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区分 輸入クラシック 中古
製作家/商品名 コンデ・エルマノス Conde Hermanos(Fellipe)
モデル/品番 Model/No. Classic(AC-25)
001_001_conde_02_190
弦長 Scale Length 648mm
国 Country スペイン Spain
製作年 Year 1990年
表板 Top 杉 Solid Ceder
横裏板 Back & Sides 中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option ハードケース 黒
備考 Notes
ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:表板 ラッカー
   :横裏板 ラッカー
糸 巻:フステーロ
弦 高:1弦 2.7mm
   :6弦 3.8mm

〔製作家情報〕
数多いスペインのフラメンコギターブランドの中でも、屈指の定番とされるコンデ・エルマノス。ブランドの始まりはマドリッドの伝説的なマヌエル・ラミレス(1864~1916)工房で、サントス・エルナンデス(1874~1943)と共に職人として働いていたドミンゴ・エステソ(1882~1937)が、1919年に同じマドリッドのグラヴィーナに工房を開くところまで遡ります。彼の教えを直接受けた甥のファウスティーノ・コンデ(1913~1988)がその弟達マリアーノ(1916~1989)とフリオ(1918~1995)とともにエステソの工房スタッフに加わり、エステソ亡きあとも「Viuda y Sobrinos de Domingo Esteso」(エステソ未亡人とその甥達による)というラベルでこのブランドを継続してゆきます。1959年にエステソの妻(※Nicolasa Salamanca エステソギターの塗装を担当していた)が亡くなるとラベルを「Sobrinos de Domingo Esteso/Conde Hermanos」に変更し、この時からコンデ・エルマノスの名前がブランド名として使われ始めます。

1960年代に入るとそれまでエステソを踏襲していたモデルを全てデザインから内部構造に至るまでオリジナルのものに一新し、半月型にカットした有名な Media Luna ヘッドシェイプもこのころからハイエンドモデルの符牒として採用され、この時期世界的に高まる需要もあり飛躍的に名声とシェアを広げてゆきます。

1980年にはマリアーノがマドリッドのフェリーぺに工房を立ち上げ、彼の息子たち(フェリーぺ1世とマリアーノ2世の兄弟)とともに製作。グラヴィーナ工房と連携して製作していましたが、1988年にファウスティーノが亡くなったのを機にフェリーぺ工房は独自の操業を開始します。しかし翌年の1989年に後を追うようにマリアーノ1世もこの世を去り、2人の息子たちがフェリーぺ工房を継承します。ここからフェリーぺ工房は3つのコンデ工房の中でも特に時代のニーズに柔軟な対応を見せ、安定した商業ベースを維持するようになります。

そして2010年にはフェリーぺ1世はFelipe Conde、マリアーノ2世はMariano Conde としてそれぞれの独立したブランドとして工房を立ち上げ、それまでのコンデ・エルマノスの伝統を継承しながらもそれぞれの個性を濃密に注ぎ込んだ良品を現在も製作しています。

グラヴィーナ工房はファウスティーノ亡き後は彼の未亡人が2000年代まで工房を継続させていましたが現在は閉鎖しています。フリオは1950年代にアトーチャに設立されたコンデ・エルマノス工房を運営し、1995年に亡くなった後は娘と孫娘が経営を引き継いで現在もConde Hermanos ブランドとして安定した生産を維持しています。

コンデ・エルマノスギターは名手パコ・デ・ルシアが愛奏していたことをはじめとし、まさに名だたるフラメンコギタリストによって使用され、フラメンコギターファンには現在も欠かすことのできないマストアイテムとなっています。

[楽器情報]
コンデ・エルマノス フェリーペ工房、クラシックモデルの珍しい一本 1990年製Usedの入荷です。もちろんコンデブランドはあくまでフラメンコをそのラインナップのメインとしながら、それと並行してクラシックラインも継続しており、その意味では決して珍しいとは言えないのですが、本作はその仕様と構造の点において、このブランドとしてはやや異色ともいえるモデルとなっています。

外観的にはこのブランドのハイスペックモデルの符牒となっている有名なmedia lunaヘッド(俗に闘牛ヘッドとも言われる角を模したような独特のデザイン)となっており、そのアイデンティティを揺るぎなく提示しています。仕様としてはこれはクラシックに合わせて弦長を648mmとしており、表面板は杉材、ボディはかなり厚め(ネック部分で9.7㎝、ボトム部分で10.7cm)で作られています。そして内部構造(表面板の力木配置)ですが、サウンドホール上側(ネック側)に1本のハーモニックバー、下側(ブリッジ側)は1本のハーモニックバーとその中央で交差するもう一本の斜めのバー(低音側横板上部から高音側横板下部に向かって斜め下がってゆくように設置され、交差部分はお互いに強固に組み込まれている)、扇状力木は計6本がセンターに配された1本を境に高音側に2本、低音側に3本、ほとんど角度をつけずに互いに平行に近い角度で配置されており、ボトム部にはこれらの下端を受け止めるように逆ハの字型に配置された2本のクロージングバー、そして駒板位置にはほぼ同じ面積で薄い1mmほどの補強板が貼られているという全体の配置。

この力木配置(力木それぞれの形状やサイズなども含め)はあまりにも有名なホセ・ラミレス3世の「1A」 モデルとほぼ同一となっており、杉材を使用した表面板や厚いボディサイズなど、ラミレスがその移行期である1986年頃に製作したものとほぼ完全な相同性がみられます。レゾナンスはG~G#の間に設定されています(これに関してはラミレスはほぼAに設定されています)。

しかし上記のようなラミレスとの同一性が外形において認められながらも、コンデはここでいかにもこのブランドらしい(つまりややフラメンコ的な)手の直ぐ近くで音が立ち上がってくるような分離の良い乾いた音を作り出します。全体のバランスは太い低音から引き締まった高音へと至るスペインギターの典型がしっかりと構築されており、この点もラミレスとは異なり良い意味でオーソドックスな響き。このブランドが得意とするフラメンコ的な発音機能とクラシック的な情感とが他のギターでは聴かれないような独特の按配でマッチングしており、結果抑制された渋めの表情の中にダイナミックなうねりを見せる、個性的なクラシックモデルに仕上がっています。

表面板下部に複数の割れ修理歴があります。ブリッジ下中央んボトム部に計3か所の5~10cm弱の割れ、駒板低音側縁部分に20センチほどの割れが2か所、さらにこれらの割れの間に挟まれるようにしてボトム部分のやや低音側に何か強い衝撃による破損を修復した履歴があります。これらの割れはすべて接着後にボディ内側よりとても丁寧に補強処理を施したうえで表面板全体にラッカー再塗装を行っており、現状で目を近づけないとそれと認識できないほどにきれいな処置がされています。そのため表面板は現状で指板脇やサウンドホール付近などのほんの数か所の小さな打痕があるのみの状態となっています。横裏板は出荷時のままのラッカー塗装を保持していますが、こちらも横板の上部ふくらみ部分高音側に数か所の打痕、裏板の演奏時に胸の当たる部分の衣服等(おそらくボタンによる)スクラッチ傷といった経年考慮すると相応のレベルのキズのみとなっており、現状で外観的には良好と言えます。ネック、フレット、糸巻き等の演奏性に関わる部分も適正な状態を維持しています。弦高値は2.7/3.8mm(1弦/6弦 12フレット)でサドル余剰は0.5mm未満となっています。

コンデ・エルマノスのフェリーペ工房は2000年代まで同様の設計でクラシックモデルの製作を継続します。


新入荷 定価(税込) : 時価 販売価格(税込) :  330,000 円
注文数 :   

区分 輸入クラシック 新作
製作家/商品名 ホセ・マリン・プラスエロ Jose Marin Plazuero
モデル/品番 Model/No. アウラ エクスクルーシブモデル No.1029
001_001_jmarin_2_01_225
弦長 Scale Length 650mm
国 Country スペイン Spain
製作年 Year 2025年
表板 Top 松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides 中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option ハードケース
備考 Notes
新作手工品をご購入のお客様には、弊社にて弦高調整を1回無料でご利用いただけるサービス(有効期限なし)をお付けしております。
※購入時に装着されている部品(ナット、サドル)本体の調整に限ります。部品新規作成の場合には別途作成費用がかかります。
※ネック反りの調整が必要な場合は別途調整費用がかかります。

ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:表板 セラック
   :横裏板 セラック
糸 巻:フステーロ
弦 高:1弦 3.0mm
   :6弦 3.5mm

