ギターショップアウラ
ようこそ ゲスト さま
会員登録 ログイン カート お気に入り
English
ポータルサイト
アウラ音楽院
アクセス
お問い合わせ
トップ > ギターカテゴリー > 輸入クラシック オールド
輸入クラシック オールド   写真をクリックするとさらに大きなカタログ写真が表示されます。
製作家/商品名 ロベール・ブーシェ Robert Bouchet演奏動画あり
モデル/品番 Model/No. No.103
001_000_bouchet_03_164
弦長 Scale Length 650mm
国 Country フランス France
製作年 Year 1964年
表板 Top 松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides 中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option ハードケース付属
備考 Notes
ネック:マホガニー
指 板:エボニー
塗 装:セラック
糸 巻:バンゲント
ナット:象牙
サドル:牛骨
弦 高:1弦 3.5mm/6弦 4.0mm

[製作家情報〕
ロベール・ブーシェ(1898~1986、フランス) 20世紀フランス最大の巨匠であり、現在に至るまでヨーロッパのみならずあらゆるクラシックギター製作に影響を与え続けているまさしく不世出の名工です。その比類なき芸術性と生涯わずか154本のみの製作という稀少性とから、彼の全モデルは現在トーレス、ハウザー1世に次いで最も高値で取引されています。プレスティ/ラゴヤの音響世界の源となり、若き日のブリームを熱狂させ、晩年には国内屈指の美音の持ち主である故稲垣稔氏を魅了したマエストロはまた、フレドリッシュやアントニオ・マリンなどの現代の名工たちの創造的源泉にもなってきました。

1889年フランス、パリの洋装店を営む家に生まれ、幼少より絵画と音楽に親しみ、1919年にまずは画家としての人生を歩み始めます。1932年モンマルトルの丘にアトリエを構え、ここではギターはまだ趣味で演奏をたしなむ程度のものでしたが、近くにスペインから亡命し工房を開いていたフリアン・ゴメス・ラミレスの知遇を得て、初めてギター製作の現場を目の当たりにします。そして1946年に所有していたフリアン作の愛器を失った彼は、それまでつぶさに観察していたフリアンの工房での全工程の記憶を基に、自ら工具や治具を作るところから始め、ついに自らの為のギターを製作します。糸巻の彫刻に至るまで自らの手で細工して完成したギターはその後大変な評判となり、前述の名手たち以外にも次々と注文が入るようになります。

ギターファンには良く知られているように、彼の作風は大きく年代的に2つに分けることができ、最初の1940年代から1950年代半ばにかけてはアントニオ・デ・トーレスを規範としたものとなっていますが、1956年以降は独自の構造を発案し、「パイプオルガンのような」と評されるほどのしっかりとした基音と非常な奥行きを感じさせるきわめて個性的な音響を達成します。

[楽器情報〕
ロベール・ブーシェ製作、1964年製 No.103 ジュリアン・ブリームが購入した4本のブーシェのなかで最後の一本で、名盤「バロックギター」で使用したモデルです。この稀代の名手が愛用したというエピソードを抜きにしても、ブーシェ最盛期の一本として非常なクオリティと芸術性を有した至高の一本と言えるまさに名品です。内部構造は左右対称5本の扇状力木と駒板真下の位置にギターの横幅いっぱいに設置されたいわゆるトランスヴァースバーというブーシェオリジナル配置で、5本の扇状力木はトランスヴァースバーを貫くようにしてボトム部まで伸びています。またサウンドホール下のハーモニックバーは高音側と低音側に開口部が設けられ、一番外側の扇状力木はそこをくぐってサウンドホール近くまで伸びるような配置になっています。レゾナンスはG#~Aに設定されています。

ブリームが生涯に使用したギターは数多く、そのどれもが彼の名演とともにギターファンの記憶にいまも深く刻まれていますが、取り分けロマニリョス、ハウザー、ルビオと並び印象深いのがブーシェとの組み合わせでしょう。1951年にブリームはブーシェの工房を訪れており、同時期に耳にしたイダ・プレスティの演奏に非常な感銘を受けた彼は、ハウザーのあとに使用するギターとしてブーシェを選びます。1957年、1960年、1962年そして1964年製の計4本(一説には5本)のギターをブーシェより購入。彼がアメリカに演奏旅行中、ニューヨークの車中で持参していたブーシェギターが盗難にあい、いまだに見つかっていませんが、これは1962年製のものであるとブリーム自身がインタビューで語っています。そしてそのあとに購入したのが本作1964年製のNo.103となります(ボディ内部の裏板のバーにブーシェ本人のサインがあります)。
ブリームは特にブーシェギター高音の「refinement」に深く魅了されたと語っていますが、そのまるでオーケストラの弦の響きのように密度があり、良く歌う高音部はまさしくブーシェだけの至芸でしょう。低音部もまた実に重厚で深く、そしてニュアンスに満ちており、深度があり同時に明確な発音もやはり素晴らしい。かなりの熟練したタッチが要求されるギターですが、それもまた名品ゆえにこそ。リアルヴィンテージの最高峰と呼ぶにふさわしい究極の一本です。

表面板全体にスクラッチ痕が有りますが割れ等の修理履歴は無く、年代相応の状態。ネック、フレット、ナット、サドル等の演奏性に関わる部分も問題ありません。糸巻きはおそらくオリジナルが故障したのか、過去にヴァンゲント製に交換されています(オリジナルは残っておりません)。塗装はオリジナルのセラック仕様、ところどころに通常使用により生じた色むら等ありますが、特にダメージの強い部分はなく現状問題ございません。






品切れ 定価(税込) : 時価 販売価格(税込) :  お問い合わせ下さい。

製作家/商品名 マヌエル・カセレス Manuel Caceres演奏動画あり
モデル/品番 Model/No. パラ・カサ・アルカンヘル
001_003_caceres_1_01_183
弦長 Scale Length 650mm
国 Country スペイン Spain
製作年 Year 1983年
表板 Top 松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides インディアンローズウッド Solid Indian Rosewood
付属品 Option ハードケース
備考 Notes
ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:表板 ポリウレタン
   :横裏板 ポリウレタン
糸 巻:フステーロ
弦 高:1弦 3.0mm
   :6弦 4.0mm

〔製作家情報〕
1947年スペインのバダホス県生まれ。13才の時からラミレス工房にて仕事を始め、一時家族の都合でドイツに移住。
帰国後に再びラミレス工房に戻り、1964年からは製作を任される様になりました。当時の彼の楽器は今でもMCスタンプのラミレスとして高い評価を得ています。
1978年には名工アルカンヘル・フェルナンデスのアドバイスを得て独立し、自らの工房をマドリッドに設立。
多くの有名ギタリストが使用する楽器として名声を高めメキシコ、キューバ、プエルトリコ等では製作マスターコースを行い後進の指導にも力を入れています。
その後1999年より13年間に渡りアルカンヘルの仕事を手伝い、その影響化、徐々に独自の作風を確立して行きました。現在はアルカンヘルの引退に伴い、唯一の後継者として製作に励んでいます。

[楽器情報]
本作はラミレス工房での充実した仕事のあと独立してから間もない時期のもの。若き日の作ながら、ここにはすでにマドリッドのギターの良き特徴が無理なく、非常に高いレベルで達成されており、しかもとても弾きやすく設定されている、何とも素晴らしいギターになっています。
表面板を中心に傷、擦れなどありますが、オリジナル塗装の状態です。ネック反りなく弦高弾きやすく調整されています。明るく明確な伸びの良い音質です。




定価(税込) : 時価 販売価格(税込) :  お問い合わせ下さい。

製作家/商品名 サントス・エルナンデス Santos Hernandez
モデル/品番 Model/No.
001_012_santos_03_139
弦長 Scale Length 655mm
国 Country スペイン Spain
製作年 Year 1939年
表板 Top 松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides 中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option ハードケース
備考 Notes
ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:表板 セラック
   :横裏板 セラック
糸 巻:フステーロ
弦 高:1弦 3.0mm
   :6弦 4.0mm


