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1
製作家/商品名
:
ビウダ・デ・マルセロ・バルベロ 1世 Viuda de Marcelo Barbero
モデル/品番 Model/No.
:
スペック
カタログ
&問合せ
弦長 Scale Length
:
650mm
国 Country
:
スペイン Spain
製作年 Year
:
1956年
表板 Top
:
松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides
:
中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option
:
軽量ケース
備考 Notes
:
ネック:マホガニー
指 板:エボニー
塗 装:表板 セラック
:横裏板 セラック
糸 巻:ゴトー
弦 高:1弦 2.6mm /6弦 3.6mm
〔製作家情報〕
ビウダ・デ・マルセロ・バルベロ Viuda de Marcelo Barbero(Arcangel Fernandez) 。
20世紀スペインを代表する名工の一人 マルセロ・バルベロ1世(1904~1956)がその早すぎる死を迎えた時、残された未完の作を当時バルベロの弟子であったアルカンヘル・フェルナンデス(1932~)が製作を引き継ぎ、完成させました。バルベロが製作途中であったものから、受注して未着手であったものまで含め合計8本のこれらのギターは「マルセロ・バルベロの未亡人」とブランド名がクレジットされていますが、遺作楽器を「Viuda de ~」(「ビウダ」は「寡婦」の意)の表記とすることは当時のスペインでは慣習的に行われており、実質的にはこれら8本のすべてアルカンヘルが担当しています。
1904年 マドリッド生まれのマルセロ・バルベロ1世は若かりし時、あのレアル・マドリッドに在籍するサッカー選手であり、さらにプロボクサーでさえあった人物で(あのいかにも重心の低い、頑丈そうな体躯を見るとそれも納得できます)、ギター製作キャリアは1920年代後半から、同地マドリッドにあるホセ・ラミレス2世の工房で働き始めることから始まります。ここでマスタービルダーとしての腕を振るったであろうことは容易に想像できるのですが、有名ブランドの一職人であった彼が、その類まれな音への感性とそれを具現化する術を発見することになるはなんと言ってもサントス・エルナンデス(1874~1943)との出会いと言えるでしょう。しかしバルベロはサントスとは生前に製作を共にすることはついになく(直接の教えは受けることなく)1943年にサントスはこの世を去ってしまいます。この時、サントス夫人であったマティルデの要望でバルベロは未完のままとなっていたギターの製作を引き継ぐことになり、工房で実際に使われていた工具や治具、テンプレートを使用し、さらには夫の製作法を熟知していたマティルデからの助言を得てこれらのギターを完成させます(ラベルは ”Viuda de Santos Hernandez”となっています)。サントスの製作法をリアルに追体験するようなこの過程を経てのち、彼は満を持して独立して自身のブランドを設立することになります。ここでやはり顕著なのはサントスからの影響を受けた設計と音響設計で、それは1940年代後半から1956年の死に至るまでの短期間に、バルベロ自身の製作哲学の醸成とともに異様なまでの洗練が為され、マドリッド派の到達点ともいえる至高の名品が生み出されてゆくことになります。
マルセロ・バルベロというおおらかな芸術的製作家と、全集中型の天才アルチザンであるアルカンヘル・フェルナンデス(1932~)が邂逅するという、20世紀半ばのスペインでしか起こりえなかったであろう、たった一人の人間どうしによって為されてしまった偉大な製作史の繋がりにはいまさらながらに驚かされるものがあります。家具職人であり、フラメンコギタリストであり、映画俳優でさえあったアルカンヘルをバルベロは迎え入れ、まさに自身がサントスに対してそうであったようにアルカンヘルもまた師の製作法やそのギターが奏でる音に感銘し、魅入られ、自身も楽器製作を行うことになります、これが1954年のこと、バルベロの死の二年前です。
「突然逝ってしまったんだ」とのちにアルカンヘルが述懐するようにあまりにも急なバルベロの死によって、わずか2年の修業期間だけで取り残されるようであったアルカンヘルはしかしここでその力量を発揮します。本人作と見まごうばかりの完成度で、上述の未完となっていた8本を一気に仕上げたあと、同じマドリッドのヘスス・イ・マリア通りに自身の工房を設立し、ブランドをスタートさせます。ここにやがて師バルベロの息子であるマルセロ・バルベロ・イーホ(1948~2006)が加わり、マヌエル・ラミレスの伝統を正統的に継承する唯一の工房として静かに屹立することになります。