[製作家情報]                                   
ホセ・マリン・プラスエロ Jose Marin Plazuero 1960年 スペイン、グラナダ生まれ。同地を代表する名工アントニオ・マリン・モンテロ(1933~)は彼の叔父にあたります。1974年14歳の時に当時マヌエル・ベジードと共同製作をしていたアントニオの工房に入り、最初は主に塗装を担当しながら、並行して少しずつギター製作も学び、従事してゆきます。1979年にアントニオとともに同じグラナダの cuesta del Caidero に新しく独立した工房を開き、同年19歳で最初のギターを製作、この時より正式にマリン工房の製作家としての活動を開始します。ここで彼は自身のオリジナルラベルによる生産ラインを確立しますが、その後も袂を分かつことなく叔父アントニオと共にそれぞれのラベルによる製作を現在も続けています(※アントニオ・マリンは2025年をもって製作を退き、現在はホセ・マリンが工房の運営にあたっています)。また1979年はアントニオがそれに先立つ1977年より親交を深めていたフランスのロベール・ブーシェとの2度目の交流により、自身のマリン=ブーシェスタイルを確立した年でもあり、ホセはこの二人の巨匠の邂逅とそれによって生み出された製作メソッドをリアルタイムで学んでいます。

ホセのギターは叔父アントニオの工法と作風を十全に受け継ぎながら、音響と造作の両方において彼ならではの洗練を施した極めて質の高いモデルとなっており、現在のグラナダのスタンダードをもっとも円満に体現していると言えます。メインモデルとなるブーシェタイプの他、彼ならではの慧眼をもって作り上げた見事なトーレスモデル、良質なフラメンコモデル等も製作しています。

〔楽器情報〕
ホセ・マリン・プラスエロ製作のアウラショップ限定モデル、2025年新作 No.1029の入荷です。グラナダを象徴する石榴(ザクロ)をモチーフにしたデザインのロゼッタ、オリジナルラベル、駒板に細工されたの白蝶貝の象嵌などはこのモデルだけの特別仕様。さらには工房ストックの中から厳選された最高級材の使用、眼をみはるほどに美しいセラック塗装による仕上げなど、その全体の気品あふれる佇まいもまた特別な味わいを醸し出しています。

いかにもグラナダスクールらしい発色の良いすみずみまでくっきりとした音響で、パッと心地良く立ち上がってくる発音やダイナミックで力強い鳴りなど、この工房の特徴を十全に備えた1本。そしてグラナダ派的、アンダルシア的な明朗な響きながら、彼の楽器には常にクラシカルな、ホセ・マリンならではの達意の抑制があり、それが音の表情に独特の洗練を生み出しています。どこまでもシャープな身振りとこの抑制された渋い表情との妙がなんとも気持ちが良く、クラシックの楽曲の表現とも絶妙にマッチします。ブーシェ的構造の特徴である、強い粘性と重力を伴いながらも高く跳ねるような発音も、充実した密度をもってニュアンスたっぷりに鳴り、素晴らしい。そして低音から高音までの全体のバランスも申し分ありません。

表面板力木構造はアントニオの、またホセ自身のブーシェモデルの基本設計を踏襲したものとなっています。サウンドホール上側(ネック側)に1本のハーモニックバーと一枚の補強板、下側(ブリッジ側)に1本のハーモニックバー、そして左右対称5本の扇状力木がちょうどブリッジサドルの位置にほぼ横幅いっぱいに設置されたトランスヴァースバーを貫通しボトム部まで伸びているロベール・ブーシェ特有のパターンとなっています。この5本の扇状力木とトランスヴァースバーとが交差する部分は隙間なく組み合わされており、3~5㎜ほどの高さの繊細な力木を倍近い高さのバーがしっかりと固定するようなかたちになっています。トランスヴァースバーは低音側より高音側がわずかに高く設定されて、その両端は横板に至る直前に表面板の高さに一気に傾斜してゆきストップしています。レゾナンスはAの少し下に設定されています。

ネック形状はDシェイプのフラットな形でつくられており、握り心地はいたってノーマルな感触。弦高値は3.0/3.5mm(1弦/6弦 12フレット)とやや低めの設定になっており、サドル余剰は1.5mmありますのでお好みに応じてさらに低く設定することも可能です。弦の張りも中庸で特に左手はあまりストレスを感じさせず、さらに上述の通り音量のダイナミズムと俊敏な発音により右手もまた楽に弾ける感覚があります。

巨匠アントニオとともにいまやスペインを代表するブランドとして国際的に高く評価されているマリン工房。グラナダサウンドのエッセンスを十全に備えた見事なモデル、貴重な新作の入荷です。

商談中 定価(税込) : 1,980,000 円 販売価格(税込) :  1,881,000 円

区分 輸入クラシック 中古
製作家/商品名 パブロ・サンチェス・オテロ Pablo Sanchez Otero
モデル/品番 Model/No. “Acineira” No.38
001_003_PSotero_01_223
弦長 Scale Length 650mm
国 Country スペイン Spain
製作年 Year 2023年
表板 Top 松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides ペアウッド Solid Pearwood
付属品 Option ハードケース
備考 Notes
ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:表板 セラック
   :横裏板 セラック
糸 巻:シャーラー
弦 高:1弦 3.1mm
   :6弦 4.0mm

〔製作家情報〕
1986年 スペイン北西部のガリシア州の美しい港湾都市ア・コルーニャに生まれる。
もともとは建築を学んでいましたが、机上での製図に終始する作業に飽き足らず、木にじかに触れることから生まれる仕事への興味が次第に増してゆきます。加えて音楽とその構造に対する深い関心は抑えがたくなり、何年か家具製作とデザインを学んだあと、2009年にバルセロナでJean Pierre Sardin のサマーコースでギター製作を受講。これを機に楽器製作を生業とする事を決心します。その後2009~2011年の2年間、美術工芸学校の古楽器製作のコースでヴァイオリンとルネサンスリュートの製作を学びます。そしてその間の2010~2012年の夏、シグエンサでの名工ホセ・ルイス・ロマニリョスの講習会に参加。そこでビウエラとスペイン伝統のギター製作法を、また楽器の修復技術についてのレクチャーを受講、彼にとって決定的な影響を受けることになりました。

その後スペインからイギリス、ノッティンガムシャーのニューアーク=オン=トレントに居を移し、同国のAdrian Lucas, James Listerらからもギターの製作を学びます。さらに2013年には居をベルギーのAmberesに移し、同地のLa Escuele Internacional de Luteria de Amberes(ILSA)にて楽器修復の学科を終了後、同校にて教鞭を執る傍ら本格的に製作活動を展開します。現在は工房を生まれ故郷であるスペイン、コルーニャに移し製作を継続。師ロマニリョスから受け継いだ、細部まで妥協を許さない繊細な造作、洒脱な意匠、トーレスを基本とするスペイン伝統工法に立脚した音色の魅力等は現在のスペインの若手の中でも静かに異彩を放っており、国内外で近年評価の高まりを見せています。

トーレスモデルをメインとするクラシックモデルの他、極めて個性的なデザインのブズーキ、マンドリン、ウクレレ、アコースティックギター等も製作。


〔楽器情報〕
パブロ・サンチェス・オテロ 製作の“Acineira”2023年製 Used 美品です。
スペイン、バダローナで開催された国際製作家フェスティバルのホセ・ルイス・ロマニリョスメモリアルに出品されたもので、文字通り彼にとっての最大のメンターであるこの名工へのオマージュとなるスペシャルモデル。彼のギターには(これも師の流儀に倣って)それぞれ固有名がつけられていますが、本作の“Acineira”は「ホルムオーク(常盤樫)」の意。師の自邸の庭に生えていた樫の木から加工した材を、ロマニリョス本人から直接譲り受けた彼が、その思い出を刻印するように本作の意匠にあしらっており、それを名前としたもの。すでにトーレスモデルで瞠目すべき仕事を世に出している彼ですが、その同じテンプレート(1888年製のSE114)と構造を採用しながら、ロマニリョスギターから得たインスピレーション、そして自らのクリエイションをそこに投入してつくり上げた渾身の力作となっています。

まずその外観に目を奪われますが、表面板はベアクロウの入ったヨーロピアンスプルース、横裏板は立体的な光沢のある美しいコーラルレッドのペアウッド(pearwood)を使用し、裏板は4ピース仕様。師との思い出の樫材は実に慎ましく、しかし存在感たっぷりにロゼッタの中央にあしらわれ、それを細かな長方形のモチーフと特徴的なヘリンボーンの象嵌が取り囲むというデザイン。このヘリンボーンはパーフリングや裏板のセンターにも使用され、茶と黒そして松材と同じ柔らかな黄色を基調とした文様が明るい外観の中で実に洒落たアクセントとなっています。また銀杏の葉のブランドロゴはヘッド裏に埋め込まれています。その細部まで精緻な細工はオテロ氏の真骨頂といえるものですが、本作においては特にその繊細さと大胆さが際立っており、美しいセラックニスの仕上げと相まってその佇まいはある種の高貴ささえ感じさせるほど。

表面板構造はサウンドホール上側(ネック側)に2本、下側(ブリッジ側)に1本のハーモニックバーが設置され(これら3本ともそれぞれ形状も大きさも異なる)、左右対称7本の扇状力木とそれらの先端をボトム部で受け止めるようにV字型に配置された2本のクロージングバーというパターン。レゾナンスはFの少し上に設定されています。

