマニリョスの名著 ‘Antonio de Torres. Guitar Maker ー His Life and Work’ のドイツ語版を製作家のゲルハルト・オルディゲスと共同翻訳して出版。1992年にも4回目を受講し、そして翌年にはついにアシスタントとしてロマニリョスを支えてゆく立場にまでなってゆきます。1998年に工房をウィーンの森近くのガーデンに移し、現在もここで製作を続けています。彼は教育活動にも精力的で、楽器製作者のための継続的な教育と専門的な能力開発を主眼として設立された協会 N.I.C.E(“The Neufeld Instrument Makers’ Congress and Event”) 創設メンバーとして名を連ねているほか、アメリカの大手ギターメーカーGibsonや日本などでのレクチャー、また自身が開催する製作ワークショップなど、師ロマニリョスがまさにそうであったように、後進の育成に力を注いでいます。

ロマニリョスの存在が彼の製作美学形成にとって最高度に重要であったことは疑いを入れませんが、と同時に、その理想的なモデルとなったのはやはりトーレス、マヌエル・ラミレス、サントス・エルナンデスからヘルマン・ハウザー1世といった名工たちであり、彼らの名品を実地に研究し独自の音響哲学と現代的な感性で造り上げたレプリカモデルはどれも瞠目すべき美しさと優れた音質を有したものとして、現在はヨーロッパだけでなく世界的な評価とシェアを確立しています。近年ではOrfeo Magazine を発行するフランス パリの出版社Camono Verdeによる製作家シリーズで「Vicente Arias」「Santos Hernandez」などで共同執筆者に名を連ねています。

[楽器情報]
トビアス・ブラウン製作 2019年製 サントス・エルナンデス1924モデル Used良品が入荷致しました。同国オーストリアの女流ギタリストで20世紀屈指の名手と謳われたルイーゼ・ワルカーとの交流があったブラウンは、彼女が所有していた1924年製のサントス・エルナンデスを修理する機会に恵まれ、この名品(彼女の師ミゲル・リョベートがサントスの工房で自らセレクトして直接ウィーンの彼女の自宅に運んできたという)をじっくりと研究しています。本作のラベルにはSH1924とあり、彼がワルカー所有のサントスに準拠して作り上げた、しかし見事に個性的なサントスへのオマージュモデルとなっています。

その個性は表面板内部構造にも表れています。サウンドホール上側(ネック側)に1本のハーモニックバーとほぼサウンドホールの直径と同じ幅の厚さ3㎜ほどの補強板、補強板はまたホールを角形に囲うように貼り付けられており、ホール下側にも1本のハーモニックバーを設置。扇状力木は左右対称7本(とても薄く造られています)、ボトム部には2本の短いクロージングバーが7本すべてではなく両外側の各2本の先端のみを受け止めるようにして配置されています。そしてさらにささやかながら特徴的なのはこのクロージングバーよりも少し駒板寄りのところにクロージングバー同様に短いバーがちょうど駒板下辺の延長線上をなぞるようにして高音側と低音側に各一本設置されており、扇状力木7本のいちばん外側から2番目の力木はこのバーを貫通してクロージングバーに到達するような構造になっています。この高音側(と低音側)に限定的な範囲でバーを設置し特定の力木がこれを通過(あるいは貫通)する設計はサントスのオリジナルには見られないもので、むしろデビッド・ルビオやダニエル・フレドリッシュ的なものを想起させもする。クロージングバーの配置に関するサントスのいくつものヴァリエーションは興味深く、ブラウンもここで自身の物理的発想を具現したとも言えます。レゾナンスはFの少し上に設定されています。

シープレス材を使用した楽器ながら非常な密度をもった響きで、低い重心感覚のたっぷりとした低音に力強くクリアな高音との対照とバランスという鉄壁のスペイン的音響設計。シープレス材の特性は軽さではなく音像のさらっとした柔らかな肌理に表れており、またボディ全体の震えるような生々しさやふくよかな響きの奥行きという点にもよく表れています。撥弦の弾性感がそのまま洗練された点へと純化するような発音で、極めて自然ですが非常に高い音圧と併せて実に心地よい鳴り。音色はほんのわずかなタッチの変化にも反応し、しかも常に楽音としてのニュアンスを十分に含んでいます。サントス的な音響としてよく言われる、各弦(各音)が異なったアイデンティティを有しながらも有機的な全体を構築するような響きは、あえて言えば弦楽四重奏的で、彫りの深い音楽を生み出すのに寄与しています。先述のシープレス的音質特性はブラウンの本作において、古典音楽での古雅、現代音楽での透徹さにまで対応できるキャパシティとなっており、ここに彼の職人としての極めて高い技術と現代的感性が現れていると言えます。