〔製作家情報〕
サントス・エルナンデス Santos Hernandez Rodriguez (1874~1943)スペインのマドリッド生まれ。バレンティン・ビウデスやイーホ・デ・ゴンザレスに師事し製作を学び、その後マヌエル・ラミレスの工房に入りました。そして1912年にマヌエル・ラミレス工房で製作した彼の楽器でアンドレス・セゴビアがマドリッドでデビューし、その後も長年愛奏した事は良く知られています。
1921年には、マヌエル・ラミレスが亡くなったのを機に独立して、マドリッドのアドアナ通りに工房を開設。当時レヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサやセウドニオ・ロメロ、ラモン・モントーヤ、ニーニョ・リカルド等多くのギタリストが訪れ、演奏やギター談義に花を咲かせ、ギター文化の中心的役割を果たしたその工房は、現在ロマニリョスの尽力によりシグエンサの博物館に移転されていて、当時の雰囲気を偲ぶことが出来ます。
1943年に彼が亡くなった後は、弟子のマルセロ・バルベロがその後を継ぎ、更にアルカンヘル・フェルナンデスへと、マニア垂涎の楽器製作の技法は伝承され続けています。


[楽器情報]
サントス・エルナンデス 1939年 ブラジリアン・ローズウッド仕様のクラシックモデル、状態良好の1本が入荷致しました。Orfeo Magazineの著者である Alberto Martinez 氏による「Santos Hernandez ~Maestro Guitarrero~ 1874-1943」(Camino Verde 刊)によって、少なくとも日本では初めて、この製作家がいかに多様なスタイル(内部構造的、そしてロゼッタに顕著な外観デザインの両方において)で製作していたかを俯瞰することができたのですが、スペインギターの典型とされる音響を構築したと位置づけられるこの稀代の名工がかように多様な力木システムを発案していたのはやはり驚くべきことでしょう。当然のことながらそこにはいかに表面板を十全に自然に振動させ最大限の音響効果を得るかということの不断の探求が見て取れるのですが、興味深いのは同著に掲載されていた10本の例のうち1939年製のフラメンコモデルを除いてあとはすべてハーモニックバー2本、扇状力木7本、そして0~2本のクロージングバーの配置関係のヴァリエーションとなっていることで、そのほとんどに共通しているのは高音側と低音側とで非対称の配置が試みられていることです。詳細については同著を参照いただけたらと思いますが、まずやはりサントスにはトーレスそしてマヌエル・ラミレスにより完成された左右対称構造による音響設計を基本としながら、そこに上記の試みによって低音と高音にそれぞれの位相を生み出し、かつ全体の統一的なバランスを構築するという主眼が確実に存在していたと言うことができます。そしてこの試みはギターがいよいよ西洋音楽の構造原理と密接にリンクしてゆくことの嚆矢となります。

本作1939年製はほぼ彼の晩年期の作と言えますが、前著に掲載されていたどの力木構造とも異なっています。まずサウンドホール上下(ネック側とブリッジ側)に1本ずつ計2本のハーモニックバーは同じとして、サウンドホールを囲むように貼り付けられた補強板はロゼッタと同じ円形ではなく角形をしています。扇状力木は7本でやはり左右非対称になっており、ボトム部のクロージングバーは高音側だけに設置されています。扇状力木はそれぞれの両端はサウンドホール下のハーモニックバーからもボトム部からも若干離れた位置に設定されており、駒板を中心として表面板下部の中央に寄り集まるような配置になっています。またクロージングバーのない低音側は高音側よりも力木の長さが顕著に短くなっており、特に一番外側の一本はすぐ内側の1本の半分ほど10cm程の短さになっています。レゾナンスはF#の少し下に設定されています。

サントスが完成させたスペイン的音響とは、低い重心設定によるまさしく音響全体を支える低音から雄弁な中低音、そして「高さ」のクリアネスへと至る音響設計で、それぞれは異なる位相で鳴りながらも全体としての有機的な統一性があるというもの、とまずは定義することができます。加えて各音の(つまりすべての音の)非常な表現力で、これはやはり人間の声が基本になっていると思うのですが、これ以上ない繊細さからダイナミックさに至るその表情の豊かさも必須条件と言えるでしょう。本作はこの条件を十全に備えつつ、サントス後期特有のストイックなまでの音の密度が素晴らしい一本となっています。

撥弦には強めのしかし心地良い反発感がともない、そこからあの弾性感のある魅力的な音像が瞬時に表れてきます。それは鳴っているというよりも在るという感覚に近いもので、声のような肌理を持ち、明と暗の表情を持つ、まさしく楽音と呼ぶにふさわしい深いニュアンスを備えたものとなっています。発音されたまま霧消してゆくような音ではなくしっかりとした質量があり、終止の瞬間まで充実しているので、自然に旋律は有機的なうねりを生み出してゆきます。あらゆる音楽的な身振りに俊敏に対応する機能性の高さ、多声音楽における対位法の明確な彫りの深い響きも見事。

この「多様な」製作家にとってのスタンダードとなる一本だと明言することは控えますが、彼のあと、(直接の師弟関係はありませんでしたが)その唯一の直系と言えるマルセロ・バルベロ1世、そしてアルカンヘル・フェルナンデスへと続いてゆく美学の原型をしっかりと聴くことのできる名品です。

製作年を考慮するととても良好な状態を維持した一本です。表面板は割れ修理の履歴はなく、おそらくかなり前に一度セラックによる上塗りなどはされた可能性はありますが、それにより現状では弾きキズ等はいずれも軽微で浅いものにとどまっています。サウンドホール縁近くに3mmほどの打痕を部分補修した跡が2か所ありますが外観を損ねるものではなくほとんど目立ちません。また横裏板もおそらく過去に再塗装がされた可能性はありますが、木目の節の隙間を部分的に補修した箇所が数か所、それぞれ小さなものですがあります。また高音側ボトム付近に7センチほどの割れ補修歴がありますが、適切な補修がされており、現状で問題ありません。やはり全体にきれいな状態を保っていると言えます。ネックはほんのわずかに順反りですが標準設定の範囲内、フレットも1~3Fでわずかに摩耗していますがこちらも演奏性には全く影響ありません。ネック形状はほぼラウンドに近いCシェイプでやや厚めの設定。弦高値は3.0/4.0mm(1弦/6弦 12フレット)でサドル余剰は2.5~3.0mmあります。

新入荷 定価(税込) : 時価 販売価格(税込) :  お問い合わせ下さい。

製作家/商品名 ヘルマン・ハウザー2世 Hermann Hauser II演奏動画あり
モデル/品番 Model/No. セゴビアモデル Segovia No.763
001_017_hauser_2_03_165
弦長 Scale Length 650mm
国 Country ドイツ Germany
製作年 Year 1965年
表板 Top 松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides 中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option ハードケース(BAM)
備考 Notes
ネック:マホガニー
指 板:エボニー
塗 装:表板 セラック
   :横裏板 セラック
糸 巻:ライシェル
弦 高:1弦 3.0mm
   :6弦 4.0mm

〔製作家情報〕
ヘルマン・ハウザー2世 Hermann Hauser II(1911~1988)
20世紀ドイツ最高のギターブランドであり、現在も4代目がその伝統を継承し100年以上にわたって一子相伝で製作を続けている老舗です。ヘルマン・ハウザーI世(1884-1952)が、ミゲル・リョベートが所有していたアントニオ・トーレスとアンドレス・セゴビア所有のマヌエル・ラミレスをベースにして自身のギターを改良し、後にセゴビアモデルと呼ばれることになる「究極の」名モデルを製作した事は良く知られています。それはトーレスがギターの改革を行って以来最大のギター製作史における事件となり、その後のギター演奏と製作との両方に大きな影響を与えることになります。1世の息子ハウザー2世はドイツ屈指の弦楽器製作都市として知られるミッテンヴァルトで4年間ヴァイオリン製作学校で学んだ後、1930年より父の工房で働き始めます。彼ら親子はほぼ共同作業でギターを製作していましたが、ラベルはハウザー1世として出荷されています。1世が亡くなる1952年、彼は正式にこのブランドを受け継ぎ、彼自身のラベルによる最初のラベル(No.500)を製作。以来1983年に引退するまで極めて旺盛な活動をし、500本以上のギターを出荷しています。