発音には十分な粘りがあり、しなやかでくっきりとした音像が素早く立ち上がってきますが、同時にとても深い奥行きを持っており、オールドスパニッシュを想起させる音響設計。低めのレゾナンス設定が絶妙な重心感覚を生み出しており、ボディ全体が震えるような低音から艶やかで洗練されたされた高音までの自然なバランスが素晴らしい。その清冽さと同時にどこか古雅なニュアンスを含んだ音と表情もまた彼ならではの個性と言えるでしょう。音量的にも非常に豊かに鳴っており、また多様な音楽的要求に応じて瞬間的に反応するその身振りの素早さも特筆すべき点となっています。ネック形状はDシェイプで丸みをしっかりととって加工されているのでほとんどCシェイプに近い感触、ナット幅もやや抑えたサイズで設定されているので左手にすっと収まるようなとてもコンパクトな感覚があります。

全体は繊細なセラック塗装で仕上げられており、丁寧に使用、保管されてきたであろう本体はまだ瑞々しい艶を湛えています。割れや改造などの大きな修理履歴はありません。裏板の下部、高音側2枚の板の接ぎ部分に沿って浅い段差が数センチの長さで生じていますが、内側から接ぎの補強がされている箇所のため現状のままとしています。その他はわずかに数か所の極めて軽微なキズがありますが目を近づけてそれと認識できる程度のもので、外観を損なうものではありません。ネック・フレットの状態も適正値を維持しています。

偉大なマエストロへの深い敬意と職人としての高い矜持、パブロ・オテロ入魂の濃密な一本です。

新入荷 定価(税込) : 時価 販売価格(税込) :  1,100,000 円
注文数 :   

区分 輸入クラシック 中古
製作家/商品名 ヘルマン・ハウザー3世 Hermann Hauser III
モデル/品番 Model/No. セゴビアモデル model Segovia No.623
001_017_hauser_3_03_207_623
弦長 Scale Length 647mm
国 Country ドイツ Germany
製作年 Year 2007年
表板 Top 松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides 中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option ゲヴァケース 黒
備考 Notes
ネック:マホガニー
指 板:エボニー
塗 装:表板:ラッカー
   :横裏板:ラッカー
糸 巻:ライシェル
弦 高:1弦 3.0mm
   :6弦 4.0mm

〔製作家情報〕
ヘルマン・ハウザー Hermann Hauser
20世紀ドイツ最高のギターブランドであり、現在も4代目がその伝統を継承し製作を続けている、クラシックギターの世界では屈指の名門です。ヘルマン・ハウザーI世(1882-1952)が、ミゲル・リョベートが所有していたアントニオ・トーレスとアンドレス・セゴビア所有のマヌエル・ラミレスをベースにして自身のギターを改良し、後に「セゴビアモデル」と呼ばれることになる「究極の」名モデルを製作した事は良く知られています。それはトーレスがギターの改革を行って以降最大のギター製作史における事件となり、その後のギター演奏と製作との両方に大きな影響を与えることになります。1世が成し遂げた技術的な偉業は2世(1911-1988)、更に1958年生まれの3世に受け継がれ、それぞれが独特の個性を放ちつつ、このブランドならではの音色と驚異的な造作精度を維持したギターづくりを現在も続けています。1世はいまやトーレスと並ぶほどの高値がオークションではつけられ、1世のニュアンスにドイツ的な要素を加味した2世の作品もまたヴィンテージギター市場では高額で取引されています。3世はますますその工作精度に磨きをかけながら、長女のカトリン・ハウザーとともに現在も旺盛に製作を続けています。

ヘルマン・ハウザー3世(1958~)が初めてギターを製作したのは1974年、そして翌年地元の弦楽器工房で修行を始めており、ここですでにその技術は優秀だったようで、優れた徒弟に送られる賞を国から授与されるなどしています。この後ドイツ弦楽器製作の中心地とされているミッテンヴァルトの楽器製作学校に入学(父親も同地のヴァイオリン工房で修行)。これと並行して1978年から父であるハウザー2世のもとで製作を始めています。この最初期からそのクオリティはすでに瞠目すべきものがあり、マスタークラフツマンとして円満に製作していたかと思わせるものの、やはり父親の(そして祖父の)あまりにも輝かしい歴史と厳しい指導のプレッシャーは相当なものだったようです。しかし3世はここでただのコピーモデルを製作することに落ち着くことなく、ブランドの美学を十全に継承しながら自身の創意や工夫を凝らしたモデルラインナップを展開してゆきます。それは1980年代から始まり、1988年にハウザー2世が亡くなり正式にこのブランドを継いだ後の1990年代から2000年代にかけて進められてゆくことになるのですが、いわばドイツ性の極限までの洗練化とでもいうべきもので、鍵盤楽器のように整った音響設計、音像はそのクリアネスをさらに増し、さらには楽器本体の造作精度もこの上ないものになってゆく、モダンギターの趨勢には全く与することのない姿勢を保ちながら彼なりの現代性を獲得してゆくことになります。ハウザー家には彼の曾祖父の時から100年以上にわたって受け継がれてきた豊富な良材があり、これらの材を贅沢に使用した豪華な外観もまた3世の楽器の大きな魅力の一つとなっています。


〔楽器情報〕
ヘルマン・ハウザー3世 2007年製 No.623 セゴビアモデル Usedです。この名を冠したモデルは1世作の1937年製をベースとしながらも、その息子2世の時代からすでに力木の配置や構造、表面板のシェイプ、ロゼッタデザインに至るまでほとんど個体ごとに異なる試みが為されており、それは3世に至って先達の豊かなアーカイブを基にした彼なりのヴァリエーションの拡大へと繋がってゆき、決して同一テンプレートの反復に陥らないブランドとしての矜持を維持し続けているところはやはり敬服に値すると言えるでしょう。これらの個体ごとの差異は微細なものでありながらそれぞれが明確に音響的特徴へと繋がっていると感じさせるもので、結果彼のギターはどれも異なる個性を有している、作家としての健全性を保持したものとなっています。

表面板力木構造は、サウンドホール上下(ネック側とブリッジ側)に1本ずつのハーモニックバー、ホールの両側(高音側と低音側)には一枚ずつ幅2センチほどの四角く薄い補強プレートを設置。このうちサウンドホール下側のハーモニックバーは中央でほんのわずかにネック側に向かって屈折して、両端がくびれ部分よりもやや上のところに位置しています(これは2世後期のギターにも見られた特徴です)。ボディ下部は左右対称7本の扇状力木と駒板位置の薄い補強プレート、クロージングバー(ボトム部で扇状力木の下端を受けとめるように逆ハの字型に配置されるもので、1世のセゴビアモデルでは設置されている)は設置されておらず扇状力木が7本ともボトムぎりぎりのところまで伸びているという全体の配置。珍しいのは7本の扇状力木のうち中央5本が駒板位置の補強プレートの上を通過しているのですが、他のセゴビアモデルでは力木がプレート上にしっかりと接着されているのに対し、ここでは力木が5本ともプレート部分をぎりぎりまたぐようにして設置されていることで、極めて微細な構造の違いながら、音響の特性に必然的な影響を与えていることが考えられます。また7本の扇状力木はセンターに配された1本が幅1cmに高さ1センチ弱と一番大きく作られており、外側に向かうにしたがって少しずつサイズダウンしてゆき横板に近接する力木は幅3mm高さ3mmとかなり繊細な造り。レゾナンスはGの少し上に設定されています。

実に丁寧に弾き込まれた1本で、ハウザー的なシャープさと硬質なキャラクターを保ちながら響きには角の取れた感触があり、力強さのなかにどこか柔和な雰囲気を湛えた個体となっています。低音から高音まで一本の線で結んでゆくようないかにもこのブランドらしい鍵盤的な音響設計を十全に備えながら、重心感覚がいつもよりも低く、どっしりとした風格ともいえるものが低音部にあり、対して高音のスマートできりっとした発音と音像との対比が魅力的。ドイツ的なストイックさの中に繊細な表情の揺らぎを感じさせ、表現楽器としての十分な一本です。

ハウザーの、特に3世の作は完成時にはかなり硬質で反発感のある響きが印象としては先立ちますが、本器はじっくりと時間をかけて彼の中にある1世的なポテンシャルを顕在化した、愛すべき佳品と呼ぶにふさわしいセゴビアモデルとなっています。

割れや改造などの大きな修理履歴はありません。表面板はサウンドホール周りや駒板下などに演奏によるスクラッチキズがやや多めにあり、ボトム付近には細かな打痕が散在していますがいずれもさほどに深くなく、楽器の品を損ねるものではありません。横板はラッカー塗装の部分的なわずかな変色や擦れ等によるムラが見られます、裏板は衣服等の軽微な摩擦あとがありますがやはり全体として外観を著しく損ねるものではありません。ネックは真っ直ぐを維持しており、フレットは1~7フレットで摩耗見られますが演奏性には影響のないレベル。ネックシェイプは丸みのあるDシェイプで普通の厚み、弦高値は3.0/4.0mm(1弦/6弦 12フレット)でサドルは1.0~2.0mmの余剰があります。このサドルは出荷時のオリジナルのままで、2弦と3弦部分は弦長補正処理がされています。糸巻はドイツの高級メーカーライシェルを装着しており、こちらも現状で機能的に良好です。ボディ内部のネック脚とその脇の表面板にはハウザーの署名、製作年、シリアルNo.が直筆で記されています。重量は1.64㎏。