この製作家らしい、ベアクロウのたっぷり入った表面板の松材とシープレス(裏板は3ピース仕様)の組み合わせによる審美的な外観がまずは素晴らしい。ヘッドはオリジナルに準拠してマヌエル・ラミレスタイプのデザイン、ロゼッタも有名なリボン柄デザインを採用、全体は極めて繊細なセラック塗装仕上げで気品があります。

全体にほんのわずかに軽微なキズがあるのみのとても良好な状態です。表面板のサウンドホール高音側には簡易ガードを脱着した跡が塗装上にわずかにありますが、目を近づけてそれと認識できる程度のものでほとんど目立ちません。割れなどの大きな修理履歴はありません。ネック、フレット、糸巻などの演奏性に関わる部分もすべて良好です。ネックは普通の厚みのDシェイプでフラットな形状、弦高値は2.8/4.0mm(1弦/6弦 12フレット)。サドルはロングサドルの可動式になっており、左記の弦高値はいちばん低く設定した場合の値になっています。この設定でサドル余剰が1.5~2.5mmあります。重量は1.47㎏。

ラベル上部に記載されている「43% RH」は相対湿度(Relative Humidity)の意味で、43%の環境で保管または製作されたことを表しているものと思われます。


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製作家/商品名 ラファウ・トゥルコウィアック Rafal Turkowiak
モデル/品番 Model/No. The Queen of Guitars No.123
001_TurkowiakR_02_216
弦長 Scale Length 650mm
国 Country ポーランド Poland
製作年 Year 2016年
表板 Top 松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides ウォールナット Walnut
付属品 Option ハードケース黒、オリジナル証明書、ブランドロゴ入りクロス
備考 Notes
ネック:メイプル
指 板:黒檀
塗 装:ラッカー
糸 巻:Der Jung
弦 高:1弦 3.0mm /6弦 3.9mm

[製作家情報]                                  
ラファウ・トゥルコウィアック Rafal Turkowiak 1966年 ポーランド生まれ。父親は大工で、幼少より自然と木工への興味を深めていたようです。ギターの演奏も能くし、15歳で地元の音楽学校に入学しますが3年のカリキュラムをわずか半年で終了してしまうなど早くから才能を発揮していました。家庭環境の中から培った木工技術と演奏者として自然に湧きおこる楽器への深い興味とが合わさり、彼は当初からきわめて実用に即した演奏性と音響とを追求した製作を試みるようになります。現在クラシック、アコースティック、ウクレレからマンドセロまで広範なラインナップを旺盛に展開していますが、それらは全てデザイン、木材のセレクト、細かな仕様に至るまできわめてユニークなものとなっており、とりわけギターという楽器の音響効果におけるいくつもの「innovative」な試みを具現化した設計は評判となり、現在ヨーロッパを中心に人気が高まっています。

[楽器情報]                                    
ラファウ・トゥルコウィアック製作のクラシックギター、‘The Queen of Guitars’ 2016年製 No.123 Usedの入荷です。この製作家独自の発想によるいくつもの新しい音響効果の試みが採用されたモデル。それらはブランドの公式なアナウンスによれば、ネック内部に搭載された音響管によりボディとネックの相互の共振性を高める<Acoustic Tubes>(12フレットより上のレイズドフィンガーボード加工になった指板サイド部分に特徴的な開口部が設けられ、ネック内で発生する音圧をそこから放出するとのこと)や、弦の張力による表面板へのストレスを軽減し、表面板の振動効果を最大限に発揮させる<Wave Resonator>システムなどが特徴として挙げられています。そしてまた表面板の力木構造や、人間工学的な要請と審美性を融合したボディデザイン、野趣溢れるエキゾチック材の使用による外観などもやはりこのブランドの他にはない個性として特筆すべきでしょう。