ハウザー2世もまた父親同様に名手たち(セゴビア、ジュリアン・ブリーム、ペペ・ロメロ等)との交流から自身の製作哲学を熟成させていったところがあり、また彼自身の資質であろうドイツ的な音響指向をより明確化することで、1世とはまた異なるニュアンスを持つ名品を数多く世に出しました。有名なところではなんといってもブリームが愛用した1957年製のギターですが、その音響は1世以上に透徹さを極め、すべての単音の完璧なバランスの中にクラシカルな気品を纏わせたもので、ストイックさと抒情とを併せもった唯一無二のギターとなっています。

1970年代以降の彼は特にその独創性において注目されるべきペペ・ロメロモデルや、おそらくは急速に拡大した需要への柔軟な姿勢としてそれまでには採用していなかった仕様での製作も多く手がけるようになりますが、やはり完成度の高さの点では1世より引き継いだ「セゴビア」モデルが抜きんでています。その後1980年代からモダンギターの潮流が新たなスタンダードと目されていく中でも、ハウザーギターは究極のモデルとしての価値を全く減ずることなく、現在においてもマーケットでは最高値で取引されるブランドの一つとなっています。

1974年からは息子のハウザー3世(1958~)が工房に加わりおよそ10年間製作をともにします。3世もまた2世のエッセンスに独自の嗜好を加味しながら、ブランドの名に恥じぬ極めて高度な完成度を有したモデルを製作し続けています。

[楽器情報]
ヘルマン・ハウザー2世 1965年製 セゴビアモデル No.763 の入荷です。
1952年に亡くなった1世の芸術性を継承し、熟成させるようにしてスパニッシュギターの洗練化(汎西洋化)を異様と言えるまでの集中力で行っていった2世は、その50年代の終わりにそうした1世的コンセプトの極点に達したのち、続く60年代の10年をたっぷりかけて自身のドイツ性を強めてゆくことになります。本作1965年製はまさにその中間点ともいえる時期のもので、1960年代ハウザーの一つの頂点を感じ取ることのできる1本となっています。

ハウザー特有の鍵盤的と言ってよいほどの整ったバランスですべての音が構築されており、旋律においては明確な線のつながりを、和声においては各音の構成を、対位法においては各声部の動きを、それぞれ機能的かつ極めて音楽的に表出するポテンシャル有しており、その完成度の高さは比類がありません。ハウザー好みの剛性の高いドイツ松(ハウザーストックの素晴らしい松材)と弦の弾性とが絶妙な案配でブレンドされることで、あの独特の硬質な粘りを持った発音となりますが、そこから生まれてくる凛とした音像がやはり素晴らしい。いかにもクラシカルに相応しい雰囲気を湛えつつ、おそらくこの時期のハウザー2世だけが持ちえたような厳格さがあり、ドイツ的音響のひとつの到達点を示す1本となっています。

本作は製作からおそらくはそれほど経っていない時期に全体のセラックによる再塗装が施されておりますが(オリジナルはおそらくラッカー塗装)、この変更によりハウザーの音響特性が減ずることはなく、ほのかに木質の触感を纏った響きとなっているところはかえって特別な魅力があります。

表面板力木配置は1世の1937年製セゴビアモデルに準拠しながら2世の工夫が加えられたものとなっています。サウンドホール上側(ネック側)に形状の異なる2本のハーモニックバーとその間に1枚の補強プレート(ここに2世自身の直筆サインと日付が書かれています)、サウンドホール下側のハーモニックバーはちょうど中央部分でほんのわずかに湾曲して、その両端をややネック寄りの位置に設定しています。これら上下のバーの間を繋ぐようにホール左右には一枚ずつの補強プレートが貼られています。ウェストより下側は左右対称7本の扇状力木にこれらの先端をボトム部で受け止める2本のハの字型のクロージングバー、駒板位置にはほぼ同じ範囲に非常に薄い補強プレートが貼ってあるという全体の配置。上記の湾曲したハーモニックバーは2世のモデルに特徴的なもの。また裏板に設置されているバーは薄く高さがありその頂点は尖った加工となっており、これもまた2世特有の形状となっています。レゾナンスはG~G#に設定されています。

表面板は指板脇からサウンドホール周りにかけての高音側のエリアや駒板下のエリアなどに細かな弾き傷やスクラッチキズがやや多めに見られます。しかしながらさほどに深いものではなく、経年数を考慮すると標準的な状態と言えます。横裏板は衣服等による摩擦が少々、またボタンやベルトのバックル等によると思われるやや長めのスクラッチ傷がやや集中して下部エリアに見られますがこちらも年代相応のレベルと言えるでしょう。割れ等の大きな修理履歴はありません。ネック裏もおそらく同時期にセラックによる再塗装は施されておりますが、現在も良好なきれいな状態を維持しています。ネックはほぼ真っすぐを維持しており、指板は1~3フレットで特に摩耗が目立つもののフレット本体は適正値を維持しており演奏性には問題ありません。ネック形状は薄めのDシェイプ、弦高値は3.0mm/4.0mm(1弦/6弦 12フレット)でサドル余剰は0.5~1.0mmとなっています。糸巻はライシェル製ゴールドプレートタイプに交換されており(出荷時はランドスドルファー)、こちらも現状で機能的に良好です。重量は1.53㎏。





新入荷 定価(税込) : 時価 販売価格(税込) :  お問い合わせ下さい。

製作家/商品名 エルナンデス・イ・アグアド Hernandez y Aguado
モデル/品番 Model/No. No.224
001_018_hernanagua_03_162
弦長 Scale Length 655mm
国 Country スペイン Spain
製作年 Year 1962年
表板 Top 松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides 中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option 軽量ケース
備考 Notes
ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:表板 セラック
   :横裏板 セラック
糸 巻:ロジャース
弦 高:1弦 3.1mm
   :6弦 4.1mm

[製作家情報]
「エルナンデス・イ・アグアド」
サンチャゴ・マヌエル・エルナンデス(1895~1975)、ビクトリアーノ・アグアド・ロドリゲス(1897~1972)の二人による共同ブランドで、エルナンデスが本体の製作、アグアドが塗装とヘッドの細工そして全体の監修をそれぞれ担当。通称「アグアド」と呼ばれ、20世紀後半以降の数多くのクラシックギターブランドの中でも屈指の名品とされています。

エルナンデスはスペイン、トレド近郊の村Valmojadoに生まれ、8歳の時に一家でマドリッドに移住。アグアドはマドリッド生まれ。2人はマドリッドにある「Corredera」というピアノ工房で一緒に働き、良き友人の間柄であったといいます。この工房でエルナンデスは14歳のころから徒弟として働き、その優れた技術と情熱的な仕事ぶりからすぐに主要な工程を任されることになります。アグアドもまたこの工房で腕の良い塗装職人としてその仕上げを任されていたので、二人での製作スタイルのひな形がこの時すでに出来上がっていたと言えます。1941年にこのピアノ工房が閉鎖された後、2人は共同でマドリッドのリベラ・デ・クルティドーレス9番地にピアノと家具の修理工房を開きます。

1945年、プライベート用に製作した2本のギターについて、作曲家であり当時随一の名ギタリストであったレヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサに助言を仰ぐ機会を得ます。この名手は二人の才能を高く評価し、ギター製作を勧めるとともに自身が所有していたサントス・エルナンデスのギターを研究のために貸し与えています。さらにはサントスと同じくマヌエル・ラミレス工房出身の製作家で、終戦直後の当時貧窮の中にあったモデスト・ボレゲーロ(1893~1969)に仕事のためのスペースを工房内に貸し与えることになり、そのギター製作の工程をつぶさに観察。これが決定的となり、ギターへの情熱がさらに高まった二人は工房をギター製作に一本化することに決め、1950年より再発進します。デ・ラ・マーサという稀代の名手とマヌエル・ラミレスのメソッドを深く知るボレゲーロ(彼は1952年までアグアドの工房を間借りして製作を続けた後に独立しています)という素晴らしい二人の助言をもとに改良、発展を遂げて世に出されたアグアドのギターは大変な評判となり、一時期70人以上ものウェイティングリストを抱えるほどの人気ブランドになりました。

