表面板力木設計はロマニリョスオリジナルに正確に準拠。サウンドホール上側(ネック側)に2本、下側(ブリッジ側)に1本で計3本のハーモニックバーを配置。3本すべてのバーの高音側と低音側とに1か所ずつ長さ4センチ高さ3mmほどの開口部が設けられ、これらの開口部を垂直に交わるように(つまり表面板木目と同方向に)通過する形で高音側2本、低音側2本の力木がボディの肩部分からくびれ部分まで伸びるように平行に設置されています。そしてボディ下部(くびれより下の部分)は、左右対称7本の扇状力木に、センターの1本以外の6本の先端をボトム部で受け止めるようにちょうど逆ハの字型に設置された2本のクロージングバー、ブリッジ位置には駒板とほぼ同じ範囲をカバーするように薄い補強板が貼られているという全体の構造。表面板と横板の接合部には大小のペオネス(三角形型の木製のブロック)を交互にきれいに設置してあります。これらの配置的特徴はホセ・ルイス・ロマニリョス著「Making a Spanish Guitar」の中ではPlan1として掲載されているものと同じもので、トーレス=ハウザー的スタイルをロマニリョスが再構築したものとしてスタンダード化している設計の一つとなっています。レゾナンスはF~F#の間に設定。現在の佐久間氏による同モデルではこのPlanは採用されておらず、トーレス的な扇状力木配置をセレクトしています。
[製作家情報] 井内耕二 Koji Iuchi (1946~)徳島県に工房を構える製作家。ギター演奏を能くしていましたが指の故障により製作に転向したのが1996年、その後国内のギター製作コンクールで優勝し(2010年 現代ギター社主催のコンクール)ブランドとしての地歩を固めてゆきます。繊細な造りが細部まで行き届いた端正な外観と、音響バランスの構成と着地点の適切さ、ギターとしての自然な表情などは国内でも卓越したレベルを有したブランドで、近年ではギタリストの徳永真一郎らの使用により若い愛好家の間でも人気の製作家となっています。
[楽器情報] 井内耕二 2012年製 serial No.27 Used の入荷です。年齢としては間もなく70に近づこうという時期のものですが、50の歳から製作を始めた氏にとっては知と技の面での充実が顕在化しはじめた頃と見て取ることができるでしょう。意匠も含む外観における工作精度的な完成度はかなり早くから達成されていたことが本器からもうかがえますが、ここで注目すべきは内部構造(力木設計)における試みとその音響的特徴と言えます。