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区分 輸入クラシック 中古
製作家/商品名 パブロ・サンチェス・オテロ Pablo Sanchez Otero
モデル/品番 Model/No. “Acineira” No.38
001_003_PSotero_01_223
弦長 Scale Length 650mm
国 Country スペイン Spain
製作年 Year 2023年
表板 Top 松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides ペアウッド Solid Pearwood
付属品 Option ハードケース
備考 Notes
ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:表板 セラック
   :横裏板 セラック
糸 巻:シャーラー
弦 高:1弦 3.1mm
   :6弦 4.0mm

〔製作家情報〕
1986年 スペイン北西部のガリシア州の美しい港湾都市ア・コルーニャに生まれる。
もともとは建築を学んでいましたが、机上での製図に終始する作業に飽き足らず、木にじかに触れることから生まれる仕事への興味が次第に増してゆきます。加えて音楽とその構造に対する深い関心は抑えがたくなり、何年か家具製作とデザインを学んだあと、2009年にバルセロナでJean Pierre Sardin のサマーコースでギター製作を受講。これを機に楽器製作を生業とする事を決心します。その後2009~2011年の2年間、美術工芸学校の古楽器製作のコースでヴァイオリンとルネサンスリュートの製作を学びます。そしてその間の2010~2012年の夏、シグエンサでの名工ホセ・ルイス・ロマニリョスの講習会に参加。そこでビウエラとスペイン伝統のギター製作法を、また楽器の修復技術についてのレクチャーを受講、彼にとって決定的な影響を受けることになりました。

その後スペインからイギリス、ノッティンガムシャーのニューアーク=オン=トレントに居を移し、同国のAdrian Lucas, James Listerらからもギターの製作を学びます。さらに2013年には居をベルギーのAmberesに移し、同地のLa Escuele Internacional de Luteria de Amberes(ILSA)にて楽器修復の学科を終了後、同校にて教鞭を執る傍ら本格的に製作活動を展開します。現在は工房を生まれ故郷であるスペイン、コルーニャに移し製作を継続。師ロマニリョスから受け継いだ、細部まで妥協を許さない繊細な造作、洒脱な意匠、トーレスを基本とするスペイン伝統工法に立脚した音色の魅力等は現在のスペインの若手の中でも静かに異彩を放っており、国内外で近年評価の高まりを見せています。

トーレスモデルをメインとするクラシックモデルの他、極めて個性的なデザインのブズーキ、マンドリン、ウクレレ、アコースティックギター等も製作。


〔楽器情報〕
パブロ・サンチェス・オテロ 製作の“Acineira”2023年製 Used 美品です。
スペイン、バダローナで開催された国際製作家フェスティバルのホセ・ルイス・ロマニリョスメモリアルに出品されたもので、文字通り彼にとっての最大のメンターであるこの名工へのオマージュとなるスペシャルモデル。彼のギターには(これも師の流儀に倣って)それぞれ固有名がつけられていますが、本作の“Acineira”は「ホルムオーク(常盤樫)」の意。師の自邸の庭に生えていた樫の木から加工した材を、ロマニリョス本人から直接譲り受けた彼が、その思い出を刻印するように本作の意匠にあしらっており、それを名前としたもの。すでにトーレスモデルで瞠目すべき仕事を世に出している彼ですが、その同じテンプレート(1888年製のSE114)と構造を採用しながら、ロマニリョスギターから得たインスピレーション、そして自らのクリエイションをそこに投入してつくり上げた渾身の力作となっています。

まずその外観に目を奪われますが、表面板はベアクロウの入ったヨーロピアンスプルース、横裏板は立体的な光沢のある美しいコーラルレッドのペアウッド(pearwood)を使用し、裏板は4ピース仕様。師との思い出の樫材は実に慎ましく、しかし存在感たっぷりにロゼッタの中央にあしらわれ、それを細かな長方形のモチーフと特徴的なヘリンボーンの象嵌が取り囲むというデザイン。このヘリンボーンはパーフリングや裏板のセンターにも使用され、茶と黒そして松材と同じ柔らかな黄色を基調とした文様が明るい外観の中で実に洒落たアクセントとなっています。また銀杏の葉のブランドロゴはヘッド裏に埋め込まれています。その細部まで精緻な細工はオテロ氏の真骨頂といえるものですが、本作においては特にその繊細さと大胆さが際立っており、美しいセラックニスの仕上げと相まってその佇まいはある種の高貴ささえ感じさせるほど。

表面板構造はサウンドホール上側(ネック側)に2本、下側(ブリッジ側)に1本のハーモニックバーが設置され(これら3本ともそれぞれ形状も大きさも異なる)、左右対称7本の扇状力木とそれらの先端をボトム部で受け止めるようにV字型に配置された2本のクロージングバーというパターン。レゾナンスはFの少し上に設定されています。

発音には十分な粘りがあり、しなやかでくっきりとした音像が素早く立ち上がってきますが、同時にとても深い奥行きを持っており、オールドスパニッシュを想起させる音響設計。低めのレゾナンス設定が絶妙な重心感覚を生み出しており、ボディ全体が震えるような低音から艶やかで洗練されたされた高音までの自然なバランスが素晴らしい。その清冽さと同時にどこか古雅なニュアンスを含んだ音と表情もまた彼ならではの個性と言えるでしょう。音量的にも非常に豊かに鳴っており、また多様な音楽的要求に応じて瞬間的に反応するその身振りの素早さも特筆すべき点となっています。ネック形状はDシェイプで丸みをしっかりととって加工されているのでほとんどCシェイプに近い感触、ナット幅もやや抑えたサイズで設定されているので左手にすっと収まるようなとてもコンパクトな感覚があります。

全体は繊細なセラック塗装で仕上げられており、丁寧に使用、保管されてきたであろう本体はまだ瑞々しい艶を湛えています。割れや改造などの大きな修理履歴はありません。裏板の下部、高音側2枚の板の接ぎ部分に沿って浅い段差が数センチの長さで生じていますが、内側から接ぎの補強がされている箇所のため現状のままとしています。その他はわずかに数か所の極めて軽微なキズがありますが目を近づけてそれと認識できる程度のもので、外観を損なうものではありません。ネック・フレットの状態も適正値を維持しています。

偉大なマエストロへの深い敬意と職人としての高い矜持、パブロ・オテロ入魂の濃密な一本です。

新入荷 定価(税込) : 時価 販売価格(税込) :  お問い合わせ下さい。

区分 輸入クラシック オールド
製作家/商品名 サントス・エルナンデス Santos Hernandez
モデル/品番 Model/No.
001_012_santos_03_139
弦長 Scale Length 655mm
国 Country スペイン Spain
製作年 Year 1939年
表板 Top 松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides 中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option ハードケース
備考 Notes
ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:表板 セラック
   :横裏板 セラック
糸 巻:フステーロ
弦 高:1弦 3.0mm
   :6弦 4.0mm


〔製作家情報〕
サントス・エルナンデス Santos Hernandez Rodriguez (1874~1943)スペインのマドリッド生まれ。バレンティン・ビウデスやイーホ・デ・ゴンザレスに師事し製作を学び、その後マヌエル・ラミレスの工房に入りました。そして1912年にマヌエル・ラミレス工房で製作した彼の楽器でアンドレス・セゴビアがマドリッドでデビューし、その後も長年愛奏した事は良く知られています。
1921年には、マヌエル・ラミレスが亡くなったのを機に独立して、マドリッドのアドアナ通りに工房を開設。当時レヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサやセウドニオ・ロメロ、ラモン・モントーヤ、ニーニョ・リカルド等多くのギタリストが訪れ、演奏やギター談義に花を咲かせ、ギター文化の中心的役割を果たしたその工房は、現在ロマニリョスの尽力によりシグエンサの博物館に移転されていて、当時の雰囲気を偲ぶことが出来ます。
1943年に彼が亡くなった後は、弟子のマルセロ・バルベロがその後を継ぎ、更にアルカンヘル・フェルナンデスへと、マニア垂涎の楽器製作の技法は伝承され続けています。