商談中 定価(税込) : 時価 販売価格(税込) :  2,420,000 円

区分 輸入クラシック オールド
製作家/商品名 エルナンデス・イ・アグアド Hernandez y Aguado
モデル/品番 Model/No. No.224
001_018_hernanagua_03_162
弦長 Scale Length 655mm
国 Country スペイン Spain
製作年 Year 1962年
表板 Top 松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides 中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option 軽量ケース
備考 Notes
ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:表板 セラック
   :横裏板 セラック
糸 巻:ロジャース
弦 高:1弦 3.1mm
   :6弦 4.1mm

[製作家情報]
「エルナンデス・イ・アグアド」
サンチャゴ・マヌエル・エルナンデス(1895~1975)、ビクトリアーノ・アグアド・ロドリゲス(1897~1972)の二人による共同ブランドで、エルナンデスが本体の製作、アグアドが塗装とヘッドの細工そして全体の監修をそれぞれ担当。通称「アグアド」と呼ばれ、20世紀後半以降の数多くのクラシックギターブランドの中でも屈指の名品とされています。

エルナンデスはスペイン、トレド近郊の村Valmojadoに生まれ、8歳の時に一家でマドリッドに移住。アグアドはマドリッド生まれ。2人はマドリッドにある「Corredera」というピアノ工房で一緒に働き、良き友人の間柄であったといいます。この工房でエルナンデスは14歳のころから徒弟として働き、その優れた技術と情熱的な仕事ぶりからすぐに主要な工程を任されることになります。アグアドもまたこの工房で腕の良い塗装職人としてその仕上げを任されていたので、二人での製作スタイルのひな形がこの時すでに出来上がっていたと言えます。1941年にこのピアノ工房が閉鎖された後、2人は共同でマドリッドのリベラ・デ・クルティドーレス9番地にピアノと家具の修理工房を開きます。

1945年、プライベート用に製作した2本のギターについて、作曲家であり当時随一の名ギタリストであったレヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサに助言を仰ぐ機会を得ます。この名手は二人の才能を高く評価し、ギター製作を勧めるとともに自身が所有していたサントス・エルナンデスのギターを研究のために貸し与えています。さらにはサントスと同じくマヌエル・ラミレス工房出身の製作家で、終戦直後の当時貧窮の中にあったモデスト・ボレゲーロ(1893~1969)に仕事のためのスペースを工房内に貸し与えることになり、そのギター製作の工程をつぶさに観察。これが決定的となり、ギターへの情熱がさらに高まった二人は工房をギター製作に一本化することに決め、1950年より再発進します。デ・ラ・マーサという稀代の名手とマヌエル・ラミレスのメソッドを深く知るボレゲーロ(彼は1952年までアグアドの工房を間借りして製作を続けた後に独立しています)という素晴らしい二人の助言をもとに改良、発展を遂げて世に出されたアグアドのギターは大変な評判となり、一時期70人以上ものウェイティングリストを抱えるほどの人気ブランドになりました。

出荷第一号はNo.100(※1945年に製作した個人用のギターがNo.1)で、1974年の最後の一本となるNo.454まで連続番号が付与されました。1970年前後に出荷されたものの中には同じマドリッドの製作家マルセリーノ・ロペス・ニエト(1931~2018)や、やはりボレゲーロの薫陶を受けたビセンテ・カマチョ(1928~2013)が製作したものも含まれており、これは殺到する注文に応えるため、エルナンデスが当時高く評価していた2人を任命したと伝えられています。

しばしば美しい女性に喩えられる優美なボディライン、シンプルで個性的かつこの上ない威厳を備えたヘッドデザインなどの外観的な特徴もさることながら、やはりこのブランドの最大の特徴はその音色の絶対的ともいえる魅力にあると言えるでしょう。人間の声のような肌理をもち、表情豊かで温かく、時にまるで打楽器のような瞬発性とマッシヴな迫力で湧き出してくる響きと音色は比類がなく、二人だけが持つある種の天才性さえ感じさせます。

このブランドの有名な逸話にも登場するエルナンデスの愛娘のエミリアは1945年にヘスス・ベレサール・ガルシア(1920~1986)と結婚。ベレサールはアグアドの正統的な後継者として、その精神的な面までも受け継ぎ、名品を世に出す存在になります。

アグアドがギター製作を始めるうえでの大きなきっかけとなったデ・ラ・マーサはその後彼らのギターを数本購入し愛用しているほか、ジョン・ウィリアムスやユパンキなどの名手たちが使用しています。


[楽器情報]
エルナンデス・イ・アグアド 1962年製 No.224 ヴィンテージの入荷です。
この名ブランドの、さほどに長くはない歴史の中でもとりわけ人気と評価の高い1960年代初期の作。柾目のブラジリアン・ローズウッドを横裏板として使用し、おなじみのヘッドデザインにアグアドらしい優美さをたたえたボディ、柔らかな気品が漂う見事な一本。

力強く、アグアド独特の包容力ある響き、ジェントルで耳に心地よい独特の肌理をもった音色が素晴らしい。また人間的と言いたくなるほどによく歌い、変化する表情の繊細さも名品ならでは。心の動きとシンクロしながら、同時に楽器のほうからも奏者に対して働きかけをしてくるような真に音楽的な瞬間は他では得られない感覚でしょう。しかしながら同時に(名器の常として)、奏者には然るべきタッチの熟練が求められますが、それが一致した瞬間の充実感はやはり格別なものがあります。

内部構造について、年代的な傾向はありますが、アグアドはほぼ個体ごとに力木配置を変えていました。本作ではサウンドホール上下(ネック側とブリッジ側)に1本ずつのハーモニックバー、ボディ下部は左右対称7本の扇状力木とその先端をボトム部で受け止めるようにハの字型に配された2本のクロージングバー、そしてブリッジの位置には駒板とほぼ同じ大きさのパッチ板が貼られ、扇状力木はその上を通過しています。レゾナンスはGの少し上に設定。

表面板の指板脇、サウンドホール周りを中心に弾き傷など、またブリッジ下部分は弦飛びの痕があります。裏板は演奏時に胸のあたる部分の塗装に摩耗が若干見られ、またネック裏の1~2フレット付近にも塗装の摩耗が生じていますが割れ補修等の大きな修理履歴はなく、60年を経た楽器としてはかなり良好な状態と言えるでしょう。ネックは真っすぐを維持しており、フレットは1~7フレットでやや摩耗していますが現状で演奏性には問題のないレベル。比較的薄めに加工されたDシェイプのネック、弦はやや強めの張り。糸巻はオリジナルのフステロ製を装着しており、現状で機能的な問題はありません。サウンドホールラベル、表面板サウンドホール高音側にサインあり。

丁寧に弾き込まれており、レスポンスにはまだ硬い部分もあり、まだまだ鳴らしていけるポテンシャルを有した一本となっています。スペイン屈指の名ブランドの、状態そして音ともに良質なUsedです。 


新入荷 定価(税込) : 時価 販売価格(税込) :  6,600,000 円
注文数 :   

区分 輸入クラシック オールド
製作家/商品名 イグナシオ・フレタ1世 Ignacio Fleta I
モデル/品番 Model/No. No.157
001_019_fletaI_1_03_159_157
弦長 Scale Length 660mm
国 Country スペイン Spain
製作年 Year 1959年
表板 Top 松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides インディアンローズウッド Solid Indian Rosewood
付属品 Option ハードケース(YAMAHA)
備考 Notes
ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:表板 セラック
   :横裏板 セラック
糸 巻:フステーロ
弦 高:1弦 3.3mm
   :6弦 4.5mm

[製作家情報]
イグナシオ・フレタ1世(1897~1977)Ignacio Fleta I により設立され、のちに二人の息子フランシスコ(1925~200?)とガブリエル(1929~2013)との共作となる、スペイン、バルセロナの工房。このブランドを愛用した、または現在も愛用し続けている数々の名手たちの名を挙げるまでもなく、20世紀後半以降を代表する銘器の一つとして、いまも不動の人気を誇っています。