表面板力木配置はシンプルな中に精緻な工夫がみられるもので、その純粋なオリジンとなるものはトーレス的な扇状力木構造ですが、そこから発展させ左右非対称の格子状力木構造へと昇華させています。サウンドホール上側に通常の平坦な形状のハーモニックバー、下側には上部がゆるやかな三つの山型になった1本のハーモニックバーを設置。この2本のバーの間、そしてネック付け根と上側バーとの間を各2本の力木が高音側と低音側に1本ずつ、それぞれ横板のカーブの方向に沿うようにして設置されており、そのため表面板上部はこれら計4本の力木が大きく菱形を形成しているような配置になっています。ウェストより下は幅約8㎜、高さ1~2mmほどの薄く平べったい形状の力木による格子状配置で、いわゆるオーストラリア派(グレッグ・スモールマンに代表される)のLattice ブレーシング構造とは異なり、基本的に表面板木目に沿った力木とそれとほぼ垂直に交差する力木とによって形成される碁盤の目のような配置になっています。これはしかし均質な格子を形成しているわけではなく、実際には高音側と低音側とでゆるやかな非対称を形成しており、この自在な厳密さにこそ製作家の特徴が現れていると言えます。まず表面板木目の方向には計6本が設置されており(ほんのわずかに扇状配置となっている)、このうち5本が駒板の幅に収まるようにしてほぼ平行に近い角度で、残りの一本がやや離れて高音側に設置。そしてこれらにほぼ垂直に交差するようにして計7本の力木が横幅いっぱいに表面板下部をまんべんなく覆うようにして設置されています。サウンドホール下のハーモニックバーとこれら7本の横の力木もやはり厳密に木目と垂直に設置されているわけではなく、低音側は間隔を広く、高音側にいくにしたがってわずかに狭くなっていゆくように配置されています。さらに駒板の位置にはほぼ同じ面積で3~4㎜厚の板が力木の上に乗っかるようにして設置されており、駒板部分の補強効果のほか、先述のWave Resonatorシステムの一環としての役割も担っていると思われます。また彼は他のモデルでは表面板と横板との接合部にペオネス(小型の木製ブロック)またはそれに類する補強材を一切設置しない斬新な組み立て方法を採用していましたが、ここではライニングを設置しています(ただし珍しい木目の、通常この部分には使用しないような木材を使用しています)。また裏板はバーを一本も設置していないのですが、横裏板もまた製作家独自の発案による方式(High Tech Press)で製材されたもので、音響効果と耐性を飛躍的に向上させたとしています。レゾナンスはEの少し上に設定されています。

撥弦の瞬間から一切の曖昧さのない整った音が現れます。同一弦において、また各弦間においても音像は非常な洗練により均質化されており、例えば和音におけるひとつの音の塊としての統一感とアルペジオにおける明確な分離は比類がないと言えるほど。全体は同一の位相で鳴っているような音響ですが平板な印象はなく、低音のどっしりとした重心感覚が全体をバランス良く構築し、響きには奥行きもあります。サスティーンでは音の密度が保持され、発音と終止の瞬間にはきりっとした身振りがあり、さらに磨かれたように艶やかな音なので曲の演奏は自然とすっきりとした上品な表情になります。こうした響きと音における発音特性は例えば対位法的な旋律においては明確な遠近感を形成し、スラーやスタッカートやトリルなどの装飾的旋律は明晰な身振りを生み出します。

弦の振動が木の声となって湧出するようなスペインギター的な音響とは異なり、弦の振動が様々なプロセスを経て精製されたような音で、ある種即物的(あるいは純音楽的)とさえいえるような音響特性を持っています。彼の発明したシステムがこの音の精製プロセスを十全に統御しているがゆえなのでしょうか、音色に関してはスタティックなところがあり、タッチに対する表情の変化などは限定的なものとなっています。しっかりした音圧を備えていますが、モダンギター的な大音量というわけではなく、あくまで自然な鳴りとしての豊かさが追及されているところも彼の性質によるものでしょう。

このブランドはまた個性的な杢目の材によるexotic な外観が特徴ですが、本器も横裏板には印象的なカリフォルニア・ウォルナット・バール材を使用、裏板はアーチ加工が施されています。横裏板内側にはスプルース材を貼り付けた二重仕様。また表面板はアルパインスプルースで右肘を当てる部分には黒檀によるアームレストを模したような傾斜加工がされています。ロゼッタは黒檀と天然黒真珠が象嵌され、ブランドロゴのクラウンマークがあしらわれています。塗装はこれも製作家により独自に調合されたグロスフィニッシュ加工。全体は僅かなスクラッチあとのみの非常にきれいな状態で割れなどの大きな修理履歴はありません。ネックはやや順反り、フレットは適正値を維持しています。ネックはDシェイプを基本として高音側をやや薄くした形状。指板は高音側20フレット仕様でレイズドフィンガーボードとなっており、ハイフレットでの左手の演奏性が追及されています。弦高値は3.0/3.9mm(1弦/6弦 12フレット)、サドル余剰は1.5~3.0mmあります。糸巻はDer Jung 製で動作状況に問題ありません。重量は1.77㎏。オリジナル証明書付き。