[楽器情報]
サントス・エルナンデス 1939年 ブラジリアン・ローズウッド仕様のクラシックモデル、状態良好の1本が入荷致しました。Orfeo Magazineの著者である Alberto Martinez 氏による「Santos Hernandez ~Maestro Guitarrero~ 1874-1943」(Camino Verde 刊)によって、少なくとも日本では初めて、この製作家がいかに多様なスタイル(内部構造的、そしてロゼッタに顕著な外観デザインの両方において)で製作していたかを俯瞰することができたのですが、スペインギターの典型とされる音響を構築したと位置づけられるこの稀代の名工がかように多様な力木システムを発案していたのはやはり驚くべきことでしょう。当然のことながらそこにはいかに表面板を十全に自然に振動させ最大限の音響効果を得るかということの不断の探求が見て取れるのですが、興味深いのは同著に掲載されていた10本の例のうち1939年製のフラメンコモデルを除いてあとはすべてハーモニックバー2本、扇状力木7本、そして0~2本のクロージングバーの配置関係のヴァリエーションとなっていることで、そのほとんどに共通しているのは高音側と低音側とで非対称の配置が試みられていることです。詳細については同著を参照いただけたらと思いますが、まずやはりサントスにはトーレスそしてマヌエル・ラミレスにより完成された左右対称構造による音響設計を基本としながら、そこに上記の試みによって低音と高音にそれぞれの位相を生み出し、かつ全体の統一的なバランスを構築するという主眼が確実に存在していたと言うことができます。そしてこの試みはギターがいよいよ西洋音楽の構造原理と密接にリンクしてゆくことの嚆矢となります。

本作1939年製はほぼ彼の晩年期の作と言えますが、前著に掲載されていたどの力木構造とも異なっています。まずサウンドホール上下(ネック側とブリッジ側)に1本ずつ計2本のハーモニックバーは同じとして、サウンドホールを囲むように貼り付けられた補強板はロゼッタと同じ円形ではなく角形をしています。扇状力木は7本でやはり左右非対称になっており、ボトム部のクロージングバーは高音側だけに設置されています。扇状力木はそれぞれの両端はサウンドホール下のハーモニックバーからもボトム部からも若干離れた位置に設定されており、駒板を中心として表面板下部の中央に寄り集まるような配置になっています。またクロージングバーのない低音側は高音側よりも力木の長さが顕著に短くなっており、特に一番外側の一本はすぐ内側の1本の半分ほど10cm程の短さになっています。レゾナンスはF#の少し下に設定されています。

サントスが完成させたスペイン的音響とは、低い重心設定によるまさしく音響全体を支える低音から雄弁な中低音、そして「高さ」のクリアネスへと至る音響設計で、それぞれは異なる位相で鳴りながらも全体としての有機的な統一性があるというもの、とまずは定義することができます。加えて各音の(つまりすべての音の)非常な表現力で、これはやはり人間の声が基本になっていると思うのですが、これ以上ない繊細さからダイナミックさに至るその表情の豊かさも必須条件と言えるでしょう。本作はこの条件を十全に備えつつ、サントス後期特有のストイックなまでの音の密度が素晴らしい一本となっています。

撥弦には強めのしかし心地良い反発感がともない、そこからあの弾性感のある魅力的な音像が瞬時に表れてきます。それは鳴っているというよりも在るという感覚に近いもので、声のような肌理を持ち、明と暗の表情を持つ、まさしく楽音と呼ぶにふさわしい深いニュアンスを備えたものとなっています。発音されたまま霧消してゆくような音ではなくしっかりとした質量があり、終止の瞬間まで充実しているので、自然に旋律は有機的なうねりを生み出してゆきます。あらゆる音楽的な身振りに俊敏に対応する機能性の高さ、多声音楽における対位法の明確な彫りの深い響きも見事。

この「多様な」製作家にとってのスタンダードとなる一本だと明言することは控えますが、彼のあと、(直接の師弟関係はありませんでしたが)その唯一の直系と言えるマルセロ・バルベロ1世、そしてアルカンヘル・フェルナンデスへと続いてゆく美学の原型をしっかりと聴くことのできる名品です。

製作年を考慮するととても良好な状態を維持した一本です。表面板は割れ修理の履歴はなく、おそらくかなり前に一度セラックによる上塗りなどはされた可能性はありますが、それにより現状では弾きキズ等はいずれも軽微で浅いものにとどまっています。サウンドホール縁近くに3mmほどの打痕を部分補修した跡が2か所ありますが外観を損ねるものではなくほとんど目立ちません。また横裏板もおそらく過去に再塗装がされた可能性はありますが、木目の節の隙間を部分的に補修した箇所が数か所、それぞれ小さなものですがあります。また高音側ボトム付近に7センチほどの割れ補修歴がありますが、適切な補修がされており、現状で問題ありません。やはり全体にきれいな状態を保っていると言えます。ネックはほんのわずかに順反りですが標準設定の範囲内、フレットも1~3Fでわずかに摩耗していますがこちらも演奏性には全く影響ありません。ネック形状はほぼラウンドに近いCシェイプでやや厚めの設定。弦高値は3.0/4.0mm(1弦/6弦 12フレット)でサドル余剰は2.5~3.0mmあります。

商談中 定価(税込) : 時価 販売価格(税込) :  お問い合わせ下さい。

区分 輸入クラシック オールド
製作家/商品名 ヘルマン・ハウザー2世 Hermann Hauser II演奏動画あり
モデル/品番 Model/No. セゴビアモデル Segovia No.763
001_017_hauser_2_03_165
弦長 Scale Length 650mm
国 Country ドイツ Germany
製作年 Year 1965年
表板 Top 松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides 中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option ハードケース(BAM)
備考 Notes
ネック:マホガニー
指 板:エボニー
塗 装:表板 セラック
   :横裏板 セラック
糸 巻:ライシェル
弦 高:1弦 3.0mm
   :6弦 4.0mm

〔製作家情報〕
ヘルマン・ハウザー2世 Hermann Hauser II(1911~1988)
20世紀ドイツ最高のギターブランドであり、現在も4代目がその伝統を継承し100年以上にわたって一子相伝で製作を続けている老舗です。ヘルマン・ハウザーI世(1884-1952)が、ミゲル・リョベートが所有していたアントニオ・トーレスとアンドレス・セゴビア所有のマヌエル・ラミレスをベースにして自身のギターを改良し、後にセゴビアモデルと呼ばれることになる「究極の」名モデルを製作した事は良く知られています。それはトーレスがギターの改革を行って以来最大のギター製作史における事件となり、その後のギター演奏と製作との両方に大きな影響を与えることになります。1世の息子ハウザー2世はドイツ屈指の弦楽器製作都市として知られるミッテンヴァルトで4年間ヴァイオリン製作学校で学んだ後、1930年より父の工房で働き始めます。彼ら親子はほぼ共同作業でギターを製作していましたが、ラベルはハウザー1世として出荷されています。1世が亡くなる1952年、彼は正式にこのブランドを受け継ぎ、彼自身のラベルによる最初のラベル(No.500)を製作。以来1983年に引退するまで極めて旺盛な活動をし、500本以上のギターを出荷しています。

ハウザー2世もまた父親同様に名手たち(セゴビア、ジュリアン・ブリーム、ペペ・ロメロ等)との交流から自身の製作哲学を熟成させていったところがあり、また彼自身の資質であろうドイツ的な音響指向をより明確化することで、1世とはまた異なるニュアンスを持つ名品を数多く世に出しました。有名なところではなんといってもブリームが愛用した1957年製のギターですが、その音響は1世以上に透徹さを極め、すべての単音の完璧なバランスの中にクラシカルな気品を纏わせたもので、ストイックさと抒情とを併せもった唯一無二のギターとなっています。

1970年代以降の彼は特にその独創性において注目されるべきペペ・ロメロモデルや、おそらくは急速に拡大した需要への柔軟な姿勢としてそれまでには採用していなかった仕様での製作も多く手がけるようになりますが、やはり完成度の高さの点では1世より引き継いだ「セゴビア」モデルが抜きんでています。その後1980年代からモダンギターの潮流が新たなスタンダードと目されていく中でも、ハウザーギターは究極のモデルとしての価値を全く減ずることなく、現在においてもマーケットでは最高値で取引されるブランドの一つとなっています。

1974年からは息子のハウザー3世(1958~)が工房に加わりおよそ10年間製作をともにします。3世もまた2世のエッセンスに独自の嗜好を加味しながら、ブランドの名に恥じぬ極めて高度な完成度を有したモデルを製作し続けています。