出荷第一号はNo.100(※1945年に製作した個人用のギターがNo.1)で、1974年の最後の一本となるNo.454まで連続番号が付与されました。1970年前後に出荷されたものの中には同じマドリッドの製作家マルセリーノ・ロペス・ニエト(1931~2018)や、やはりボレゲーロの薫陶を受けたビセンテ・カマチョ(1928~2013)が製作したものも含まれており、これは殺到する注文に応えるため、エルナンデスが当時高く評価していた2人を任命したと伝えられています。

しばしば美しい女性に喩えられる優美なボディライン、シンプルで個性的かつこの上ない威厳を備えたヘッドデザインなどの外観的な特徴もさることながら、やはりこのブランドの最大の特徴はその音色の絶対的ともいえる魅力にあると言えるでしょう。人間の声のような肌理をもち、表情豊かで温かく、時にまるで打楽器のような瞬発性とマッシヴな迫力で湧き出してくる響きと音色は比類がなく、二人だけが持つある種の天才性さえ感じさせます。

このブランドの有名な逸話にも登場するエルナンデスの愛娘のエミリアは1945年にヘスス・ベレサール・ガルシア(1920~1986)と結婚。ベレサールはアグアドの正統的な後継者として、その精神的な面までも受け継ぎ、名品を世に出す存在になります。

アグアドがギター製作を始めるうえでの大きなきっかけとなったデ・ラ・マーサはその後彼らのギターを数本購入し愛用しているほか、ジョン・ウィリアムスやユパンキなどの名手たちが使用しています。


[楽器情報]
エルナンデス・イ・アグアド 1962年製 No.224 ヴィンテージの入荷です。
この名ブランドの、さほどに長くはない歴史の中でもとりわけ人気と評価の高い1960年代初期の作。柾目のブラジリアン・ローズウッドを横裏板として使用し、おなじみのヘッドデザインにアグアドらしい優美さをたたえたボディ、柔らかな気品が漂う見事な一本。

力強く、アグアド独特の包容力ある響き、ジェントルで耳に心地よい独特の肌理をもった音色が素晴らしい。また人間的と言いたくなるほどによく歌い、変化する表情の繊細さも名品ならでは。心の動きとシンクロしながら、同時に楽器のほうからも奏者に対して働きかけをしてくるような真に音楽的な瞬間は他では得られない感覚でしょう。しかしながら同時に(名器の常として)、奏者には然るべきタッチの熟練が求められますが、それが一致した瞬間の充実感はやはり格別なものがあります。

内部構造について、年代的な傾向はありますが、アグアドはほぼ個体ごとに力木配置を変えていました。本作ではサウンドホール上下(ネック側とブリッジ側)に1本ずつのハーモニックバー、ボディ下部は左右対称7本の扇状力木とその先端をボトム部で受け止めるようにハの字型に配された2本のクロージングバー、そしてブリッジの位置には駒板とほぼ同じ大きさのパッチ板が貼られ、扇状力木はその上を通過しています。レゾナンスはGの少し上に設定。

表面板の指板脇、サウンドホール周りを中心に弾き傷など、またブリッジ下部分は弦飛びの痕があります。裏板は演奏時に胸のあたる部分の塗装に摩耗が若干見られ、またネック裏の1~2フレット付近にも塗装の摩耗が生じていますが割れ補修等の大きな修理履歴はなく、60年を経た楽器としてはかなり良好な状態と言えるでしょう。ネックは真っすぐを維持しており、フレットは1~7フレットでやや摩耗していますが現状で演奏性には問題のないレベル。比較的薄めに加工されたDシェイプのネック、弦はやや強めの張り。糸巻はオリジナルのフステロ製を装着しており、現状で機能的な問題はありません。サウンドホールラベル、表面板サウンドホール高音側にサインあり。

丁寧に弾き込まれており、レスポンスにはまだ硬い部分もあり、まだまだ鳴らしていけるポテンシャルを有した一本となっています。スペイン屈指の名ブランドの、状態そして音ともに良質なUsedです。 


新入荷 定価(税込) : 時価 販売価格(税込) :  お問い合わせ下さい。

製作家/商品名 エルナンデス・イ・アグアド Hernandez y Aguado
モデル/品番 Model/No. No.304
001_018_hernanagua_03_165
弦長 Scale Length 660mm
国 Country スペイン Spain
製作年 Year 1965年
表板 Top 松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides 中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option ハードケース
備考 Notes
ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:表板 セラック
   :横裏板 セラック
糸 巻:フステーロ
弦 高:1弦 3.0mm
   :6弦 4.5mm

[製作家情報]
「エルナンデス・イ・アグアド」Hernandez y Aguado
サンチャゴ・マヌエル・エルナンデス(1895~1975)と ビクトリアーノ・アグアド・ロドリゲス(1897~1972)の二人による共同ブランドで、エルナンデスが本体の製作、アグアドが塗装とヘッドの細工そして全体の監修をそれぞれ担当。通称「アグアド」と呼ばれ、20世紀後半以降の数多くのクラシックギターブランドの中でも屈指の名品とされています。

エルナンデスはスペイン、トレド近郊の村Valmojadoに生まれ、8歳の時に一家でマドリッドに移住。アグアドはマドリッド生まれ。2人はマドリッドにある「Corredera」というピアノ工房で一緒に働き、良き友人の間柄であったといいます。この工房でエルナンデスは14歳のころから徒弟として働き、その優れた技術と情熱的な仕事ぶりからすぐに主要な工程を任されることになります。アグアドもまたこの工房で腕の良い塗装職人としてその仕上げを任されていたので、二人での製作スタイルのひな形がこの時すでに出来上がっていたと言えます。1941年にこのピアノ工房が閉鎖された後、2人は共同でマドリッドのリベラ・デ・クルティドーレス9番地にピアノと家具の修理工房を開きます。

1945年、プライベート用に製作した2本のギターについて、作曲家であり当時随一の名ギタリストであったレヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサに助言を仰ぐ機会を得ます。この名手は二人の才能を高く評価し、ギター製作を勧めるとともに自身が所有していたサントス・エルナンデスのギターを研究のために貸し与えています。さらにはサントスと同じくマヌエル・ラミレス工房出身の製作家で、終戦直後の当時貧窮の中にあったモデスト・ボレゲーロ(1893~1969)に仕事のためのスペースを工房内に貸し与えることになり、そのギター製作の工程をつぶさに観察。これが決定的となり、ギターへの情熱がさらに高まった二人は工房をギター製作に一本化することに決め、1950年より再発進します。デ・ラ・マーサという稀代の名手とマヌエル・ラミレスのメソッドを深く知るボレゲーロ(彼は1952年までアグアドの工房を間借りして製作を続けた後に独立しています)という素晴らしい二人の助言をもとに改良、発展を遂げて世に出されたアグアドのギターは大変な評判となり、一時期70人以上ものウェイティングリストを抱えるほどの人気ブランドになりました。

出荷第一号はNo.100(※1945年に製作した個人用のギターがNo.1)で、1974年の最後の一本となるNo.454まで連続番号が付与されました。1970年前後に出荷されたものの中には同じマドリッドの製作家マルセリーノ・ロペス・ニエト(1931~2018)や、やはりボレゲーロの薫陶を受けたビセンテ・カマチョ(1928~2013)が製作したものも含まれており、これは殺到する注文に応えるため、エルナンデスが当時高く評価していた2人を任命したと伝えられています。

しばしば美しい女性に喩えられる優美なボディライン、シンプルで個性的かつこの上ない威厳を備えたヘッドデザインなどの外観的な特徴もさることながら、やはりこのブランドの最大の特徴はその音色の絶対的ともいえる魅力にあると言えるでしょう。人間の声のような肌理をもち、表情豊かで温かく、時にまるで打楽器のような瞬発性とマッシヴな迫力で湧き出してくる響きと音色は比類がなく、二人だけが持つある種の天才性さえ感じさせます。

このブランドの有名な逸話にも登場するエルナンデスの愛娘のエミリアは1945年にヘスス・ベレサール・ガルシア(1920~1986)と結婚。ベレサールはアグアドの正統的な後継者として、その精神的な面までも受け継ぎ、名品を世に出す存在になります。

アグアドがギター製作を始めるうえでの大きなきっかけとなったデ・ラ・マーサはその後彼らのギターを数本購入し愛用しているほか、ジョン・ウィリアムスやユパンキなどの名手たちが使用しています。

