ルイス・パノルモの初期のギターはフランス式の工法で製作されており、一般的に楓の裏板と横板、黒く塗られたネックとヘッド、表面板の力木はラコートに代表されるような木目と垂直の方向に数本が配置されたいわゆるラダーブレーシングが特徴。またこの時期には「Panormo Fecit」(Panormo製) とブルームズベリーの住所がラベルには印字され、1820年代後半ごろからいわゆる扇状力木配置によるギターを製作し始めてからラベルは「Louis Panormo」名義となり、「Guitars In The Spanish Style」と記載されるようになります。ただしこの2種類のラベルはある時期まで並行して使用されており、それゆえ「Louis Panormo」名義のものは本人作で、「Panormo Fecit」ラベルのものは工房製だと言われることもありますが、これは定かではありません。トーレス以前にこの扇状力木配置を採用していたことで、ロマンティックギターとモダンギターをつなぐその歴史的な重要性が認識されています。ボディは19世紀ギターの典型的なサイズながらふっくらと奥行きのある発音と豊かな音量が特徴で、また特徴的なヘッドシェイプはその後現代にいたるまで19世紀ギターレプリカにしばしば採用されることになる人気のデザインとなりました。
【楽器情報】 ルイス・パノルモ 19世紀ギター(ロマンティックギター)の1828年製 #900 です。「900 Panormo Fecit Anno.1828 London 26 High Street Bloomsbery」とラベルに記載されており、いわゆるスペイン式であることを明記したものではありませんが、内部構造はまさしくサウンドホール上下に1本ずつのハーモニックバー、そしてサウンドホールの真下から扇状に拡がる7本の力木配置という、まさにスペイン方式で造られています。響きは深くしかしはっきりとした発音で、19世紀ギターとしてもどこか洗練された感触があります。レゾナンスはCに設定。