[楽器情報]
ヘルマン・ハウザー2世 1965年製 セゴビアモデル No.763 の入荷です。
1952年に亡くなった1世の芸術性を継承し、熟成させるようにしてスパニッシュギターの洗練化(汎西洋化)を異様と言えるまでの集中力で行っていった2世は、その50年代の終わりにそうした1世的コンセプトの極点に達したのち、続く60年代の10年をたっぷりかけて自身のドイツ性を強めてゆくことになります。本作1965年製はまさにその中間点ともいえる時期のもので、1960年代ハウザーの一つの頂点を感じ取ることのできる1本となっています。

ハウザー特有の鍵盤的と言ってよいほどの整ったバランスですべての音が構築されており、旋律においては明確な線のつながりを、和声においては各音の構成を、対位法においては各声部の動きを、それぞれ機能的かつ極めて音楽的に表出するポテンシャル有しており、その完成度の高さは比類がありません。ハウザー好みの剛性の高いドイツ松(ハウザーストックの素晴らしい松材)と弦の弾性とが絶妙な案配でブレンドされることで、あの独特の硬質な粘りを持った発音となりますが、そこから生まれてくる凛とした音像がやはり素晴らしい。いかにもクラシカルに相応しい雰囲気を湛えつつ、おそらくこの時期のハウザー2世だけが持ちえたような厳格さがあり、ドイツ的音響のひとつの到達点を示す1本となっています。

本作は製作からおそらくはそれほど経っていない時期に全体のセラックによる再塗装が施されておりますが(オリジナルはおそらくラッカー塗装)、この変更によりハウザーの音響特性が減ずることはなく、ほのかに木質の触感を纏った響きとなっているところはかえって特別な魅力があります。

表面板力木配置は1世の1937年製セゴビアモデルに準拠しながら2世の工夫が加えられたものとなっています。サウンドホール上側(ネック側)に形状の異なる2本のハーモニックバーとその間に1枚の補強プレート(ここに2世自身の直筆サインと日付が書かれています)、サウンドホール下側のハーモニックバーはちょうど中央部分でほんのわずかに湾曲して、その両端をややネック寄りの位置に設定しています。これら上下のバーの間を繋ぐようにホール左右には一枚ずつの補強プレートが貼られています。ウェストより下側は左右対称7本の扇状力木にこれらの先端をボトム部で受け止める2本のハの字型のクロージングバー、駒板位置にはほぼ同じ範囲に非常に薄い補強プレートが貼ってあるという全体の配置。上記の湾曲したハーモニックバーは2世のモデルに特徴的なもの。また裏板に設置されているバーは薄く高さがありその頂点は尖った加工となっており、これもまた2世特有の形状となっています。レゾナンスはG~G#に設定されています。

表面板は指板脇からサウンドホール周りにかけての高音側のエリアや駒板下のエリアなどに細かな弾き傷やスクラッチキズがやや多めに見られます。しかしながらさほどに深いものではなく、経年数を考慮すると標準的な状態と言えます。横裏板は衣服等による摩擦が少々、またボタンやベルトのバックル等によると思われるやや長めのスクラッチ傷がやや集中して下部エリアに見られますがこちらも年代相応のレベルと言えるでしょう。割れ等の大きな修理履歴はありません。ネック裏もおそらく同時期にセラックによる再塗装は施されておりますが、現在も良好なきれいな状態を維持しています。ネックはほぼ真っすぐを維持しており、指板は1~3フレットで特に摩耗が目立つもののフレット本体は適正値を維持しており演奏性には問題ありません。ネック形状は薄めのDシェイプ、弦高値は3.0mm/4.0mm(1弦/6弦 12フレット)でサドル余剰は0.5~1.0mmとなっています。糸巻はライシェル製ゴールドプレートタイプに交換されており(出荷時はランドスドルファー)、こちらも現状で機能的に良好です。重量は1.53㎏。





新入荷 定価(税込) : 時価 販売価格(税込) :  お問い合わせ下さい。

区分 輸入クラシック オールド
製作家/商品名 エルナンデス・イ・アグアド Hernandez y Aguado
モデル/品番 Model/No. No.224
001_018_hernanagua_03_162
弦長 Scale Length 655mm
国 Country スペイン Spain
製作年 Year 1962年
表板 Top 松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides 中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option 軽量ケース
備考 Notes
ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:表板 セラック
   :横裏板 セラック
糸 巻:ロジャース
弦 高:1弦 3.1mm
   :6弦 4.1mm

[製作家情報]
「エルナンデス・イ・アグアド」
サンチャゴ・マヌエル・エルナンデス(1895~1975)、ビクトリアーノ・アグアド・ロドリゲス(1897~1972)の二人による共同ブランドで、エルナンデスが本体の製作、アグアドが塗装とヘッドの細工そして全体の監修をそれぞれ担当。通称「アグアド」と呼ばれ、20世紀後半以降の数多くのクラシックギターブランドの中でも屈指の名品とされています。

エルナンデスはスペイン、トレド近郊の村Valmojadoに生まれ、8歳の時に一家でマドリッドに移住。アグアドはマドリッド生まれ。2人はマドリッドにある「Corredera」というピアノ工房で一緒に働き、良き友人の間柄であったといいます。この工房でエルナンデスは14歳のころから徒弟として働き、その優れた技術と情熱的な仕事ぶりからすぐに主要な工程を任されることになります。アグアドもまたこの工房で腕の良い塗装職人としてその仕上げを任されていたので、二人での製作スタイルのひな形がこの時すでに出来上がっていたと言えます。1941年にこのピアノ工房が閉鎖された後、2人は共同でマドリッドのリベラ・デ・クルティドーレス9番地にピアノと家具の修理工房を開きます。

1945年、プライベート用に製作した2本のギターについて、作曲家であり当時随一の名ギタリストであったレヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサに助言を仰ぐ機会を得ます。この名手は二人の才能を高く評価し、ギター製作を勧めるとともに自身が所有していたサントス・エルナンデスのギターを研究のために貸し与えています。さらにはサントスと同じくマヌエル・ラミレス工房出身の製作家で、終戦直後の当時貧窮の中にあったモデスト・ボレゲーロ(1893~1969)に仕事のためのスペースを工房内に貸し与えることになり、そのギター製作の工程をつぶさに観察。これが決定的となり、ギターへの情熱がさらに高まった二人は工房をギター製作に一本化することに決め、1950年より再発進します。デ・ラ・マーサという稀代の名手とマヌエル・ラミレスのメソッドを深く知るボレゲーロ(彼は1952年までアグアドの工房を間借りして製作を続けた後に独立しています)という素晴らしい二人の助言をもとに改良、発展を遂げて世に出されたアグアドのギターは大変な評判となり、一時期70人以上ものウェイティングリストを抱えるほどの人気ブランドになりました。

出荷第一号はNo.100(※1945年に製作した個人用のギターがNo.1)で、1974年の最後の一本となるNo.454まで連続番号が付与されました。1970年前後に出荷されたものの中には同じマドリッドの製作家マルセリーノ・ロペス・ニエト(1931~2018)や、やはりボレゲーロの薫陶を受けたビセンテ・カマチョ(1928~2013)が製作したものも含まれており、これは殺到する注文に応えるため、エルナンデスが当時高く評価していた2人を任命したと伝えられています。

しばしば美しい女性に喩えられる優美なボディライン、シンプルで個性的かつこの上ない威厳を備えたヘッドデザインなどの外観的な特徴もさることながら、やはりこのブランドの最大の特徴はその音色の絶対的ともいえる魅力にあると言えるでしょう。人間の声のような肌理をもち、表情豊かで温かく、時にまるで打楽器のような瞬発性とマッシヴな迫力で湧き出してくる響きと音色は比類がなく、二人だけが持つある種の天才性さえ感じさせます。

このブランドの有名な逸話にも登場するエルナンデスの愛娘のエミリアは1945年にヘスス・ベレサール・ガルシア(1920~1986)と結婚。ベレサールはアグアドの正統的な後継者として、その精神的な面までも受け継ぎ、名品を世に出す存在になります。

アグアドがギター製作を始めるうえでの大きなきっかけとなったデ・ラ・マーサはその後彼らのギターを数本購入し愛用しているほか、ジョン・ウィリアムスやユパンキなどの名手たちが使用しています。