[楽器情報]
エルナンデス・イ・アグアド 1965年製 No.304 の入荷です。ブランドの最盛期、ギターという楽器の表現力における異様なまでのポテンシャルの高さを体感できる一本です。増え続けるバックオーダーへの対応策として、また特に1960年代後期からは病身であったビクトリアーノの「代理」として複数の製作家が起用されたことから、二人の真の共作であることがギターファンの間ではとかく価値基準とされてしまう向きがあり、ここであの駒板の補強プレートに描かれたてるてる坊主のような図像の有無が取り沙汰されてしまうのですが、本作にはまさしくその図像が描かれています。

‘Making Master Guitar’の著者ロイ・コートナルが喝破したようにアグアドの魅力(の一つ)は「強烈な個性を演奏家に押しつけないこと」であり、美しく調和したギターはただただ「生命を与えられるまで演奏家の技能や解釈を待っている」。そして敢えて付言すれば、アグアドの最大の特徴はその「歌う声」としての音の全き実在性にあると言えます。点の連なりとしてしか音を繋げてゆくことのできないギターが、アグアドにおいては有機的な線を生み出し、まさに生き物のように繊細でダイナミックな表情の揺らぎが現れてくるのは感動的ですらあるでしょう。この時、コートナルが言うように、あくまでも楽器が持つ個性ではなく、奏者の心に寄り添うように音が表出されるところ、そして曲の演奏が進むにつれてまるで楽器のほうから自然に音楽を提案してくるような一体感(今風に言えばグルーヴ感とも言うことのできる)が生まれてくるのは、まさしくアグアドならでは。これもまたよく言われるように各音各弦の相互の均質性ということではかなりのアンバランスさが随所で目立つものの、むしろ表情の生々しい揺らぎの中に収まることで音楽の細部に貢献さえしてしまうところは、楽器の不完全性と音楽の原理とが偶然に親和してしまったかのようなスリルさえ感じさせます。「個性を押しつけることはない」もののアグアドには他にはない唯一無二の音色があり、それはクラシカルな翳を内包した慎ましい明るさなのですが、揺るぎない力強さとともに現れるこれらの音もやはり魅力的。

アグアドはまた機能的にも優れており、撥弦における適度な反発感と粘りのある発音、そして自然にドライブ感を生み出すような絶妙な反応性があり、奏者のタッチにしっかりと寄り添います。そしてまさにこれゆえにこそ奏者にはしかるべきタッチの熟練が求められるのですが、一致した瞬間の音楽的な充実感はなんとも素晴らしく、このブランドが現代においても名品とされる所以でしょう。

表面板力木配置に関してアグアドはいくつもの設計パターンを持っていますが、本器ではサウンドホール上下(ネック側とブリッジ側)に1本ずつのハーモニックバー、そして下側の方のバーのほぼ中央部分(つまりサウンドホールの真下の位置)から高音側横板に向かって斜めに下がってゆくように配置されたもう一本のいわゆるトレブルバー、7本の扇状力木とこれらの先端をボトム付近で受け止めるようにハの字型に配置された2本のクロージングバー、駒板の位置にはほぼ同じ面積の薄い補強プレート(「落書き」と製造番号がここに書かれています)が貼られているという全体の構造。上記のトレブルバーの設置はこの後も継続してゆきますが、扇状力木は後年6本(センターに配置された1本を境として高音側に2本、低音側に3本)に変わり定着してゆきます。レゾナンスはG#の少し下に設定されています。

おそらくボディ全体はオリジナルの塗装を残したまま上塗りがされていますが、オリジナルの触感を十分に感じさせるほどに最小限の処置が施されています。現状で傷は少なく、ほとんど衣服等により軽微な摩擦あとのみの良好な状態。割れなどの大きな修理履歴はありません。ネック、フレットなど演奏性に関わる部分も良好な状態を維持しています。ネック形状は薄めでフラットなDシェイプでコンパクトな握り心地。弦高は現在値で3.0/4.5mm(1弦/6弦 12フレット)でサドルには1.5~2.5mmの余剰がありますのでお好みに応じてさらに低く設定することが可能です。660mmの弦長ですが弦の張りは中庸でネックの差し込み角度も深くなく、弦高値の割には弾きやすく感じます。糸巻はスペインの老舗Fustero製を装着しておりこちらも現状で機能的な問題は特にありません。


定価(税込) : 時価 販売価格(税込) :  お問い合わせ下さい。

製作家/商品名 エルナンデス・イ・アグアド Hernandez y Aguado
モデル/品番 Model/No. No.343
001_018_hernanagua_03_167
弦長 Scale Length 660mm
国 Country スペイン Spain
製作年 Year 1967年
表板 Top 松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides 中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option ライトケース
備考 Notes
ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:表板 セラック
   :横裏板 セラック
糸 巻:フステーロ
弦 高:1弦 3.0mm
   :6弦 4.0mm

[製作家情報]
「エルナンデス・イ・アグアド」Hernandez y Aguado
サンチャゴ・マヌエル・エルナンデス(1895~1975)と ビクトリアーノ・アグアド・ロドリゲス(1897~1972)の二人による共同ブランドで、エルナンデスが本体の製作、アグアドが塗装とヘッドの細工そして全体の監修をそれぞれ担当。通称「アグアド」と呼ばれ、20世紀後半以降の数多くのクラシックギターブランドの中でも屈指の名品とされています。

エルナンデスはスペイン、トレド近郊の村Valmojadoに生まれ、8歳の時に一家でマドリッドに移住。アグアドはマドリッド生まれ。2人はマドリッドにある「Corredera」というピアノ工房で一緒に働き、良き友人の間柄であったといいます。この工房でエルナンデスは14歳のころから徒弟として働き、その優れた技術と情熱的な仕事ぶりからすぐに主要な工程を任されることになります。アグアドもまたこの工房で腕の良い塗装職人としてその仕上げを任されていたので、二人での製作スタイルのひな形がこの時すでに出来上がっていたと言えます。1941年にこのピアノ工房が閉鎖された後、2人は共同でマドリッドのリベラ・デ・クルティドーレス9番地にピアノと家具の修理工房を開きます。

1945年、プライベート用に製作した2本のギターについて、作曲家であり当時随一の名ギタリストであったレヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサに助言を仰ぐ機会を得ます。この名手は二人の才能を高く評価し、ギター製作を勧めるとともに自身が所有していたサントス・エルナンデスのギターを研究のために貸し与えています。さらにはサントスと同じくマヌエル・ラミレス工房出身の製作家で、終戦直後の当時貧窮の中にあったモデスト・ボレゲーロ(1893~1969)に仕事のためのスペースを工房内に貸し与えることになり、そのギター製作の工程をつぶさに観察。これが決定的となり、ギターへの情熱がさらに高まった二人は工房をギター製作に一本化することに決め、1950年より再発進します。デ・ラ・マーサという稀代の名手とマヌエル・ラミレスのメソッドを深く知るボレゲーロ(彼は1952年までアグアドの工房を間借りして製作を続けた後に独立しています)という素晴らしい二人の助言をもとに改良、発展を遂げて世に出されたアグアドのギターは大変な評判となり、一時期70人以上ものウェイティングリストを抱えるほどの人気ブランドになりました。

出荷第一号はNo.100(※1945年に製作した個人用のギターがNo.1)で、1974年の最後の一本となるNo.454まで連続番号が付与されました。1970年前後に出荷されたものの中には同じマドリッドの製作家マルセリーノ・ロペス・ニエト(1931~2018)や、やはりボレゲーロの薫陶を受けたビセンテ・カマチョ(1928~2013)が製作したものも含まれており、これは殺到する注文に応えるため、エルナンデスが当時高く評価していた2人を任命したと伝えられています。

しばしば美しい女性に喩えられる優美なボディライン、シンプルで個性的かつこの上ない威厳を備えたヘッドデザインなどの外観的な特徴もさることながら、やはりこのブランドの最大の特徴はその音色の絶対的ともいえる魅力にあると言えるでしょう。人間の声のような肌理をもち、表情豊かで温かく、時にまるで打楽器のような瞬発性とマッシヴな迫力で湧き出してくる響きと音色は比類がなく、二人だけが持つある種の天才性さえ感じさせます。