生まれはスペイン、アラゴン州テルエル(Teruel)県の村Huesa del Comun。アラゴン州が隣国フランスと近接する地域で中世からのお互いの文化的な交流が他の州よりも盛んで、現在も音楽や特に言語的な影響が色濃く残っており、アラゴン語にはスペイン語よりもフランス語に近い発音が多いことはフレタ1世のギターにおけるある種のフランス性(それゆえにフレタをスペインギターと認めないという声もあるほど)を語るうえで注目すべき点といえるでしょう。フレタ家はもともと家具製作など木工を生業とする家系で、イグナシオも幼少からそのような環境に馴染みがありました。13歳(一説には14歳)の頃に兄弟とともにバルセロナで楽器製作工房の徒弟となり、更に研鑽を積むためフランスでPhilippe Le Ducの弦楽器工房でチェロなどのヴァイオリン属の製作を学びます。その後フレタ兄弟共同でバルセロナに工房を設立し、ギターを含む弦楽器全般を製作するブランドとして第一次大戦前後でかなりの評判となりますが、1927年に工房は解散。イグナシオは自身の工房を設立し、彼の製作するチェロやヴァイオリンをはじめとする弦楽器は非常に好評でその分野でも名声は高まってゆきます。同時に1930年ごろからトーレスタイプのギターも製作していましたが(この時期バルセロナ派のギター製作家 Enrique Coll に指導を受けており、Collは名工Francisco Simplicio の弟子にあたります)、1955年に名手セゴビアの演奏に触れ、そのあまりの素晴らしさに感動し、以後はギター製作へと完全に転向することになります。フレタは巨匠の演奏から霊感をも受けたのか、その新モデルはトーレススタイルとは全く異なる発想によるものとなり、1957年に製作した最初のギターをセゴビアに献呈。すると彼はその音響にいたく感動し、自身のコンサートで使用したことで一気にフレタギターは世界的な名声を得ることになります。それまでのギターでは聞くことのできなかった豊かな音量、ダイナミズム、そしてあまりにも独特で甘美な音色でまさしくこのブランドにしかできない音響を創り上げ、セゴビア以後ジョン・ウィリアムスやアルベルト・ポンセなどをはじめとして数多くの名手たちが使用し、20世紀を代表する名器の一つとなりました。

当初はIgnacio Fletaラベルで出荷され、1965年製作のNo.359よりラベルには「e hijos」と記されるようになります(※実際には1964年製作のものより~e hijos となっておりフレタ本人の記憶違いの可能性があります)。1977年の1世亡き後も、また2000年代に入りフランシスコとガブリエルの二人も世を去ったあともなお、「Ignacio Fleta e hijos」ラベルは継承され、現在は1世の孫にあたるガブリエル・フレタが製作を引き継いでいます。


[楽器情報]
イグナシオ・フレタ1世 1959年製 No.157 の入荷です。1957年にセゴビアのためのギターを製作してからわずか2年後の作で、この伝説的な文脈で語らずとも、この時期のフレタ1世のギターはその異様な迫力で完全に他のブランドを圧倒する個性にあふれています。セゴビアの激賞を受けながらもフレタは1960年代に入るまで力木やバーの本数や形状、表面板の厚みの設定など1作ごとに異なる試みをしており、そのためこの時期のブランドの音響的な特性を定義するのは非常に難しいものがあります。だれもがその特徴として口にするであろうその豊かな音量と極めてロマンティックな表現力についてさえ、その性質において一本一本が異なるものがあり、まさに生き物のような実在性を感じさせるところなどほとんど芸術的といえるほど。

本作No.157もまた、その非常な音圧の高さとオーディトリアムな音の拡がり、濃密なロマンティシズムを湛えた表情が素晴らしい一本となっています。強い粘りを持つ引き締まった発音が特徴的で、いかにも剛健でありながら、一つ一つの音には濃密な歌のポテンシャルが内包されており、これがフレタ特有の深い奥行きをともなって現出してくる様はやはり比類がありません。また特に低音の、響箱がぶるぶると地響きのように震える響きはまるで弦楽器のようで、クラシックギターの音響体験として稀有と言えます。こうした種々の強いアイデンティティがギター的なバランスの中で対比され融合してゆく、その生々しく、それゆえにこそクラシカルな表現力はやはり圧倒的な個性があります。

表面板の力木配置は、サウンドホール上側(ネック側)に2本、下側(ブリッジ側)に1本のハーモニックバーで、下側のバーは低音側から高音側に向けてほんのわずかに斜めに下がってゆくように設置されています。サウンドホール上側のハーモニックーからネックの付け根に至るエリアまではほぼ完全に2mmほどのやや厚めのプレートでまんべんなく補強されており、さらにサウンドホールの両側(高音側と低音側)は幅4センチほど、厚さ1mm未満の補強プレートが近接する横板のに沿うようにやや斜めに設置されているので、くびれから上はほとんどのエリアが補強されているような形になります。そして左右対称9本の扇状力木とそれらの下端をボトム部で受け止めるようにV字型に配置された2本のクロージングバー、駒板位置にはほぼ同じ面積で1mm未満の厚さの補強プレートが貼られているという全体の構造。レゾナンスはF♯~Gの間に設定されています。扇状力木は全て1センチ程の幅で中央に配置されたものが高さ3mmほどで一番外側のものは1mm未満となっており、全体に平べったい形状をしています(後年になるにしたがって全体に厚みを増してゆきます)。またサウンドホール下側ハーモニックバーは本作では一本でほんのわずかに斜めに設置されていますが、この翌年策では水平の1本と斜めの1本の2本に増えていきます。レゾナンスの位置も変化しており、例えば前年の1958年製ではEの下、1960年のものではGの上となっています。

全体はセラック塗装、おそらくは塗り替え等はなくオリジナルの状態を保持していると思われます。表面板はこの時期のフレタにしばしば見られる現象ですが、ブリッジのサウンドホール側とボトム側とでやや歪みがあり、割れの修理履歴がいくつかございます。指板脇高音側に2箇所、駒板の高音側脇に20センチほどの長い割れ、駒板下低音側からボトムにかけて1か所それぞれ補修歴がありますがいずれも現状で継続使用への影響はありません。横裏板は経年相応の傷や擦れなどありますが外観を損ねるほどではなく、また割れもありません。ネック裏も経年相応の傷がありますが爪による過度の摩耗や通すの剥がれ等には至っておらず、演奏時の感触としては問題のないレベルです。演奏性に関する部分も問題なく、ネックは真っすぐを維持しており、フレットも適正値で特に目立った摩耗はありません。ネック形状はこの時期のフレタ1世の特徴的なほとんどCラウンドに近いDシェイプで、あまりコンパクトすぎずしっかりとしたグリップ感があります。弦高値は3.3/4.5mm(1弦/6弦 12フレット)でサドルに1.0~1.5mmの余剰があります。弦長660mmで弦高値もやや高めの設定ですが弦の張りはさほどに強くなく中庸といえるほどなので、さほどに演奏時のストレスは感じません。糸巻は製作時のままのフステーロ製を装着、機能的な問題はありません。重量は1.65㎏。


新入荷 定価(税込) : 時価 販売価格(税込) :  お問い合わせ下さい。

区分 輸入クラシック オールド
製作家/商品名 イグナシオ・フレタ1世 Ignacio Fleta I
モデル/品番 Model/No. No.251
001_019_fletaI_1_03_162
弦長 Scale Length 650mm
国 Country スペイン Spain
製作年 Year 1962年
表板 Top 松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides インディアンローズウッド Solid Indian Rosewood
付属品 Option 軽量ケース 黒
備考 Notes
ネック:マホガニー
指 板:エボニー
塗 装:表板 セラック
   :横裏板 セラック
糸 巻:フステロ
弦 高:1弦 2.8mm
   :6弦 3.8mm


[製作家情報]
イグナシオ・フレタ1世(1897~1977)により設立され、のちに二人の息子フランシスコ(1925~200?)とガブリエル(1929~2013)との共作となる、スペイン、バルセロナの工房。このブランドを愛用した、または現在も愛用し続けている数々の名手たちの名を挙げるまでもなく、20世紀後半以降を代表する銘器の一つとして、いまも不動の人気を誇っています。

フレタ家はもともと家具製作など木工を生業とする家系で、イグナシオも幼少からそのような環境に馴染みがありました。13歳の頃に兄弟とともにバルセロナで楽器製作工房の徒弟となり、更に研鑽を積むためフランスでPhilippe Le Ducの弦楽器工房でチェロなどのヴァイオリン属の製作を学びます。その後フレタ兄弟共同でバルセロナに工房を設立し、ギターを含む弦楽器全般を製作するブランドとして第一次大戦前後でかなりの評判となりますが、1927年に工房は解散。イグナシオは自身の工房を設立し、彼の製作するチェロやヴァイオリンをはじめとする弦楽器は非常に好評でその分野でも名声は高まってゆきます。同時に1930年ごろからトーレスタイプのギターも製作していましたが、1955年に名手セゴビアの演奏に触れ、そのあまりの素晴らしさに感動しギター製作のみに転向することになります。フレタは巨匠の演奏から霊感をも受けたのか、その新モデルはトーレススタイルとは全く異なる発想によるものとなり、1957年に製作した最初のギターをセゴビアに献呈。すると彼はその音響にいたく感動し、自身のコンサートで使用したことで一気にフレタギターは世界的な名声を得ることになります。それまでのギターでは聞くことのできなかった豊かな音量、ダイナミズム、そしてあまりにも独特で甘美な音色でまさしくこのブランドにしかできない音響を創り上げ、セゴビア以後ジョン・ウィリアムスやアルベルト・ポンセなどをはじめとして数多くの名手たちが使用し、20世紀を代表する名器の一つとなりました。