[楽器情報]
エルナンデス・イ・アグアド 1962年製 No.224 ヴィンテージの入荷です。
この名ブランドの、さほどに長くはない歴史の中でもとりわけ人気と評価の高い1960年代初期の作。柾目のブラジリアン・ローズウッドを横裏板として使用し、おなじみのヘッドデザインにアグアドらしい優美さをたたえたボディ、柔らかな気品が漂う見事な一本。

力強く、アグアド独特の包容力ある響き、ジェントルで耳に心地よい独特の肌理をもった音色が素晴らしい。また人間的と言いたくなるほどによく歌い、変化する表情の繊細さも名品ならでは。心の動きとシンクロしながら、同時に楽器のほうからも奏者に対して働きかけをしてくるような真に音楽的な瞬間は他では得られない感覚でしょう。しかしながら同時に(名器の常として)、奏者には然るべきタッチの熟練が求められますが、それが一致した瞬間の充実感はやはり格別なものがあります。

内部構造について、年代的な傾向はありますが、アグアドはほぼ個体ごとに力木配置を変えていました。本作ではサウンドホール上下(ネック側とブリッジ側)に1本ずつのハーモニックバー、ボディ下部は左右対称7本の扇状力木とその先端をボトム部で受け止めるようにハの字型に配された2本のクロージングバー、そしてブリッジの位置には駒板とほぼ同じ大きさのパッチ板が貼られ、扇状力木はその上を通過しています。レゾナンスはGの少し上に設定。

表面板の指板脇、サウンドホール周りを中心に弾き傷など、またブリッジ下部分は弦飛びの痕があります。裏板は演奏時に胸のあたる部分の塗装に摩耗が若干見られ、またネック裏の1~2フレット付近にも塗装の摩耗が生じていますが割れ補修等の大きな修理履歴はなく、60年を経た楽器としてはかなり良好な状態と言えるでしょう。ネックは真っすぐを維持しており、フレットは1~7フレットでやや摩耗していますが現状で演奏性には問題のないレベル。比較的薄めに加工されたDシェイプのネック、弦はやや強めの張り。糸巻はオリジナルのフステロ製を装着しており、現状で機能的な問題はありません。サウンドホールラベル、表面板サウンドホール高音側にサインあり。

丁寧に弾き込まれており、レスポンスにはまだ硬い部分もあり、まだまだ鳴らしていけるポテンシャルを有した一本となっています。スペイン屈指の名ブランドの、状態そして音ともに良質なUsedです。 


新入荷 定価(税込) : 時価 販売価格(税込) :  お問い合わせ下さい。

区分 輸入クラシック オールド
製作家/商品名 イグナシオ・フレタ1世 Ignacio Fleta I
モデル/品番 Model/No. No.251
001_019_fletaI_1_03_162
弦長 Scale Length 650mm
国 Country スペイン Spain
製作年 Year 1962年
表板 Top 松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides インディアンローズウッド Solid Indian Rosewood
付属品 Option 軽量ケース 黒
備考 Notes
ネック:マホガニー
指 板:エボニー
塗 装:表板 セラック
   :横裏板 セラック
糸 巻:フステロ
弦 高:1弦 2.8mm
   :6弦 3.8mm


[製作家情報]
イグナシオ・フレタ1世(1897~1977)により設立され、のちに二人の息子フランシスコ(1925~200?)とガブリエル(1929~2013)との共作となる、スペイン、バルセロナの工房。このブランドを愛用した、または現在も愛用し続けている数々の名手たちの名を挙げるまでもなく、20世紀後半以降を代表する銘器の一つとして、いまも不動の人気を誇っています。

フレタ家はもともと家具製作など木工を生業とする家系で、イグナシオも幼少からそのような環境に馴染みがありました。13歳の頃に兄弟とともにバルセロナで楽器製作工房の徒弟となり、更に研鑽を積むためフランスでPhilippe Le Ducの弦楽器工房でチェロなどのヴァイオリン属の製作を学びます。その後フレタ兄弟共同でバルセロナに工房を設立し、ギターを含む弦楽器全般を製作するブランドとして第一次大戦前後でかなりの評判となりますが、1927年に工房は解散。イグナシオは自身の工房を設立し、彼の製作するチェロやヴァイオリンをはじめとする弦楽器は非常に好評でその分野でも名声は高まってゆきます。同時に1930年ごろからトーレスタイプのギターも製作していましたが、1955年に名手セゴビアの演奏に触れ、そのあまりの素晴らしさに感動しギター製作のみに転向することになります。フレタは巨匠の演奏から霊感をも受けたのか、その新モデルはトーレススタイルとは全く異なる発想によるものとなり、1957年に製作した最初のギターをセゴビアに献呈。すると彼はその音響にいたく感動し、自身のコンサートで使用したことで一気にフレタギターは世界的な名声を得ることになります。それまでのギターでは聞くことのできなかった豊かな音量、ダイナミズム、そしてあまりにも独特で甘美な音色でまさしくこのブランドにしかできない音響を創り上げ、セゴビア以後ジョン・ウィリアムスやアルベルト・ポンセなどをはじめとして数多くの名手たちが使用し、20世紀を代表する名器の一つとなりました。

当初はIgnacio Fletaラベルで出荷され、1965年製作のNo.359よりラベルには「e hijos」と記されるようになります(※実際には1964年製作のものより~e hijos となっておりフレタ本人の記憶違いの可能性があります)。1977年の1世亡き後も、また2000年代に入りフランシスコとガブリエルの二人も世を去ったあともなお、「Ignacio Fleta e hijos」ラベルは継承され、現在は1世の孫にあたるガブリエル・フレタが製作を引き継いでいます。

[楽器情報]
イグナシオ・フレタ1世 1962年製 No.251 の入荷です。
クラシックギターにおいて他に類するものがないと言えるほどに独特な音圧の高さとオーディトリアム感があり、ほとんどギターではない別の何ものかのような異様な大きさを感じさせます。それはモダンギターのように「増幅された音量」ではなく、響箱の容量そのもののポテンシャルが顕在化したもので、明らかにそれまでのスパニッシュギターの伝統的な音作りからは異端ともいえるアプローチの音響設計がまずは特筆すべき点でしょう。

このオーディトリアム感(「リヴァーヴ感」「奥行き感」と言い換えてもよいのですが)はこれ自体にも濁りを含んでおらず、その空間性にも透徹としたところがあります。

そして音について、ここでフレタ1世はロマンティックという言葉が喚起するであろう音楽表現に必要なものをギターで可能な限り表出してみせます。その濃密な歌と艶やかな音、明と暗の表情の揺らぎなどは生々しいほどで、弾き手に音楽を(まさに演奏しているその中で)喚起する力があることなど、何よりもまずフレタが最上の表現楽器であることを如実に感じさせてくれます。非常な音圧の高さは大音量だけに特性を特化することなく、最弱音における繊細な機微も、フォルティシシモにおける豪放さもどちらも内包するものとして、つまり隅々まで音楽的な大きな拡がりとしての性質としてあり、ここには弦楽器製作者としての彼の出自とその矜持も見て取ることも可能でしょう。高音、中低音、低音の各部のアイデンティティがそれぞれ明確でありながら全体として有機的な一つのバランスに収まっているところなどはさすがにスパニッシュギター的な特性を感じさせますが、フレタにおいては例えば曲を演奏するときに各部の個性が際立ち、まさしく室内楽的な空間を形成してしまうようなところがあるのが特徴的です。

表面板力木配置は、サウンドホール上下(ネック側とブリッジ側)に各2本のハーモニックバーが設置されていますが、下側のハーモニックバーは2本とも低音側から高音側に向けてほんのわずかに斜めに下がってゆくように設置されています(ただしこの2本は低音側でほぼ起点をおなじくしているものの平行ではなく微妙に異なる角度で設定されており、そのため高音側の横板に達する地点では数センチの開きが生じるような形になっています)。このバーより下側は合計9本の扇状力木と、これらの力木の下端をボトム部で受けとめるようにV字型に配置された2本のクロージングバー、駒板位置にはその幅よりもやや広めにとられた補強用の薄いプレートが貼られています。補強用のプレートはサウンドホールの両脇にやや広めのものが一枚ずつ、さらにはサウンドホール上側2本のハーモニックバーの間とネック脚に至るまでのエリアをほぼ満遍なく覆うように貼り付けられており、ボディウェストから上側の全域が、計4本のハーモニックバーの設置も含めて、しっかりと強固に固定されていることが分かります。一番下側(ブリッジに近い側)に設置された斜めのハーモニックバーの低音側は高さ2~3mmほどのわずかな開口部が設けられており、9本の扇状力木のうちセンターを含む5本が上端をその開口部をくぐる抜けるようにして設置されています。