このブランドの有名な逸話にも登場するエルナンデスの愛娘のエミリアは1945年にヘスス・ベレサール・ガルシア(1920~1986)と結婚。ベレサールはアグアドの正統的な後継者として、その精神的な面までも受け継ぎ、名品を世に出す存在になります。

アグアドがギター製作を始めるうえでの大きなきっかけとなったデ・ラ・マーサはその後彼らのギターを数本購入し愛用しているほか、ジョン・ウィリアムスやユパンキなどの名手たちが使用しています。

[楽器情報]
エルナンデス・イ・アグアド 1967年製 No.343 の入荷です。ラベルには「私の小さな孫へ」との直筆の文言が書かれており、プライベートに製作された一本であることがうかがえます。ロゼッタが有名なジグザグの模様ではなく細やかな落ち着いた意匠になっており、これもあまりにも有名なヘッドデザインはその曲線部分などにやや優美なニュアンスが感じられるものになっているのですが、内部設計のほうは後期アグアドの典型的なものが採用されています。サウンドホール上下(ネック側とブリッジ側)に各一本のハーモニックバー、そして下側の方のバーの中央からわずかに低音寄りの部分から高音側横板の方向に斜めに下がってゆくように配置されたもう一本のいわゆるトレブルバー、扇状力木は6本がセンターに配された1本を境として低音側に3本、高音側に2本を配置、ボトム部でこれらの先端を受け止めるようにハの字型に配置された2本のクロージングバー、駒板の位置には補強板が丁度駒板の幅と合致するように(同時に一番低音側の一本を除く5本の扇状力木の範囲に丁度収まるように設置されているという全体の設計。駒板部分の補強板は厳密にいえばアグアドとしてはやや厚めに2mmほどの厚みのものとなっています。またこの部分に年式や製造番号などは記載されておりません。レゾナンスはGの少し上に設定されています。

アグアドの特徴である実に適切な、それゆえにこそ個性的な粘りと反発感のある発音と引き締まった音像というよりは、箱全体を十全に響かせてオーディトリアムな奥行きと力強さを持った、良い意味でマドリッド的な響きが特徴です。そしてこのブランドのもう一つの特徴である表情の繊細と機微においてはやはりさすがで、可憐さから豪壮までの振幅があり、そしてとても音楽的。高音はあくまでもきりっとして女性的でさえあり、中低音から低音のふっくらとした拡がりがそれを包むように響く全体のバランスも心地よい。またアグアドは演奏性における機能面でも秀逸で、ネックの差し込み角度等の設定による絶妙さゆえか左手はストレスがなく、弦のテンションも中庸から弱めであるのに音自体には張りと力強さがあり(これについては弦長660mmの設定であることも関係しているでしょう)、発音の反応性も優れています。

表面板全体(特に指板両脇とサウンドホールの高音側、駒板下部分など)に弾きキズや搔きキズありますがあまり深くなく、外観を著しく損なうものではありません。また横裏板とネック裏は衣服等による細かな摩擦あとや数か所の小さな打痕とキズはありますが軽微なものとなっており、年代を考慮すると良好な状態と言えます。割れ等の修理歴もありません。ネック、フレット等の演奏性にかかかわる部分も適正な状態。ネックシェイプはDシェイプの薄めの形状でグリップ感が良く、弦高値は3.0/4.0mm(1弦/6弦 12フレット)でサドル余剰は1.0~2.0mmあります。糸巻はスペインの老舗ブランド Fustero製を装着、こちらも現状で機能的な問題はありません。


定価(税込) : 時価 販売価格(税込) :  お問い合わせ下さい。

製作家/商品名 エルナンデス・イ・アグアド Hernandez y Aguado
モデル/品番 Model/No. No.363
001_018_hernanagua_03_168
弦長 Scale Length 660mm
国 Country スペイン Spain
製作年 Year 1968年
表板 Top 杉 Solid Ceder
横裏板 Back & Sides 中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option HISCOX ケース
備考 Notes
ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:表板 セラック
   :横裏板 セラック
糸 巻:フステーロ
弦 高:1弦 2.8mm
   :6弦 4.0mm

[製作家情報]
「エルナンデス・イ・アグアド」Hernandez y Aguado
サンチャゴ・マヌエル・エルナンデス(1895~1975)と ビクトリアーノ・アグアド・ロドリゲス(1897~1972)の二人による共同ブランドで、エルナンデスが本体の製作、アグアドが塗装とヘッドの細工そして全体の監修をそれぞれ担当。通称「アグアド」と呼ばれ、20世紀後半以降の数多くのクラシックギターブランドの中でも屈指の名品とされています。

エルナンデスはスペイン、トレド近郊の村Valmojadoに生まれ、8歳の時に一家でマドリッドに移住。アグアドはマドリッド生まれ。2人はマドリッドにある「Corredera」というピアノ工房で一緒に働き、良き友人の間柄であったといいます。この工房でエルナンデスは14歳のころから徒弟として働き、その優れた技術と情熱的な仕事ぶりからすぐに主要な工程を任されることになります。アグアドもまたこの工房で腕の良い塗装職人としてその仕上げを任されていたので、二人での製作スタイルのひな形がこの時すでに出来上がっていたと言えます。1941年にこのピアノ工房が閉鎖された後、2人は共同でマドリッドのリベラ・デ・クルティドーレス9番地にピアノと家具の修理工房を開きます。

1945年、プライベート用に製作した2本のギターについて、作曲家であり当時随一の名ギタリストであったレヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサに助言を仰ぐ機会を得ます。この名手は二人の才能を高く評価し、ギター製作を勧めるとともに自身が所有していたサントス・エルナンデスのギターを研究のために貸し与えています。さらにはサントスと同じくマヌエル・ラミレス工房出身の製作家で、終戦直後の当時貧窮の中にあったモデスト・ボレゲーロ(1893~1969)に仕事のためのスペースを工房内に貸し与えることになり、そのギター製作の工程をつぶさに観察。これが決定的となり、ギターへの情熱がさらに高まった二人は工房をギター製作に一本化することに決め、1950年より再発進します。デ・ラ・マーサという稀代の名手とマヌエル・ラミレスのメソッドを深く知るボレゲーロ(彼は1952年までアグアドの工房を間借りして製作を続けた後に独立しています)という素晴らしい二人の助言をもとに改良、発展を遂げて世に出されたアグアドのギターは大変な評判となり、一時期70人以上ものウェイティングリストを抱えるほどの人気ブランドになりました。

出荷第一号はNo.100(※1945年に製作した個人用のギターがNo.1)で、1974年の最後の一本となるNo.454まで連続番号が付与されました。1970年前後に出荷されたものの中には同じマドリッドの製作家マルセリーノ・ロペス・ニエト(1931~2018)や、やはりボレゲーロの薫陶を受けたビセンテ・カマチョ(1928~2013)が製作したものも含まれており、これは殺到する注文に応えるため、エルナンデスが当時高く評価していた2人を任命したと伝えられています。

しばしば美しい女性に喩えられる優美なボディライン、シンプルで個性的かつこの上ない威厳を備えたヘッドデザインなどの外観的な特徴もさることながら、やはりこのブランドの最大の特徴はその音色の絶対的ともいえる魅力にあると言えるでしょう。人間の声のような肌理をもち、表情豊かで温かく、時にまるで打楽器のような瞬発性とマッシヴな迫力で湧き出してくる響きと音色は比類がなく、二人だけが持つある種の天才性さえ感じさせます。

このブランドの有名な逸話にも登場するエルナンデスの愛娘のエミリアは1945年にヘスス・ベレサール・ガルシア(1920~1986)と結婚。ベレサールはアグアドの正統的な後継者として、その精神的な面までも受け継ぎ、名品を世に出す存在になります。

アグアドがギター製作を始めるうえでの大きなきっかけとなったデ・ラ・マーサはその後彼らのギターを数本購入し愛用しているほか、ジョン・ウィリアムスやユパンキなどの名手たちが使用しています。