当初はIgnacio Fletaラベルで出荷され、1965年製作のNo.359よりラベルには「e hijos」と記されるようになります(※実際には1964年製作のものより~e hijos となっておりフレタ本人の記憶違いの可能性があります)。1977年の1世亡き後も、また2000年代に入りフランシスコとガブリエルの二人も世を去ったあともなお、「Ignacio Fleta e hijos」ラベルは継承され、現在は1世の孫にあたるガブリエル・フレタが製作を引き継いでいます。

[楽器情報]
イグナシオ・フレタ1世 1962年製 No.251 の入荷です。
クラシックギターにおいて他に類するものがないと言えるほどに独特な音圧の高さとオーディトリアム感があり、ほとんどギターではない別の何ものかのような異様な大きさを感じさせます。それはモダンギターのように「増幅された音量」ではなく、響箱の容量そのもののポテンシャルが顕在化したもので、明らかにそれまでのスパニッシュギターの伝統的な音作りからは異端ともいえるアプローチの音響設計がまずは特筆すべき点でしょう。

このオーディトリアム感(「リヴァーヴ感」「奥行き感」と言い換えてもよいのですが)はこれ自体にも濁りを含んでおらず、その空間性にも透徹としたところがあります。

そして音について、ここでフレタ1世はロマンティックという言葉が喚起するであろう音楽表現に必要なものをギターで可能な限り表出してみせます。その濃密な歌と艶やかな音、明と暗の表情の揺らぎなどは生々しいほどで、弾き手に音楽を(まさに演奏しているその中で)喚起する力があることなど、何よりもまずフレタが最上の表現楽器であることを如実に感じさせてくれます。非常な音圧の高さは大音量だけに特性を特化することなく、最弱音における繊細な機微も、フォルティシシモにおける豪放さもどちらも内包するものとして、つまり隅々まで音楽的な大きな拡がりとしての性質としてあり、ここには弦楽器製作者としての彼の出自とその矜持も見て取ることも可能でしょう。高音、中低音、低音の各部のアイデンティティがそれぞれ明確でありながら全体として有機的な一つのバランスに収まっているところなどはさすがにスパニッシュギター的な特性を感じさせますが、フレタにおいては例えば曲を演奏するときに各部の個性が際立ち、まさしく室内楽的な空間を形成してしまうようなところがあるのが特徴的です。

表面板力木配置は、サウンドホール上下(ネック側とブリッジ側)に各2本のハーモニックバーが設置されていますが、下側のハーモニックバーは2本とも低音側から高音側に向けてほんのわずかに斜めに下がってゆくように設置されています(ただしこの2本は低音側でほぼ起点をおなじくしているものの平行ではなく微妙に異なる角度で設定されており、そのため高音側の横板に達する地点では数センチの開きが生じるような形になっています)。このバーより下側は合計9本の扇状力木と、これらの力木の下端をボトム部で受けとめるようにV字型に配置された2本のクロージングバー、駒板位置にはその幅よりもやや広めにとられた補強用の薄いプレートが貼られています。補強用のプレートはサウンドホールの両脇にやや広めのものが一枚ずつ、さらにはサウンドホール上側2本のハーモニックバーの間とネック脚に至るまでのエリアをほぼ満遍なく覆うように貼り付けられており、ボディウェストから上側の全域が、計4本のハーモニックバーの設置も含めて、しっかりと強固に固定されていることが分かります。一番下側(ブリッジに近い側)に設置された斜めのハーモニックバーの低音側は高さ2~3mmほどのわずかな開口部が設けられており、9本の扇状力木のうちセンターを含む5本が上端をその開口部をくぐる抜けるようにして設置されています。

フレタ1世の表面板力木構造の特徴は上記のようにしっかりと補強し振動を抑制したアッパーエリアと、斜めに配置されたサウンドホール下側ハーモニックバー、9本(通常のスペインギターは5~7本)の扇状力木となっていますが、1950年代から1960年代始めにかけては細部で異なる設計が試みられており(力木のサイズ、バーの本数等)、それに応じて音響的特徴も変化を見せています。1962年の本作においては、例えば1950年代のフレタと比較するとサウンドホール下側バーの本数は1本から2本に増えてしかも2本とも斜めになっており、しかもバー本体に開口部が設けられ扇状力木の上端がそこを通過するという、その後のフレタギターにおいても採用されていない特徴が見られます。また9本の扇状力木は年を経るごとに太く高く、つまり強固になってゆきますが、この時点ではセンターの1本がやや強固に、外側にいくほどに小さく繊細な造りになっているのもこの時期だけの特徴と言えます。レゾナンスはGの少し上に設定されています。

表面板と横板のみ今回の入荷時にセラックでの再塗装を行っており、その際に表面板の傷や打痕、割れ修理あとなどはタッチアップを施しておりますので現状できれいな状態となっています。割れは表面板のサウンドホール縁から駒板にかけて1ヵ所、駒板からボトムにかけて2か所、駒板高音側わき部分からボトムにかかけての割れが1ヵ所、下部低音側ふくらみ部分(演奏時に右ひじが当たる部分)に1箇所の割れがあります。いずれも内側より木片によるパッチ補強が施されております。裏板はネックヒールの両脇部分からボトム方向に一か所ずつ、それぞれ8センチほどの長さの割れ補修歴がありますが、その他は衣服等の摩擦あとや一部塗装のムラが若干あるのみで年代の割にはきれいな状態を維持しています。ネックは厳密にはほんのわずかに順反りですが標準設定の範囲内、フレットはこれも微妙にですが1~5フレットでやや摩耗見られます、ただしいずれも演奏性には影響なく、現状のまま継続してご使用いただけます。ネックシェイプはフレタ1世らしい角の取れた薄めのDシェイプでコンパクトなグリップ感。指板は高音側20フレット増設。弦高値は2.8mm/3.8mm(1弦/6弦 12フレット)でサドル余剰は0.5mmほどとなっています。糸巻はスペインの老舗工房フステーロのものを装着しており、おそらく出荷時のままかと思われます。3弦のツマミ軸が若干曲がっていますがギア部分には全く影響なく、全体に機能的な問題はありません。



新入荷 定価(税込) : 時価 販売価格(税込) :  5,500,000 円
注文数 :   

区分 輸入クラシック 新作
製作家/商品名 マルコ・ボルトロッツォ Marco Bortolozzo
モデル/品番 Model/No. ハウザー1世モデル model Hauser I No.118
001_BortolozzoM_01_225_118
弦長 Scale Length 650mm
国 Country イタリア Italy
製作年 Year 2025年
表板 Top 松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides 中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option ハードケース
備考 Notes
新作手工品をご購入のお客様には、弊社にて弦高調整を1回無料でご利用いただけるサービス(有効期限なし)をお付けしております。
※購入時に装着されている部品(ナット、サドル)本体の調整に限ります。部品新規作成の場合には別途作成費用がかかります。
※ネック反りの調整が必要な場合は別途調整費用がかかります。

ネック:マホガニー
指 板:エボニー
塗 装:表板/セラック
   :横裏板/セラック
糸 巻:バーネット
弦 高:1弦 2.9mm
   :6弦 3.8mm

[製作家情報]
Marco Bortolozzo マルコ・ボルトロッツォ。 イタリア、ミラノに工房を構える製作家。1980年代の初めにイタリア北東部の町ヴィッラノーヴァ・ディ・フォッサルタに生まれる。ワイン畑などの田園風景が広がるこの町で幼いころから父親の使う様々な工具を使って物を作り、同時に音楽の演奏を楽しむような青年時代を過ごした後、大学では工業デザインを専攻。ある日イエローページで偶然に見つけたというギター製作家 Dario Pontiggiaに会いに行き、彼から聞いたアントニオ・デ・トーレスの話が自身の製作家への道を決定づけたと言います。

最良の楽器は職人の直の手によって生まれるという製作哲学を持つ彼は、伝統的な工法と治具とにこだわり、木材も製材の段階から自ら行うほど。先人たちへの敬意を保ちながら、柔軟に新しい要素を彼ならではの自然なやり方で盛り込んでいったギターは新しさと懐かしさが無理なく同居した、美しく上品な佇まいのものとなっています。その造作はイタリア屈指と言ってよいほどの精緻さで、決して派手ではないものの中庸の美学を常に感じさせる意匠、そして細部まで揺るがせにしない見事な仕上げ。決して外形から到達しようとするのではなく、しっかりと耳で捉えた音響の着地点も実に的確。誠に端倪すべからざる才能の持ち主と言えるでしょう。現在のイタリア若手の中でも特に注目の俊秀です。