フレタ1世の表面板力木構造の特徴は上記のようにしっかりと補強し振動を抑制したアッパーエリアと、斜めに配置されたサウンドホール下側ハーモニックバー、9本(通常のスペインギターは5~7本)の扇状力木となっていますが、1950年代から1960年代始めにかけては細部で異なる設計が試みられており(力木のサイズ、バーの本数等)、それに応じて音響的特徴も変化を見せています。1962年の本作においては、例えば1950年代のフレタと比較するとサウンドホール下側バーの本数は1本から2本に増えてしかも2本とも斜めになっており、しかもバー本体に開口部が設けられ扇状力木の上端がそこを通過するという、その後のフレタギターにおいても採用されていない特徴が見られます。また9本の扇状力木は年を経るごとに太く高く、つまり強固になってゆきますが、この時点ではセンターの1本がやや強固に、外側にいくほどに小さく繊細な造りになっているのもこの時期だけの特徴と言えます。レゾナンスはGの少し上に設定されています。

表面板と横板のみ今回の入荷時にセラックでの再塗装を行っており、その際に表面板の傷や打痕、割れ修理あとなどはタッチアップを施しておりますので現状できれいな状態となっています。割れは表面板のサウンドホール縁から駒板にかけて1ヵ所、駒板からボトムにかけて2か所、駒板高音側わき部分からボトムにかかけての割れが1ヵ所、下部低音側ふくらみ部分(演奏時に右ひじが当たる部分)に1箇所の割れがあります。いずれも内側より木片によるパッチ補強が施されております。裏板はネックヒールの両脇部分からボトム方向に一か所ずつ、それぞれ8センチほどの長さの割れ補修歴がありますが、その他は衣服等の摩擦あとや一部塗装のムラが若干あるのみで年代の割にはきれいな状態を維持しています。ネックは厳密にはほんのわずかに順反りですが標準設定の範囲内、フレットはこれも微妙にですが1~5フレットでやや摩耗見られます、ただしいずれも演奏性には影響なく、現状のまま継続してご使用いただけます。ネックシェイプはフレタ1世らしい角の取れた薄めのDシェイプでコンパクトなグリップ感。指板は高音側20フレット増設。弦高値は2.8mm/3.8mm(1弦/6弦 12フレット)でサドル余剰は0.5mmほどとなっています。糸巻はスペインの老舗工房フステーロのものを装着しており、おそらく出荷時のままかと思われます。3弦のツマミ軸が若干曲がっていますがギア部分には全く影響なく、全体に機能的な問題はありません。



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区分 輸入クラシック オールド
製作家/商品名 トーマス・ハンフリー Thomas Humphrey演奏動画あり
モデル/品番 Model/No. ミレニアムモデル
001_humphrey_1_03_195_01
弦長 Scale Length 650mm
国 Country アメリカ U.S.A
製作年 Year 1995年
表板 Top 松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides 中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option ハードケース
備考 Notes
ネック:マホガニー
指 板:エボニー
塗 装:表板 セラック
   :横裏板 セラック
糸 巻:ゴトー
弦 高:1弦 3.0mm
   :6弦 4.0mm


[製作家情報]
トーマス・ハンフリー(1948~2008)アメリカ、ミネソタ州生まれ。かなり若い時からチェロを本格的に学んでおり、本人曰くこれがギター製作の大きなバックグラウンドになったとのこと。1970年にニューヨークを訪れ、同地にギターショップを構えていたマイケル・グリアンに弟子入りし、働きながら11年にわたり製作を学びます。1981年にロサンジェルスに訪れた際に彼はあの名手アンドレス・セゴビアの主宰するマスタークラスの洗礼を受け、さらには同地の著名なコレクターの所有するスペイン製の多くの名器に触れたことで自身のたどるべき道を確信します。直後の1982年には一年をかけてスパニッシュギターの研究に費やし伝統的な工法を完全に熟知すると同時に、あの真に革新的なMillenniumモデル製作の実践も始め、1985年には試作第一号を製作します。Millenniumモデルの最大の特徴は表面板の指板横のエリアをネックヒールに向かって薄くなるように傾斜させることで必然的に12フレット以降の指板が盛り上がったような設定になり(Raised fingerboard)、ハイフレットでの演奏性を向上させるとともに表面板の弦振動効率を上げ、高い演奏性と音量の増大というクラシックギターの「弱点」を克服するとともに、その「ハープのような」ヴィジュアルによる特異なルックスがあげられます。そのギター製作における歴史的な意味は大きく、その後多くのフォロワーを生み出すとともに、エリオット・フィスクやアサドなどヴィルトゥオーゾらの高度な要求にも完璧に応えうるモデルとして、モダンギターの一つのスタンダードとなりました。

同時代のアメリカを代表する製作家であるロバート・ラック、ジョン・ギルバートらと並ぶ、アメリカ発モダンギター最大の巨匠の一人とされましたが、2008年4月に急逝。なお彼の考案したレイズドフィンガーボード構造は Pat No.4873909 の特許を取得しており、ボディ内部のネック脚部分に左記の番号が刻印されています。

[楽器情報]
トーマス・ハンフリー 1995年製作 Millennium(ミレニアムモデル)Used です。ハンフリーの代表作であり、G.スモールマンのLattice構造、M.Damann のダブルトップ構造と並びモダンギターのスタンダードを創出した稀有なモデルです。彼のキャリアのなかでは比較的初期と言える作ですが、工作精度のみならず、音響バランス、ギターとしての表現力の高さ、卓越した演奏性などのすべての要素が極めて高次における統一的な完成を達成しており、誠に名器の名に恥じぬ一本となっています。

その「ハープのような」特徴的ルックス(12フレットで指板の表面板からの高さが2.7cm、20Fでも1.7cm)がクローズアップされがちですが、ハンフリーはむしろ他のモダンギターの傾向(音量の増大、画一的な音響、鋭敏な反応など)と全く異なる、ある意味「反動的な」とも言えるほどにトラディショナルで味わい深い音色とその類まれな表現力によって評価されるべきでしょう。非常な滋味を湛えた響きがハンフリーならではの慎ましい洗練によって清新な佇まいとなり、その落ち着きと鋭さが同居した音響がなんとも素晴らしい。Bassとしての明確なアイデンティティを持ったたっぷりとした低音と、雄弁な内声部を構成する中低音、そして細くしかしなやかで芯の強い高音へと至る全体のバランスも有機的で、音楽が自然な流れを生み出すのに寄与しています。加えてタッチにほとんどまとわりつくような高い発音の反応性と特に高音における繊細な歌の表現も特筆すべき点となっています。

表面板のアッパー部分を大胆に傾斜させることで指板が持ち上がったような設定になっているのですが、ボディを薄くすることによる響きへのデメリットは全く感じさせません。むしろ容積の縮小を活かして発音の反応性を高めると同時に、トーレス的な力木配置を楽器構造に即して無理なくアップデートしたあくまでもシンプルな設計によって、上記のようなナチュラルな響きの統一感を達成するに至っています。付言すれば、チェロの演奏を能くした彼だけに、この外形的設計の発想はやはり弦楽器の指板設定を参照したと想像することはできると思います。

Millennium モデルという名称と外観では統一されていましたが、実は彼は表面板の力木構造において様々な配置を試みています。本器の力木配置はサウンドホール上側(ネック側)で2本のハーモニックバーを交差させるXブレーシング配置に、下側(ブリッジ側)は1本のハーモニックバー、そして扇状力木は5本がそれぞれ平行に近い形でほぼロゼッタの直径に収まるほどに中央に寄せて配置されており、それらの先端をボトム部で受け止めるようにV字型に配置された2本クロージングバーを設置。さらには計3本のバーがサウンドホールとブリッジの間に1本、ブリッジ上(サドルの位置)に1本、ブリッジとクロージングバーの間に1本設置されているのですが、これらは5本の扇状力木と高さも幅も同じサイズに成形され、互いに面一で直交しているのでバーというよりは格子状力木のヴァリエーションとみるべきかもしれません。レゾナンスはF#~Gの間に設定されています。