品切れ 定価(税込) : 時価 販売価格(税込) :  792,000 円

製作家/商品名 ヘスス・ベジード Jesus Bellido演奏動画あり
モデル/品番 Model/No. トーレス6 モデル Torres 6
002_bellidoJ_02_207
弦長 Scale Length 644mm
国 Country スペイン Spain
製作年 Year 2007年
表板 Top 松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides 中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option ケース別売
備考 Notes
ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:セラック
糸 巻:木ペグ(ペグヘッズ)
弦 高:1弦 2.8mm/6弦 3.7mm

〔製作家情報〕
1966年生まれ。スペイン、グラナダの製作家。父親は同地の代表的な名工の一人マヌエル・ベジードで叔父はやはり製作家のホセ・ロペス・ベジード。13歳のころより父の工房に入り、17歳で最初のギターを製作しています。1989~1995の間はギター製作の講師としての職に就き、その後最初の工房を設立して製作に専念。1999年に父マヌエルの工房に戻り現在に致ります。古今の名工たちの多くのギターを修理や復元した経験から、特に自国の銘器に対する造詣が深く、それは彼の作るトーレス、サントス・エルナンデス、マヌエル・デ・ラ・チーカなどのレプリカモデルに顕著にあらわれています。また彼のオリジナルモデルもまたこうしたヴィンテージギターのように素朴で明朗、木質の味わい深い響きと迫力を同時に備えており、古き良きアンダルシアの音を蘇らせたものとして高く評価されています。発音は生々しく、非常な速さで立ち上がってくる音はダイナミックレンジ、音量ともに名工の多いグラナダスクールの中でも際立っています。造作にはやや粗さが見られるものの、セラック塗装でいかにも手作りといったその外観は音色同様に素朴なたたずまいを見せ、やはりこのブランドの大きな魅力の一つとされています。

〔楽器情報〕
ヘスス・ベジード製作のトーレスモデル (Torres 6とラベルには表記)2007年製Usedの入荷です。彼自身のオリジナルモデルとともに常にラインナップされている「トーレス」のひとつ。同地グラナダの先達マヌエル・デ・ラ・チーカのレプリカをはじめとするヴィンテージシリーズは彼の純粋な敬意が表れたどれも秀逸なものですが、クラシックギターの祖と言えるトーレスに対してはやはり特別なものがあったようです。よく知られているのは1883年製 SE54 のレプリカで、19世紀ギターを思わせる小柄なプロポーションでボディ厚も薄く、しかし豊かな鳴りを備えた魅力的なトーレスモデルですが、本作Torres 6はそれよりも現代的なサイズ感に近いミドルサイズのトーレス。

糸巻はPegheds製のギア付き木製ペグ仕様。そのためもあってかヘススらしい、耳に直接触れてくるような生々しい木質の響きで、彫りが深く、程よく粘り、弦に触れるだけで反応するような発音の鋭敏さが特徴的。そして特に高音は意外なほどにしっかりと艶を湛えており、これが古雅とフレッシュネスが同居したような音響を生み出しています。

彼のこうした特性はオリジナルと非常に相性が良く、実に自然にトーレス的キャラクターとして着地しています。現在世界中のあまたのブランドが同様のモデルを製作していますが、そのほとんどが現代的感覚でいわば rework あるいは remodel した楽器となっているのに対して、ヘススのそれはまさにreplicaとしての19世紀的な存在感を放っています。

表面板内部構造はサウンドホール上下に1本ずつのハーモニックバー、ボディ下部は左右対称5本の扇状力木、駒板位置には薄い補強プレートが貼られているという配置。ボトム部にクロージングバーは設置されておりません。5本の扇状力木はが駒板の幅の中に収まるようにして設置されており、これは上記1883年 SE54のスタイルを踏襲しているとのこと。レゾナンスはG#の少し上に設定されています。

全面オリジナルのセラック塗装で、表面板の特にサウンドホール周辺はやや演奏時の搔き傷が目立ちますが年代相応のレベルです。割れなどの大きな修理履歴はありません。ネックは厳密にはわずかに順反りですが許容範囲、フレットは適正値を維持しています。ネックシェイプは薄くフラットなDシェイプでベジードの特徴的な仕様です。

この後2010年前後からヘススのギターはさらに軽量化し、塗装はさらに繊細に、ボディ厚も薄くした仕様へと一旦シフトしてゆきますが、本作はその直前の、製作家の嗜好とモデルが要求するものとが円満なバランスで体現された一本となっています。






定価(税込) : 時価 販売価格(税込) :  お問い合わせ下さい。


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