[楽器情報]
エルナンデス・イ・アグアド 1968年製 No.363 の入荷です。ブランドとしては珍しく、表面板に杉材を使用したモデル。表面板力木配置はアグアド後期の典型的なもので、サウンドホール上下(ネック側とブリッジ側)に各一本のハーモニックバー、そして下側の方のバーのほぼ中央部分(つまりサウンドホールの真下の位置)から高音側横板との接合部に向かって斜めに下がってゆくように配置されたもう一本のいわゆるトレブルバー、扇状力木は6本がセンターに配された1本を境として低音側に3本、高音側に2本を配置、ボトム部でこれらの先端を受け止めるようにハの字型に配置された2本のクロージングバー、駒板の位置には薄い補強板が丁度駒板の幅と合致するように(同時に一番低音側の一本を除く5本の扇状力木の範囲に丁度収まるように設置されているという全体の設計。レゾナンスはGの少し上に設定されています。

アグアドの発音の特徴として、撥弦時の適度な粘りと反発感を伴いながら、実に適切な質量を持った音像の跳躍するような発音とひとまずいうことができますが、本作ではこの粘りと反発感が薄れ、ストレスのない発音になっています。しかしながらいたずらに放射してゆくようなプロジェクションではなく、音としての上品で確かな佇まいがあり、色彩は控えめながらも表情の機微と多様さはやはり人間の声にも比すべきもので、非常に音楽的。基音の硬質さとほんのりとエコーをまとったような響きに杉材の特徴が現れており、また特に高音の純度の高い樹脂のような音像は魅力的。全体に各音の分離も優れ、低音から中低音そして高音に至るバランスも秀逸です。

裏板はセンターからやや低音寄りの部分、木目に沿って約40センチほどの割れ埋木補修歴がありますが、非常に適切な処置がされていますので継続しての使用に問題なく、また外観にもほとんど影響ありません。全体はセラックによる再塗装が施されており、現状でほんのわずかなスクラッチ傷や微細な打痕があるのみでとても綺麗な状態です。またフレットも全交換がされておりこちらも現状で(ピッチ含め)適正値の状態。ネックの状態も完璧と言える設定を維持しています。ネックシェイプは薄めのDシェイプでコンパクトなグリップ感。弦高値は2.8/4.0mm(1弦/6弦 12フレット)でサドル余剰は2.5mmあります。弦の張りは中庸でとても押さえやすいので現状でも弾き易く感じますが、お好みに応じて弦高はさらに低く設定することが可能です。糸巻はスペインの老舗ブランドFustero製を装着。重量は1.38kgとこのブランドとしてはやや軽めの造りになっています。


定価(税込) : 時価 販売価格(税込) :  お問い合わせ下さい。

製作家/商品名 イグナシオ・フレタ・エ・イーホス Ignacio Fleta e Hijos
モデル/品番 Model/No. No.750
001_019_fletahijos_2_03_179
弦長 Scale Length 650mm
国 Country スペイン Spain
製作年 Year 1979年
表板 Top 杉 Solid Ceder
横裏板 Back & Sides 中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option ハードケース(Bam)
備考 Notes
ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:表板 セラック
   :横裏板 セラック
糸 巻:フステーロ
弦 高:1弦 3.0mm
   :6弦 4.1mm


[製作家情報]
イグナシオ・フレタ1世(1897~1977)により設立され、のちに二人の息子フランシスコ(1925~200?)とガブリエル(1929~2013)との共作となる、スペイン、バルセロナの工房。このブランドを愛用した、または現在も愛用し続けている数々の名手たちの名を挙げるまでもなく、20世紀後半以降を代表する銘器の一つとして、いまも不動の人気を誇っています。

フレタ家はもともと家具製作など木工を生業とする家系で、イグナシオも幼少からそのような環境に馴染みがありました。13歳の頃に兄弟とともにバルセロナで楽器製作工房の徒弟となり、更に研鑽を積むためフランスでPhilippe Le Ducの弦楽器工房でチェロなどのヴァイオリン属の製作を学びます。その後フレタ兄弟共同でバルセロナに工房を設立し、ギターを含む弦楽器全般を製作するブランドとして第一次大戦前後でかなりの評判となりますが、1927年に工房は解散。イグナシオは自身の工房を設立し、彼の製作するチェロやヴァイオリンをはじめとする弦楽器は非常に好評でその分野でも名声は高まってゆきます。同時に1930年ごろからトーレスタイプのギターも製作していましたが、1955年に名手セゴビアの演奏に触れ、そのあまりの素晴らしさに感動しギター製作のみに転向することになります。フレタは巨匠の演奏から霊感をも受けたのか、その新モデルはトーレススタイルとは全く異なる発想によるものとなり、1957年に製作した最初のギターをセゴビアに献呈。すると彼はその音響にいたく感動し、自身のコンサートで使用したことで一気にフレタギターは世界的な名声を得ることになります。それまでのギターでは聞くことのできなかった豊かな音量、ダイナミズム、そしてあまりにも独特で甘美な音色でまさしくこのブランドにしかできない音響を創り上げ、セゴビア以後ジョン・ウィリアムスやアルベルト・ポンセなどをはじめとして数多くの名手たちが使用し、20世紀を代表する名器の一つとなりました。

当初はIgnacio Fletaラベルで出荷され、1965年製作のNo.359よりラベルには「e hijos」と記されるようになります(※実際には1964年製作のものより~e hijos となっておりフレタ本人の記憶違いの可能性があります)。1977年の1世亡き後も、また2000年代に入りフランシスコとガブリエルの二人も世を去ったあともなお、「Ignacio Fleta e hijos」ラベルは継承され、現在は1世の孫にあたるガブリエル・フレタが製作を引き継いでいます。

[楽器情報]
イグナシオ・フレタ・エ・イーホス 1979年製 No.750 Usedの入荷です。イタリアのギタリスト、ステファノ・グロンドーナの依頼により作られた1本で、表面板はイーホスの通常仕様である杉材ですが、横裏板には良質なハカランダ材が使用されています。

太鼓を叩いたような、パーカッシブで響箱の空間性をたっぷりと感じさせる音響で、このブランドらしい非常な音圧の高さを備えた鳴りがまずは印象的。フレタ・エ・イーホスはおおよそ同様の発音特性をもったものとなっていますが、弦のアタック感が生々しく、時に野放図な音響になってしまうことがあるのですが、本作においては実にきれいにまとまっており、音の表面はこれぞ杉材(Western red ceder)とハカランダ(Rio rosewood)の組み合わせならではと思わせるほどに艶やかに磨かれ、全体はしっかりと迫力のあるロマンティックな響きに着地させています。フレタ一世の特に初期の作のように多層的な音響フェーズがまるで室内楽的な彫塑性を生み出していた音響とは異なり、ここでのフレタ・エ・イーホスはあくまでも一つのギターにおけるまとまりのある音響として構築しており、そのあまりにも迫力ある鳴りとは相反するようにある種古典的とさえ言えるような佇まいは、数多いこのブランドのギターの中でも本作をやや特殊な個性で彩っており、ギターファンとしてはこれはオーナーであるグロンドーナを意識してなのかという興味さえ喚起するものとなっています。

表面板力木配置は、サウンドホール上下(ネック側とブリッジ側)に各2本のハーモニックバーが設置されていますが、下側のハーモニックバーは1本は表面板を水平に横切り、もう1本は低音側から高音側に向けてわずかに斜めに下がってゆくように設置されています。このバーより下側は合計9本の扇状力木と、これらの力木の下端をボトム部で受けとめるようにV字型に配置された2本のクロージングバー、駒板位置にはその幅よりもやや広めにとられた補強用の薄いプレートが貼られています。補強用のプレートはサウンドホールの周りにも計4枚、さらにはサウンドホール上側2本のハーモニックバーの間に1枚とネック脚に至るまでのエリアをほぼ満遍なく覆うようにもう1枚が貼り付けられており(これら2枚のみメイプル材を使用)、ボディウェストから上側の全域が、計4本のハーモニックバーの設置も含めて、しっかりと強固に固定されていることが分かります。またボトム部に設置されている2本のクロージングバーは高音側よりも低音側に設置されたバーのほうがわずかに長くなっており、厳密には「V字型」ではなく逆「ヘ」の字型になっています。レゾナンスはG#の上、ほぼG#とAの中間の位置に設定されています。