ほぼ柾目の見事なハカランダを使用。全面セラック塗装仕上げで、表面板は年代相応の弾きキズ、擦れ、塗装摩耗等は年代相応にありますがいかにも自然な経年変化で、外観的に品位を保持しています。横裏板は演奏時に腕などが当たる部分の塗装ムラのほかは軽微なキズのみで比較的きれいな状態です。割れ等の修理履歴はありません。ネックはほんのわずかに順反りですが標準設定の範囲内。フレットはわずかに摩耗ありますがこちらも演奏性には影響のないレベルです。ネック形状は薄めのDシェイプ。弦高値は3.0/4.0mm(1弦/6弦 12フレット)でサドル余剰は1.0~2.0mmとなっています。弦の張りは中庸で押さえやすいので左手はさほどストレスを感じずに弾くことができます。糸巻はGotoh 製510シリーズを装着(ハンフリーは初期においてGotoh製を好んで使用していました)。20フレット仕様。重量は1.59㎏。






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区分 輸入クラシック オールド
製作家/商品名 ホセ・ラミレス 3世 Jose Ramirez III演奏動画あり
モデル/品番 Model/No.
001_joseramirez_03_159
弦長 Scale Length 640mm
国 Country スペイン Spain
製作年 Year 1959年
表板 Top 松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides ウォールナット Solid Walnut
付属品 Option ハードケース
備考 Notes
ネック:セドロ
指 板:不明
塗 装:表板/セラック
   :横裏板/セラック
糸 巻:ベイカー
弦 高:1弦 3.2mm
   :6弦 4.0mm

[製作家情報]
ホセ・ラミレス Jose Ramirez スペイン、マドリッドのクラシックギターブランドで、ホセ・ラミレス1世(1858~1923)、2世(1885~1957)の時代から現在のホセ・ラミレス5世まで、1世紀以上に渡りスパニッシュギター製作史のなかで最も重要なブランドの一つとしてその名を刻み続けており、いまなおワールドワイドにマーケットを展開する工房です。

なかでもとりわけ評価が高く「Ramirez dynasty」 と言われるほどに豊饒の時代とされたホセ・ラミレス3世(1922~1995)の時期に製作されたギターは、革新的でありながら幅広いポピュラリティを獲得し、世界中のギタリストとギターファンとを魅了し続けました。1950年代末から1960年代、パウリーノ・ベルナベ、マリアーノ・テサーノスといった名職人が職工長として働き、高級手工品の品質を維持しながら大量生産を可能した独自の工房システムを確立します。そして1964年にこのブランドのフラッグシップモデルとして世に出した「1A」は、表面板にそれまでの松材に代わって杉材を使用、胴の厚みを大きくとり、横板は内側にシープレス材を貼り付けた二重構造、弦長は664mmで設定(通常は650mm)、さらに塗装には従来のセラック塗装からユリア樹脂のものに変更し耐久性を飛躍的に増すとともに、「ラミレストーン」と呼ばれる独特の甘く艶やかな音色を生み出し、真っ赤にカラーリングされた印象的な外観と相まってクラシックギター史上空前のポピュラリティを獲得することになります。

これらラミレス3世がクラシックギターに対して行った改革はマーケット戦略の面でも、また製作の面でも実に独創的でしかも時代の要請に十全に応じたもので、のちのギター製作全般に大きすぎるほどの影響を及ぼしたのと同時に、まさにクラシックギターのイメージを決定するほどに一世を風靡しました。

ラミレス3世の息子4世(1953~2000)は18歳の時に父ラミレス3世の工房にて徒弟として働くようになり、1977年には正式に職人として認められます。1988年には妹のアマリアと共にブランドの経営を任されるようになり、父の製作哲学を引き継ぎながら、より時代のニーズに則した販売戦略(エステューディオモデルの製作、標準的な650mmスケールの採用等々)を展開しさらにシェアを拡大してゆきますが、3世亡き後わずか5年後の2000年にこの世を去ります。

4世亡きあとアマリアは彼の意を継いでより柔軟な商品開発、生産ラインの監修、そして4世の子供たち、クリスティーナとホセ・エンリケの二人の姉弟の工房スタッフとしての教育に心血を注ぎます(二人は2006年から工房で働き始めています)。現在二人は正式にブランドを継承し、クリスティーナ(グラフィックデザイナー、音響技術者としての資格も有する)がマーケティングプロジェクト全般を、ホセ・エンリケが製作と工房運営を担当しています。

名手アンドレス・セゴビアの名演と共にその音色が記憶に残る3世と4世の時代につくられたモデルは現在も人気があり、特に製作を担当した職人のイニシャルが刻印されていた1960年代のものは往年のファンに愛奏されています。

〔楽器情報〕
ホセ・ラミレス3世 1959年製 Used 珍しい一本が入荷です。本器が製作される2年前の1957年に2世が亡くなっており、3世のもとラミレス工房はいよいよあの豊穣の時代へと突入してゆきます。59年の時点ではその移行期といえるものの体制は整いつつあったらしく、パウリーノ・ベルナベやマリアーノ・テサーノスといった熟練職工達は既に自身の製作した個体にイニシャルを刻印して出荷しており、楽器もマドリッドのオールドスクールな作風から後の「1A」モデルへとつながるステージパフォーマンスをより重視したものへ顕著な変化を見せてゆきます。

本器はそのような時期のラミレス工房において、60年代への移行期の作というよりもむしろ先代そして先々代のニュアンスを多分に残した古き良きマドリッド派の音色が体感できる魅力的な一本となっています(製作担当者のイニシャルの刻印はありません)。ラベルはいわゆる「Blue label」で2世の時代からのものがそのまま使用されています。ボディはトーレスのそれを想起させるほどに(つまり19世紀のギターのように)ほどよく小ぶりなもので、重量も1.23㎏と軽く造られています。ヘッドシェイプも1世からのものを踏襲し、ロゼッタもシンプルな同心円デザイン。19世紀的な生々しい木質感が特徴の響きで、例えば1964年以降の3世の有名な1Aモデルでは高音を前景化させる独特のパースペクティヴをもった艶やかな音響が特徴ですが、本器はすべての音が彫塑的に前景化してくるような素朴な力強さがあります。

表面板内部構造はサウンドホール上下(ネック側とブリッジ側)に一本ずつのハーモニックバー、サウンドホール両脇に1枚ずつの補強プレート、左右対称7本の扇状力木という全体配置で、クロージングバーや駒板位置の補強プレートは設置されておりません。7本の扇状力木はその要が低い位置に設定されているため7本すべてがサウンドホールを中心にしてボトム方向に大きく広がっているような扇形になっています。レゾナンスはAの少し下に設定されています。

年代相応の弾き傷、擦れ、摩耗、打痕等ありますが割れ等の修理履歴のない良好な状態を維持しています。横裏板は珍しい木材でおそらくウォルナット系かと思われますが、センターの接ぎ部分に内側からパッチ補強が施されています。ネック指板はおそらく過去に一度二重指板調整が施されており、ナットの装着部分も底部に木材を追加して底上げした形跡があります。現状でネックは真っ直ぐの良好な状態を維持しており、フレットも1~5フレットでやや摩耗見られますが演奏性には影響のないレベルです。ヘッドの糸倉にはやや細工の粗さや左右非対称な部分があるのと、現在装着している糸巻き(おそらくBaker製の廉価版、ローラー部分はスチール製)のプレートとヘッド木部厚みが合っていないことから、木ペグ仕様のものを改造した可能性もあります。ネック裏は特に1~3フレット部分でカポの脱着等による凹みや一部変色がみられます。ネック形状はほぼCシェイプに近いラウンド型。弦高値は3.2/4.0mmでサドル余剰は1.5~2.5mmあります。