[楽器情報]
マルコ・ボルトロッツォ 2025年製作 ハウザー1世モデル No.118 新作です。
文字通りヘルマン・ハウザー1世のあまりにも有名な1937年製セゴビアモデルを基に、製作家独自の美学を盛り込んで完成させた高密度なオマージュモデルとなっています。

マルコ氏の特徴の一つのとして、非常な木工技術による精緻の極みともいえると細工と意匠がまずは挙げられますが、本作においてもそのほとんどartistic とさえいえるほどの精密さに目を奪われます。また意匠において彼は常に慎ましく、華美になり過ぎることを避け、むしろ素材そのもののもつ模様や色合いを活かしそれらを組み合わせることで独自のテクスチャーを生み出す作法を心得ており、それが全体の凛とした姿に表れています。

そして音も素晴らしい。その美しい姿そのままに、ハウザーの音がスマートな装いとともに清新な音響として現出してきます。ここでもマルコ氏はハウザー1世特有の音響設計と発音特性をしっかりとつかみ、非常な解像度の高さで再構築して見せています。さらに彼の非凡な感性は、ハウザー1世の内包していたスペイン性とドイツ性との弁証法的帰結とも言える音響(それはつまり西洋音楽的な音響ともいえるものですが)、理念の混淆により生み出された異様ともいえる音響、のエッセンスを汲みつくしたうえで洗練化させており、その音響の絶妙な構成力は驚くほど。そしてハウザーの厳粛ともいえる響き、ここに彼は自身のイタリア性をもさりげなく加えてみせ、なんら厳かに構えることのない、明朗で親密なハウザーモデルとして着地させています。

では「ハウザー的」音響設計とは何か、ということになるのですが、まず全体に位相差のない定位感のしっかりした音響で、適切な重心感覚をもった低音から高音まで乱れのない一本の線を形成するかのような「鍵盤的」なバランスであると言えます。さらに単音は一切の雑味を排し、それでいて凛とした潤いと艶を湛え、和音では完璧な一つのまとまりを構築しながら構成音の一つ一つをしっかりと聴かせる。そして特にポリフォニックな要素が強い楽曲ではまさに鍵盤のようにその対位法を明確化してみせる(この点スペインの楽器では各声部を異なる楽器が奏でるような室内楽的ともいえる音響で対位法を表現してみせます)。発音は、形の整った音像が美しい点のようにして瞬間的に表れ、その軽い粘りを伴った撥弦における反発感がなんとも心地良い。マルコ氏はこのようなハウザー的特徴をつかみながらそこにミラノ的ともいえる明朗さを実にさりげなく加えているのですが、決して雰囲気を優先させず、音楽的な音としてのあるべき姿として着地させているところなど、彼の職人としての矜持を感じさせ、誠に清々しいものがあります。

表面板の力木構造は、サウンドホール上下(ネック側とブリッジ側)に一本ずつのハーモニックバー、左右対称7本の扇状力木にこれらの下端をボトムで受け止めるようにV字型に配置された2本のクロージングバー、駒板位置にはほぼ同じ面積をカバーするように薄い補強プレートが貼られているという構造。サウンドホール周りとネック脚周辺を覆うようにして特徴的な形で補強プレートが貼られているのに加え、ネック脚部分の加工もここだけで一つの木工細工を思わせるような特徴的な細工が施されています。また表面板と横板との接合部分に接着されているペオネス(木製の小型のブロック、たいていは断面が直角三角形をしたもの)は断面が三角形のものと薄く平坦なものとが交互に貼り付けられており、これはマルコ氏のオリジナルの発案によるもの。レゾナンスはF~F#の間、低めの絶妙な位置に設定されています。

全体は美しいセラック塗装仕上げ、表面板の松、横裏板のブラジリアン・ローズウッドともにマルコ氏厳選のものが使用されています。横板は内側にメイプル材を貼り付けた2重仕様。裏板は3ピース仕様で接ぎ部分における細工もさりげなく緻密でグラフィックな仕事がされており(しかもそれはサウンドホールからしか見えないように内側のみに細工されています)、なんとも心くすぐられるポイントになっています。マホガニーのネックは薄めのDシェイプで角の取れた形状になっており、ほとんどCシェイプといえるほどのラウンドでコンパクトなグリップ感。ヘッドとの接合部分はこれもオリジナルに則ってVジョイント方式を採用。糸巻はドイツの高級ブランド Barnett 製を装着しています。重量は1.49kg。

ラベルはオークの葉が描かれた洒落たデザイン。幼少の頃、生まれ故郷ヴィッラノーヴァの町に生えていたオークの老木と親しんだ思い出がストーリーの始まりで、ミラノに移り初めての工房を立ち上げた時、自然に庭にオークの新芽が生えてきてみるみる育っていったという。そこに新たな出発の徴を感じた彼はそのオークの葉をブランドラベルとしたのだそうです。


新入荷 定価(税込) : 2,970,000 円 販売価格(税込) :  2,376,000 円
注文数 :   

区分 輸入クラシック 中古
製作家/商品名 クリストファー・ディーン Christopher Dean
モデル/品番 Model/No. No.122
001_Cdean_1_02_190
弦長 Scale Length 650mm
国 Country イギリス England
製作年 Year 1990年
表板 Top 松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides 中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option ハードケース(黒)
備考 Notes
ネック:マホガニー
指 板:エボニー
塗 装:表板 ラッカー
   :横裏板 ラッカー
糸 巻:スローン
弦 高:1弦 2.7mm
   :6弦 3.5mm

[製作家情報]
クリストファー・ディーン Christopher Dean 1958年生まれ。イギリス、オックスフォードに工房を構える。10代の頃よりギターを演奏していましたが、17歳の時にプレゼントされたIrving Sloane のギター製作マニュアルを読んだことをきっかけに製作への興味を持ち始めます。1979年には有名なLondon College of Furnitureに入学し3年間楽器製作についての基礎を学びます(同校はゲイリー・サウスウェル、マイケル・ジーらの出身校でもあります)。ここでのカリキュラムにはホセ・ルイス・ロマニリョスやポール・フィッシャーの工房での実地研究も含まれていたことがきっかけになり、卒業後1年間ニュージーランドで家具製作に従事したのちに1982年フィッシャーの工房に職人として入ります。ディーン自身はフィッシャーのことを師として尊敬し実際に多くを学んでゆきましたが、フィッシャーはこの青年の成熟した感性と技術をすぐに見抜き、わずか3か月の「研修期間」のあとすぐに正式な職工としてフィッシャーラベルのギター製作を託すことになります。ここで充実した3年間を過ごした後に独立し自身の工房を設立、現在に至ります。

その作風は師であるフィッシャーや、さらにさかのぼってデヴィッド・ルビオをも想起させる堂々たる外観とたっぷりと濃密な艶を含んだ音色、力強い響きなどが挙げられますが、そうした彼の出自に直接つながるラインとは別にフランスのフレドリッシュ、トーレス、ハウザーからも多くのインスピレーションを得ており、とりわけサントス・エルナンデスからの大きな影響を受けています。1929年製のサントスギターを修繕する機会を得た彼は実地にオリジナルの構造を研究し、その後すぐれたサントスモデルを発表。憧れてやまないと公言する伝説的ギタリスト アンドレス・セゴビアへのオマージュさえも含んだすぐれたモデルとして高い評価を得ています。

[楽器情報]
クリストファー・ディーン製作オリジナルモデル 1990年製 No.122 Usedです。1980年代後半に入ってから自らの工房を立ち上げた彼にとって本作はいわばキャリア初期のモデルであり、その仕上がりには多分にフィッシャー的なものを感じさせながらも、すでに彼の後年の特質となるある意味学際的と言えるほどに多様性を内包しつつさりげなく伝統的な身振りのなかに自己をおいてみせる、その独特のスタンスの萌芽が見て取れます。師であるフィッシャーがアカデミックなアプローチにやや偏向し過ぎた感のある展開をちょうど同時期に見せ始めるのに対し、ディーンは自らの出自と語るルビオとフィッシャー、そしてセゴビアの音色を基礎としながら、まさに横断的に数々の先達の作のエッセンスを吸収し、持ち前のバランス感覚で見事にそれらの音響を新たな洗練へと昇華させていきます。

表面板の力木配置はスパニッシュギターの影響を如実に感じさせるもので、サウンドホール上側(ネック側)に高さと断面形状のそれぞれ異なる2本のハーモニックバー、下側(ブリッジ側)に1本のハーモニックバーともう一本のトレブルバー(低音側から高音側に向かってボトム方向に斜めに下がってゆくようにして設置されたバー、ここでは下側ハーモニックバーのやや低音寄りの部分を起点として高音側横板に向かって伸びています)、そしてこの上下バーの間、サウンドホール高音側と低音側とにそれぞれ各一本の短い力木がちょうど近接する横板のカーブに沿うようにして設置されています。ボディ下部は計6本の扇状力木がセンターの1本を境にして高音側に2本、低音側に3本を配置、ボトム部にはそれらの下端を受け止めるように2本のV字型に配されたクロージングバー、駒板位置にはほぼ同じ面積に2mmほどの厚さの補強プレートが貼ってあるという全体の構造。表面板と横板との接点にはペオネスではなくライニング板が設置されています。レゾナンスはAの少し上に設定されています。