全体はセラック塗装で出荷時のオリジナル仕様となっています。表面板は全体に細かな塗装のひび割れ(ウェザーチェック)が生じていますが現状で今後の使用には問題なく、また外観を損ねるほどのものでもありません。同じく表面板の指板両脇、サウンドホール周辺や駒板下部分、ボトム付近などに小さく浅い打痕等が数か所あるほかはきれいな状態を維持しています。横裏板は衣服等による極めて軽微な摩擦跡の他は若干の塗装のムラ等があるのみで、こちらに関しても経年による自然変化の範囲内のものとなっており、ネック裏も高音側にわずかな爪の掻きキズがあるのみのとても良い状態です。割れや改造等の大きな修理履歴はありません。ネック、フレットなどの演奏性に関わる部分も極めて良好です。ネック形状は薄めのDシェイプでややラウンドな感触のグリップ感。弦高値は3.0mm/4.1mm(1弦/6弦 12フレット)でサドル余剰は0.5mmとなっています。糸巻はスペインの老舗工房フステーロのシルバープレート、黒蝶貝のシックなボタン仕様のものを装着し、外観のさりげないアクセントになっています。ボディ重量は1.68㎏。ステファノ・グロンドーナ直筆の証明書付き。




定価(税込) : 時価 販売価格(税込) :  お問い合わせ下さい。

製作家/商品名 イグナシオ・フレタ1世 Ignacio Fleta I演奏動画あり
モデル/品番 Model/No. No.124
001_019_fletaI_1_03_158
弦長 Scale Length 660mm
国 Country スペイン Spain
製作年 Year 1958年
表板 Top 松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides インディアンローズウッド Solid Indian Rosewood
付属品 Option ハードケース
備考 Notes
ネック:セドロ
指 板:黒檀
塗 装:セラックニス
糸 巻:フステーロ
弦 高:1弦 2.8mm
   :6弦 4.0mm

[製作家情報]
イグナシオ・フレタ1世(1897~1977)により設立され、のちに二人の息子フランシスコ(1925~200?)とガブリエル(1929~201?)との共作となる、スペイン、バルセロナの工房。このブランドを愛用した、または現在も愛用し続けている数々の名手たちの名を挙げるまでもなく、20世紀後半以降を代表する銘器の一つとして、いまも不動の人気を誇っています。

フレタ家はもともと家具製作など木工を生業とする家系で、イグナシオも幼少からそのような環境に馴染みがありました。13歳の頃に兄弟とともにバルセロナで楽器製作工房の徒弟となり、更に研鑽を積むためフランスでPhilippe Le Ducの弦楽器工房でチェロなどのヴァイオリン属の製作を学びます。その後フレタ兄弟共同でバルセロナに工房を設立し、ギターを含む弦楽器全般を製作するブランドとして第一次大戦前後でかなりの評判となりますが、1927年に工房は解散。イグナシオは自身の工房を設立し、彼の製作するチェロやヴァイオリンをはじめとする弦楽器は非常に好評でその分野でも名声は高まってゆきます。同時に1930年ごろからトーレスタイプのギターも製作していましたが、1955年に名手セゴビアの演奏に触れ、そのあまりの素晴らしさに感動しギター製作のみに転向することになります。フレタは巨匠の演奏から霊感をも受けたのか、その新モデルはトーレススタイルとは全く異なる発想によるものとなり、1957年に製作した最初のギターをセゴビアに献呈。すると彼はその音響にいたく感動し、自身のコンサートで使用したことで一気にフレタギターは世界的な名声を得ることになります。それまでのギターでは聞くことのできなかった豊かな音量、ダイナミズム、そしてあまりにも独特で甘美な音色でまさしくこのブランドにしかできない音響を創り上げ、セゴビア以後ジョン・ウィリアムスやアルベルト・ポンセなどをはじめとして数多くの名手たちが使用し、20世紀を代表する名器の一つとなりました。

当初はIgnacio Fletaラベルで出荷され、1965年製作のNo.359よりラベルには「e hijos」と記されるようになります(※実際には1964年製作のものより~e hijos となっておりフレタ本人の記憶違いの可能性があります)。1977年の1世亡き後も、また2000年代に入りフランシスコとガブリエルの二人も世を去ったあともなお、「Ignacio Fleta e hijos」ラベルは継承され、現在は1世の孫にあたるガブリエル・フレタが製作を引き継いでいます。

[楽器情報]
イグナシオ・フレタ1世 1958年製 No.124。独特の音響と音色、機能性の高さ、構造と外観、その全ての有機的なバランスと芸術性で現在においてさえ比類のない、名品中の名品と言える素晴らしい一本です。

このブランドの歴史を俯瞰すれば、この後1960年代半ばより彼の息子達との共同作業に移ることで生産性を高め、数々の名手たちの使用によってそのイメージが一気に世界中に広まってゆくことになりますが、それに呼応するかのように楽器もまた構造的、音響的に変化してゆくことになります。本作1958年製はそうしたマーケット事情が少なからずブランドに影響を及ぼす以前の(セゴビアに献呈した有名な1957年製の翌年の作)、フレタ1世の音楽的芸術性が顕著に、しかも高次において達成された楽器となっています。

音像はまるで弦楽器のように強くまろやかで、低い重心感覚(レゾナンスはEの少し上)による音響全体が一つの発声体としての表情と肌理をもち、常に上品さを保ちながら、チャーミングとさえ言えるほどの繊細さから英雄的な剛健さまでの(クラシック音楽に不可欠な)大きな振幅を十全に表出します。加えて演奏における多様な身振り(スタッカートやスラー、クレッシェンド等々)での機能性の高さ、まるでタッチと完全にシンクロするかのような発音など、その自然な反応も素晴らしく、奏者は感情と音とが理想的に一致しているような感覚を得ることができます。ブランドの特徴とされている音量の非常な豊かさももちろんのこと、たっぷりと情感をたたえたジェントルな響きはまさにフレタ1世の独壇場で、その後の彼の作においてさえついに現れることのない馥郁たる鳴りが素晴らしい。そのロマンティックな響きのなかから奏者も予期せぬ音楽の提案がされてくる感覚があり、表現楽器としての無限のポテンシャルを感じさせる、名器と呼ぶにふさわしい一本となっています。

表面板内部構造はサウンドホール上(ネック側)に2本、下(ブリッジ側)に1本のハーモニックバーで、下側のバーは低音側から高音側に向けてほんのわずかに斜めに下がってゆくように設置されています。その下に左右対称9本の扇状力木とそれらの先端をボトム部で受け止める2本のV字型に配置されたクロージングバー、駒板位置に横幅いっぱいにあてられた薄いパッチ板、そしてサウンドホール両脇に貼られたやや厚めの補強板という構造。レゾナンスはEの少し上という設定となっています。表面板の厚みは薄めに加工されており、9本の扇状力木とクロージングバーは幅8㎜、高さ1㎜ほどの薄くフラットな形状をしているなど、のちのフレタの構造とは異なり細部の繊細さが特徴となっている。対してバーは裏板も含めどれも強固な作りですが、サウンドホール下の斜めに傾斜したハーモニックバーはのちに2本に増えており、やはりここでも振動の抑制に関してのコンセプトの変化が見られるのは興味深い。重量は1.64㎏。

表面板指板両脇に合計5か所、サウンドホールからブリッジにかけて1か所、ブリッジ下3か所の割れ補修履歴があります。裏板ネックヒール部両脇に1か所ずつ、エンドブロック部両脇に1か所ずつの合計4か所に割れ修理履歴があります。表面板は弦の張力による凹凸がブリッジ上下で生じていますが現状で継続しての使用には問題ありません。全体に弾きキズ打痕等は年代相応にあります。ネック、フレットなどの演奏性に関わる部分は良好で、ネックシェイプはCに近いラウンド感のあるDシェイプで握りやすいグリップ感。660㎜スケールですが弦の張りも中庸で弾きやすく感じます。






品切れ 定価(税込) : 時価 販売価格(税込) :  お問い合わせ下さい。


株式会社アウラ
〒110-0004
 東京都台東区下谷
 3-3-5アズール上野2F

TEL 03-3876-7207
FAX 03-3876-7206
営業時間 11:00-19:00
 (定休日:毎週水曜日)