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区分 輸入クラシック オールド
製作家/商品名 ホセ・ヤコピ Jose Yacopi
モデル/品番 Model/No. No.1343
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弦長 Scale Length 650mm
国 Country アルゼンチン Argentina
製作年 Year 1974年
表板 Top 松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides 中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option ハードケース 茶
備考 Notes
ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:表板/セラック
   :横裏板/セラック
糸 巻:オリジナル
弦 高:1弦 2.9mm
   :6弦 3.6mm

[製作家情報]
ホセ・ヤコピ Jose Yacopi(1916~2006)。スペインのビトリア生まれ。父親のガマリエル・ヤコピの工房に入り、18歳の時に最初のギターを製作しています。1949年には家族でアルゼンチンのブエノス・アイレスにほど近いサン・フェルナンドに移り住んで工房を開き、そこで生涯ギターを作り続けました。最初は父親と同様にアントニオ・デ・トーレスを規範とした伝統的なスペインギターを製作していましたが、移住する直前の1947年ごろから父親と共に発案した、通常とは逆方向に放射状に配置された扇状力木構造を採用するようになり、これがこのブランドの特徴となります。本国アルゼンチンではその需要の増大に対応するために工房品含め年間約300本のギターを出荷していた時期もありますが、最上位モデルはその1割ほどで、良質な材を使用して本人が製作しています。

非常に独特な音響と音色を備えており、中低音から低音にかけての重厚で柔らく、奥行きのある深い響きと引き締まって艶やかな高音との対比とバランスが素晴らしく、ポリフォニックな曲を演奏した時の立体感は他のギターでは味わえない魅力があります。また音色には南米的な澄んだ色気があり、これが古典と現代の両方の雰囲気を併せ持つことから、クラシック奏者からポピュラー音楽までの幅広いユーザーに愛されてきました。マリア・ルイサ・アニードやエドゥアルド・ファルーらが愛用し、また近年ではボサノヴァや南米音楽の愛好家にも絶大な支持を受けています。
現在は息子のフェルナンド・ヤコピが工房を継いでいますが、ファンの間ではやはり1960年代から亡くなる前の1990年代までのJose本人による楽器に人気が集中しています。

[楽器情報]
ホセ・ヤコピ1974年作。1970年代初期の人気の高い時期の一本です。特徴的な彫刻をあしらったヘッドデザインにブランドオリジナルの真珠貝ボタンの糸巻き、野趣あふれる中南米ローズ材を使用した横裏板、そして深い飴色の塗装を施した全体の外観は実にフォトジェニックで、どっしりと落ち着いた雰囲気は最盛期のヤコピならではと言えるでしょう。

木質感を湛えた特徴的な低音~中低音は語るような、しかしあくまでも慎ましい雄弁さと落ち着きがあり、対して高音は1音1音に芯がしっかり通った、明確で強い表情を備えています。その対比とバランスによる音響は実に個性的で、どこか室内楽的とさえ言えるパースペクティブが生まれています。各音の発音には自然な粘りと弾性感があり、これが曲に南米的としか言いようのない緩やかなうねりを生み出しています。

内部構造は胴底のフットブロックを頂点とするように配された左右対称6本の扇状力木で、通常の扇状力木とは開く方向が逆になっているヤコピ特有の構造。センターのブックマッチ部分にはおそらく製作時からのものでパッチ板がまんべんなく貼られています。レゾナンスはG~G#に設定されています。

表面板の指板脇低音側に1か所割れ補修、表面板向かって右下部分に割れ補修履歴有り、それぞれ内側からパッチ板が貼られていますが、適切な処置が施されており使用には全く問題ございません。弾き傷等全体に若干有りますが年代考慮するとかなり綺麗な状態と言えます。ネックはCラウンドシェイプで後年のものと比較するとコンパクトで握りやすい感触です。ネックは厳密にはほんのわずかに順反りですが標準設定の範囲内、弦高値は2.9/3.6mm(1弦/6弦 12フレット)でサドル余剰は1.0~2.0mmございます。製作時のオリジナルの糸巻が装着されておりますが、現在も機能的な問題はありません。重量は1.63㎏。

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区分 輸入クラシック 中古
製作家/商品名 テオドロ・ペレス Teodoro Perez演奏動画あり
モデル/品番 Model/No. マエストロ・エスペシャル No.1184
001_perezT_02_218_01
弦長 Scale Length 650mm
国 Country スペイン Spain
製作年 Year 2018年
表板 Top 杉 Solid Ceder
横裏板 Back & Sides 中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option ハードケース 黒
備考 Notes
ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:表板/セラック
   :横裏板/セラック
糸 巻:アレッシー
弦 高:1弦 2.3mm
   :6弦 3.6mm

〔製作家情報〕
テオドロ・ペレス Teodoro Perez 1952年スペイン、ソリア生まれ。
1966年ホセ・ラミレス3世工房に弟子入りし、当時の職工長であったマリアーノ・テサーノス・マルティン(1915~1982)やパウリーノ・ベルナベ(1932~2007)のもと、ラミレス黄金期をともにしながら製作修行します。1969年にはマスタークラフツマンとして資格を得て、GPMのイニシャル(ペレスのフルネームはTeodoro Gregorio Perez Mariblanca)で製作を開始、その後1991年にラミレスを辞するまでの26年間で約1400本ものギターを製作したといいます。ラミレス工房から独立後は、同工房の僚友であったマリアーノ・テサーノス(1949~ テサーノス・マルティンの息子)と共同作業を開始。「M・テサーノス・ペレス」のラベルでギターを製作し好評を博します。2005年からは独立して、現在息子セルヒオ・ペレス(1980~)、娘のベアトリス・ペレス(1978~)、娘婿のマルコ.A テヘダ と共に工房を運営し、自身のラベル「Teodoro Perez」でギターを製作しています。

ラミレス系マドリッド派の中心的存在といえるブランドで、例えば同じ流れを汲むパウリーノ・ベルナベの個性的な音響設計と比して、ラミレスを含む伝統的スペインギターのエッセンスをうまく抽出し、無理なく着地させる職人としてのバランス感覚が見事。全体の精緻な造作、重厚で華やかな音色、演奏性における完成度の高さ、外観における豪奢な造りとセンスなどはどれも非常なクオリティを有しており、もっとも円満なスペイン製手工品ブランドの一つとして人気を博してきました。彼のフラメンコモデルはギタリストの沖仁が使用していることで日本でも有名。

〔楽器情報〕
テオドロ・ペレス 製作 マエストロ・エスペシャル Maestro Especial 2018年 No.1184 Used です。彼の50周年記念モデル「Aniversario」を除くと、通常のラインナップ中で最もハイスペックなモデルとなります。ミドルレンジのモデルである「Maestro」や「Concierto」などと比較するとより高級で良質な材が厳選されており、加えてパーフリング、ライニング、ロゼッタ、駒板のタイブロックなどの装飾で凝った意匠が為されており、外観のアピアランスの点でも上位モデルにふさわしい一本となっています。これらの装飾は存在感がありながらも決して華美に過ぎず、むしろある種の落ち着いた雰囲気さえ全体に付加する効果さえあることろは彼の慎ましさの美学ゆえと言えるでしょう。本器は表面板にカナディアンレッドセダーを使用していますが、その柔らかな茶とこれらの意匠とのコンビネーションも洒脱な雰囲気の中に絶妙にまとめられています。横裏板のマダガスカル・ローズウッドの木目もフォトジェニック。

ラミレス系マドリッド派特有の、低音から高音までが一つのフェーズの中に収まり、すべての音が同位相で等しく主張してくるような音響ですが、ラミレスのように特に高音部を前景化させることで「歌う楽器」としての特性を主張するのではなく、あくまでもすべてが均一のバランスで前景化してくるような感覚があります。しかし決して平板な音響と言うわけではなく、響箱を十全にそして適切に響かせることで自然な奥行きを生み出しており、全体に悠揚たる重厚感を醸し出しているところはいかにもマドリッドのブランドらしい。さらに魅力的なのは音色で、これもラミレスの艶やかな響きとの比較で言えば、やや乾いた木質の音像で、そのさらっとした触感が柔和で落ち着いたニュアンスを全体に生み出しており、杉材とマダガスカルローズ材との相乗効果からかどこか翳を帯びたような奥ゆかしささえ感じさせる響きは魅力的。