〔楽器情報〕
ビウダ・デ・マルセロ・バルベロ 1956年製 クラシックモデルです。ラベルには(Arcangel Fernandez)とプリントされており、マルセロ・バルベロ1世の未完の楽器を弟子であるアルカンヘル・フェルナンデスが仕上げた1本。「ビウダ・デ ~」のラベルが付された同様のモデルは全部で8本あり、そのうち5本はフラメンコ、3本がクラシックとなります。本作はその3本のクラシックモデルのうちの一本、アルカンヘル本人によるとバルベロが急逝した直後に製作したもので、すべてのパーツはバルベロが実際に残していたものを使用しているとのこと。いかにもマルセロが好みそうな(審美的というよりもトーンウッドとしての性質的に)材によって作られており、もちろんボディ形状、ロゼッタやヘッドデザインそして内部構造に至るまでがマルセロ・バルベロのオリジナルスタイルで見事に仕上げられています。
同時にここにはアルカンヘルのスタイルの原型となるものもはっきりと刻印されており、まさにこの一本に、師弟であり、偉大な製作家でもある二人の貴重な共同作業、さらには製作史における20世紀の分節点としての、異様に濃密な音響を聴くことができます。
表面板力木配置について、サウンドホール上下(ネック側とブリッジ側)に一本ずつのハーモニックバー、サウンドホール周りはロゼッタとほぼ同じ面積を覆うように薄い補強板、扇状力木は左右対称5本が上端はロゼッタの直径の範囲に、下端は駒板横幅の範囲にほぼ収まるように表面板の中央に互いに寄り添って設置されています。ボトム部には2本のクロージングバーが逆ハの字型になるような位置関係で設置されているのですが、お互いが両側横板に近接するほどに離れて(5本扇状力木のさらに外側に位置するようにして)います。駒板位置には駒板とほぼ同じ面積の補強板が、やや厚めの加工で貼られているという全体の配置。レゾナンスはF#の少し下に設定されています。
このシンプルですが特徴的な力木設計は歴史をさかのぼればトーレス以前の、例えばホセ・ペルナス(Jose Pernas)などのギターにまでさかのぼることも可能なのですが、これを音響の全き必然性において(つまり原理そのものとして)最初に完成させたのはサントス・エルナンデスと言えるでしょう。
マルセロはこの設計が必然的に生み出す音響の錬成を更に推し進めてゆきます。撥弦時に駒に集中するエネルギーを木質(硬いスプルース表面板)と構造体(強固な力木構造)によって瞬間的に密度を圧縮し、そうすることで力を増幅し箱を一体に響かせるのですが、ここでまさにバルベロだけがそれを可能にしたとしか思えないような、いささかも柔軟さを損なわない非常な硬質さという、独自の発音特性が生まれます。
アルカンヘルがこの特性を意識して製作していたことは間違いなく、本器においてもその方向性をしっかりと踏襲した音響で見事に着地しています。ただしここにはのちのアルカンヘルに顕著なストイックな厳格さ(強い反発感、粘りを伴った発音)とまではいかず、おそらくは経年の弾き込みにもよるのでしょう、タッチにヴィヴィッドに反応する高い音圧といかにもウッディな感触も魅力となっています。
製作から70年を経た楽器としては非常に良好な状態を維持しています。割れはなく、表面板全体にキズ(特に指板両脇からサウンドホール周りにかけては弾き傷がやや多め)がありますがさほどに深いものではなく、適切な弾き込みによる経年の自然な使用感の範囲にとどまっています。横裏板(これも実にバルベロ好みの濃茶で柾目の中南米ローズウッド)は衣服の摩擦による細かな擦れあとや若干の塗装の白化のみとなっており、やはり経年考慮するときれいな状態といえます。ネック裏はおそらく過去に再塗装が施されており、現状はキズはほとんどなく良好です。ネックは真っすぐを維持しており、フレットは全体にやや摩耗していますが(特に1~4フレット)、演奏性には影響ありません。ネック形状は普通の厚みのDシェイプでフラットな加工がされています。糸巻は過去にGotoh製に交換されており、現状で機能的に良好です。ラベルには割り印でアルカンヘル名義のブランドスタンプが押印されており、同様のものが他にもネック脚部分と表面板内側サウンドホール脇にも押印されています。またネック脚部分には「19」の番号も押印されていますがこれについては不明(アルカンヘルによると本器はバルベロがストックしていた材をそのまま使用して作られているが、番号の意味は定かではないとのこと)。
定価(税込)
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