いかにもスパニッシュギター的な構造を採用しながらここでディーンは敢えて低音の重心を下げ過ぎず、響きも太くし過ぎず、自然に高音の力強さが際立つような音響設計で全体を実にバランスよくまとめあげており、敢えて言えばホセ・ラミレス的マドリッド派との近似性はあるものの(レゾナンスの設定も含め)、これらのギターにおける高音の歌の強い前景化と比して、ここでのディーンはいかにも洗練されています。その高音の樹脂のような濃密な透明感とそれを適切に支える低音とのバランスが作り出す音響はとても魅力的。一つ一つの音像そのものはクリアで、自然な奥行きを伴って響きます。その表情も十分に豊かながら甘さを回避し、やや安直に言えばイギリス人らしいジェントルなニュアンスで統一されているので、バロックからロマンティックな楽曲までが自然にクラシカルな相貌におさまってゆきます。

現在彼はほぼすべてのギターをセラック塗装仕様にしていますが本作では厚みのあるラッカー塗装。湿度変化によると思われるウェザーチェックが表面板全体に見られますが、現状で継続使用には問題ございません。割れや改造等の大きな修理履歴はなく、また弾きキズなどのも指板脇やサウンドホールの周りなどにわずかにあるのみで、横裏板は衣服等による軽微な摩擦あと、ネック裏も細かなキズだけの状態となっています。ネックは真っ直ぐを維持しており、フレットは1~5フレットでわずかに摩耗ありますが演奏性には影響ありません。ネック形状はやや薄めのDシェイプでフラットな握り心地。弦高値は2.7/3.5mm(1弦/6弦 12フレット)でサドル余剰は1.0mmあります。指板は高音側20フレット仕様となっています。糸巻はスローン製を装着しておりこちらも現状で機能性に問題ありません。重量は1.76㎏。



新入荷 定価(税込) : 時価 販売価格(税込) :  660,000 円
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区分 輸入クラシック オールド
製作家/商品名 トーマス・ハンフリー Thomas Humphrey演奏動画あり
モデル/品番 Model/No. ミレニアムモデル
001_humphrey_1_03_195_01
弦長 Scale Length 650mm
国 Country アメリカ U.S.A
製作年 Year 1995年
表板 Top 松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides 中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option ハードケース
備考 Notes
ネック:マホガニー
指 板:エボニー
塗 装:表板 セラック
   :横裏板 セラック
糸 巻:ゴトー
弦 高:1弦 3.0mm
   :6弦 4.0mm


[製作家情報]
トーマス・ハンフリー(1948~2008)アメリカ、ミネソタ州生まれ。かなり若い時からチェロを本格的に学んでおり、本人曰くこれがギター製作の大きなバックグラウンドになったとのこと。1970年にニューヨークを訪れ、同地にギターショップを構えていたマイケル・グリアンに弟子入りし、働きながら11年にわたり製作を学びます。1981年にロサンジェルスに訪れた際に彼はあの名手アンドレス・セゴビアの主宰するマスタークラスの洗礼を受け、さらには同地の著名なコレクターの所有するスペイン製の多くの名器に触れたことで自身のたどるべき道を確信します。直後の1982年には一年をかけてスパニッシュギターの研究に費やし伝統的な工法を完全に熟知すると同時に、あの真に革新的なMillenniumモデル製作の実践も始め、1985年には試作第一号を製作します。Millenniumモデルの最大の特徴は表面板の指板横のエリアをネックヒールに向かって薄くなるように傾斜させることで必然的に12フレット以降の指板が盛り上がったような設定になり(Raised fingerboard)、ハイフレットでの演奏性を向上させるとともに表面板の弦振動効率を上げ、高い演奏性と音量の増大というクラシックギターの「弱点」を克服するとともに、その「ハープのような」ヴィジュアルによる特異なルックスがあげられます。そのギター製作における歴史的な意味は大きく、その後多くのフォロワーを生み出すとともに、エリオット・フィスクやアサドなどヴィルトゥオーゾらの高度な要求にも完璧に応えうるモデルとして、モダンギターの一つのスタンダードとなりました。

同時代のアメリカを代表する製作家であるロバート・ラック、ジョン・ギルバートらと並ぶ、アメリカ発モダンギター最大の巨匠の一人とされましたが、2008年4月に急逝。なお彼の考案したレイズドフィンガーボード構造は Pat No.4873909 の特許を取得しており、ボディ内部のネック脚部分に左記の番号が刻印されています。

[楽器情報]
トーマス・ハンフリー 1995年製作 Millennium(ミレニアムモデル)Used です。ハンフリーの代表作であり、G.スモールマンのLattice構造、M.Damann のダブルトップ構造と並びモダンギターのスタンダードを創出した稀有なモデルです。彼のキャリアのなかでは比較的初期と言える作ですが、工作精度のみならず、音響バランス、ギターとしての表現力の高さ、卓越した演奏性などのすべての要素が極めて高次における統一的な完成を達成しており、誠に名器の名に恥じぬ一本となっています。

その「ハープのような」特徴的ルックス(12フレットで指板の表面板からの高さが2.7cm、20Fでも1.7cm)がクローズアップされがちですが、ハンフリーはむしろ他のモダンギターの傾向(音量の増大、画一的な音響、鋭敏な反応など)と全く異なる、ある意味「反動的な」とも言えるほどにトラディショナルで味わい深い音色とその類まれな表現力によって評価されるべきでしょう。非常な滋味を湛えた響きがハンフリーならではの慎ましい洗練によって清新な佇まいとなり、その落ち着きと鋭さが同居した音響がなんとも素晴らしい。Bassとしての明確なアイデンティティを持ったたっぷりとした低音と、雄弁な内声部を構成する中低音、そして細くしかしなやかで芯の強い高音へと至る全体のバランスも有機的で、音楽が自然な流れを生み出すのに寄与しています。加えてタッチにほとんどまとわりつくような高い発音の反応性と特に高音における繊細な歌の表現も特筆すべき点となっています。

表面板のアッパー部分を大胆に傾斜させることで指板が持ち上がったような設定になっているのですが、ボディを薄くすることによる響きへのデメリットは全く感じさせません。むしろ容積の縮小を活かして発音の反応性を高めると同時に、トーレス的な力木配置を楽器構造に即して無理なくアップデートしたあくまでもシンプルな設計によって、上記のようなナチュラルな響きの統一感を達成するに至っています。付言すれば、チェロの演奏を能くした彼だけに、この外形的設計の発想はやはり弦楽器の指板設定を参照したと想像することはできると思います。

Millennium モデルという名称と外観では統一されていましたが、実は彼は表面板の力木構造において様々な配置を試みています。本器の力木配置はサウンドホール上側(ネック側)で2本のハーモニックバーを交差させるXブレーシング配置に、下側(ブリッジ側)は1本のハーモニックバー、そして扇状力木は5本がそれぞれ平行に近い形でほぼロゼッタの直径に収まるほどに中央に寄せて配置されており、それらの先端をボトム部で受け止めるようにV字型に配置された2本クロージングバーを設置。さらには計3本のバーがサウンドホールとブリッジの間に1本、ブリッジ上(サドルの位置)に1本、ブリッジとクロージングバーの間に1本設置されているのですが、これらは5本の扇状力木と高さも幅も同じサイズに成形され、互いに面一で直交しているのでバーというよりは格子状力木のヴァリエーションとみるべきかもしれません。レゾナンスはF#~Gの間に設定されています。

ほぼ柾目の見事なハカランダを使用。全面セラック塗装仕上げで、表面板は年代相応の弾きキズ、擦れ、塗装摩耗等は年代相応にありますがいかにも自然な経年変化で、外観的に品位を保持しています。横裏板は演奏時に腕などが当たる部分の塗装ムラのほかは軽微なキズのみで比較的きれいな状態です。割れ等の修理履歴はありません。ネックはほんのわずかに順反りですが標準設定の範囲内。フレットはわずかに摩耗ありますがこちらも演奏性には影響のないレベルです。ネック形状は薄めのDシェイプ。弦高値は3.0/4.0mm(1弦/6弦 12フレット)でサドル余剰は1.0~2.0mmとなっています。弦の張りは中庸で押さえやすいので左手はさほどストレスを感じずに弾くことができます。糸巻はGotoh 製510シリーズを装着(ハンフリーは初期においてGotoh製を好んで使用していました)。20フレット仕様。重量は1.59㎏。






新入荷 定価(税込) : 時価 販売価格(税込) :  1,375,000 円
注文数 :   


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