表面板力木配置は、サウンドホール上側(ネック側)に一本のハーモニックバーと厚さ1mm未満の補強プレートがバーとネック脚の間のエリアのほとんどを覆うように1枚貼られており、下側(ブリッジ側)は1本のハーモニックバーが設置されています。この2本のバーの間はサウンドホール高音側と低音側にそれぞれ1本ずつの短い力木が近接する横板のカーブに沿うようにして設置され、ホール周りには同心円状の補強プレートが貼られています。ボディ下部はホール下側のハーモニックバーの中央を起点として高音低音の両横板に向かって斜めに下がってゆくようにして設置された各一本のバー、この2本のバーの下側からボトム部にかけては計5本(正確には6本)の左右対称の力木が平行に表面板木目に沿って設置されており、駒板位置にはほぼ同じ面積で薄い補強プレートが貼られています。5本の力木のうち中央の3本がこの補強プレートの上を通過していますが低音側の一本はプレートの両側でセパレートされています。レゾナンスはGの少し上に設定されています。

上記の力木構造は同じマドリッドの、かつて共同作業をしていたこともあるマリアーノ・テサーノス、またパウリーノ・ベルナベのメインモデルの構造と特徴をほぼ一にしており、特にサウンドホール下側ハーモニックバーの中央から左右に1本ずつ斜めのバーが配置され、力木は3~5本が扇状形ではなく互いに平行に配されるところはこれらのブランドに共通しています。

割れや改造などの大きな修理履歴はありません。全体はセラック塗装仕上げ。表面板の指板両脇やサウンドホール高音側などに弾き傷やスクラッチあとがやや多くあります。 横裏板は衣服の摩擦あとのみのきれいな状態。ネック、フレットなど演奏性に関わる部分は良好です。ネック形状は薄めのDシェイプでコンパクトな握り心地、弦高値は2.3mm/3.6mm(1弦/6弦 12フレット)となっており、サドル余剰は1.0~2.0mmあります。ネックの差し込み角度、ネックシェイプ、弦高設定などトータルに弾きやすい設定となっており、両手ともにストレスを感じさせません。糸巻はイタリアの高級ブランドAlessi 製を装着、こちらも機能的に良好です。




新入荷 定価(税込) : 時価 販売価格(税込) :  お問い合わせ下さい。

区分 輸入クラシック 中古
製作家/商品名 ローランド・シャルバトケ Roland Scharbatke
モデル/品番 Model/No.
001_RScharbatke_02_204
弦長 Scale Length 650mm
国 Country ドイツ Germany
製作年 Year 2002年
表板 Top 杉 Solid Ceder
横裏板 Back & Sides 中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option ハードケース
備考 Notes
ネック:マホガニー
指 板:エボニー
塗 装:表板 セラック
   :横裏板 ラッカー
糸 巻:ロジャース
弦 高:1弦 3.0mm
   :6弦 4.0mm

[製作家情報]
ローランド・シャルバトケ Roland Scharbatke 1952年 ドイツ、テューリンゲン州ゴータに生まれる(カール・マルクスの有名な「ゴータ綱領批判」のゴータです)。1959年7歳の時に家族でノルトライン=ヴェストファーレン州のイーザーローンに移り、現在も彼はこの土地で製作を続けています。イーザーローンは1959年当時西ドイツ側に位置し、東ドイツのゴータから西側に移るのは(のちにベルリンの壁建設に象徴される厳しい分断が行われる前の国内情勢だったとは言え)、家族が揃って移住するには非常な困難があったようです。しかしながら幸福にも彼は家族と共にイーザーホーンに文字通り安住することができ、やがて家具職人の徒弟として働き始めます。この時ギターの演奏に熱中し同時に製作にも興味を持つようになっていた彼は1979年にまず家具職人としてのマイスター試験に合格した後、バイエルンの製作家 Gerold Karl Hannabach(1928~2015 ※彼の叔父のAnton Hannabachは弦メーカーのハナバッハを故郷チェコで創業した人物で、バイエルンに移住後にその息子Arthur が事業を引き継いでいます。Geroldは弦製造には関わらず、完全に独立して弦楽器職人としての道を歩みます)に弟子入り、すでに家具職人として一流の腕を持っていたシャルバトケは一気に楽器製作の技術を習得し、1989年には撥弦楽器製作の職人としてもマイスター試験に合格、同年に自身の工房を起ち上げブランドを開始します。

彼の楽器は何と言っても精緻な木工技術によるシンプルかつ審美的な造作とデザインが特筆されますが、あのワイスガーバーさえ凌ぐほどの多産と多ジャンルでの製作を展開した師Gerold の影響からか、音響に関しては広範な知見に基づいた独自の美学を感じさせるものになっています。スペイン=ドイツのクラシックギターの伝統をあくまでも基本として慎重に逸脱を回避しながら、ダブルトップなどのモダンギターとも一線を画す現代性を有するに至っています。

[楽器情報]
ローランド・シャルバトケ 2002年製 Used の入荷です。表面板力木配置はサウンドホール上側(ネック側)に長短2本、下側(ブリッジ側)に1本のハーモニックバー、サウンドホール両側(高音側と低音側)はそれぞれ2本ずつの短い力木がX状に交差してハーモニックバーによって区切られた範囲を覆うようにして設置されています。表面板下部は左右対称7本の扇状力木ですが、7本のうちセンターの3本はサウンドホールの直径の幅に収まるように寄り添ってほぼ平行に設置されており、少し離れて残りの4本が扇状を形成してゆくようにして全体を配置。またスタンダードな設計ならこれらの力木を受け止めるような形でボトム部に2本のバーをV字型に配置するのですが、ここでは1本のバーが横向きに設置されて力木の先端を受け止め、さらにエンドブロックにほぼ接する位置に短いもう一本のバーを設置しています。そして駒板位置には薄い補強プレートが貼られ、その両端に近い位置からそれぞれ2本ずつの短い力木が近接する横板に向かって伸びるようにして設置されているという全体の構造になっています。レゾナンスはFの少し上に設定されています。

一つの位相の中に低音から高音までが収まるようなドイツ的と言える音響設計ですが、低音のまさに「Bass」としてのキャラクターと高音の凛とした「Voice」との明確な対比があり、特に低い重心感覚とともにたっぷりと響く低音は魅力的。基音のはっきりした音像に響箱の容量を活かした奥行きが加わり、上品なリヴァーヴ感を生み出しています。またこれは「ドイツ的」ギターとしては異質とさえ言えるほどによく歌うロマンティックな表情があり、ここに非常に鋭敏な発音機能によるスマートな音の身振りが加わり、繊細かつダイナミックな表現力を持つに至っています。ただしあえて指摘すれば特に高音でいくつかの音は共鳴が強く出てしまうところがあります。

日本美術に影響を受けたという「ミニマルな」デザインは特にスクエアなヘッドシェイプににカナダの高級糸巻ブランドRodgersによるカスタムメイド品をすっきりとインレイさせるというこだわりに表れています。また赤と茶を基調としてそこに極めて繊細な黄緑の意匠をあしらったロゼッタは杉材の渋い飴色の中に素晴らしく調和し、駒板のタイブロックは象牙に白蝶貝をインレイしたものを装着して全体の上品なアクセントとなっています。

割れや改造等の大きな修理歴はありません。表面板は指板両脇からサウンドホール周りにかけてのスクラッチあとや弾きキズ、ボトム付近に数か所の打痕等ありますが年代相応のレベルと言えます。横裏板は演奏時に胸や腕の当たる部分に塗装の擦れは見られますが、その他は衣服等によるほんのわずかな摩擦あとのみ、ネック裏に関しても全体に爪キズはあるものの浅く軽微なものなのでそれほど目立ちません。演奏性に関わる部分についても良好で、ネックは適正な状態、フレットも1~5Fでわずかに摩耗見られますが問題ありません。指板高音側は20フレット仕様。ネック形状は薄めのDシェイプでフラットな形状、弦高値は3.0/4.0mm(1弦/6弦 12フレット)に設定されています。ナットとサドルはともに象牙製で、サドルには各弦位置に深めに溝が切ってあり、弦をしっかりと固定しています(この弦の下端位置を基準にしてサドル余剰は1.0~2.0mmあります)。右手左手ともに音の反応もリニアニティも非常に優れておりその点でのストレスはほとんどありませんが、弦の張りは強めなのでお好みに応じて使用弦のテンション設定はご変更ください。重量は1.54㎏。


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