内部構造はオリジナルの構造にほぼ正確に準拠。サウンドホール上(ネック側)に2本、下側(ブリッジ側)に1本で計3本のハーモニックバーを設置、それらすべてのバーの高音側と低音側とに1か所ずつ開口部が設けられ、それらの開口部を垂直に交わるように(つまり表面板木目と同方向に)通過する形で高音側2本、低音側2本の力木がボディの肩部分からくびれ部分まで伸びるように平行に設置されています。そしてボディ下部(くびれより下の部分)は、左右対称7本の扇状力木に、センターの1本以外の6本の先端をボトム部で受け止めるちょうどハの字型に設置された2本のクロージングバー、ブリッジ位置には駒板と同じ大きさの薄いプレート板が貼られているという全体の構造。表面板と横板の接合部には大小のペオネス(椅子型と三角形型の木製のブロック)を交互にきれいに設置してあります。これらの配置的特徴はホセ・ルイス・ロマニリョス著「Making a Spanish Guitar」の中ではPlan1として掲載されているものと同じもので、トーレス=ハウザー的スタイルをロマニリョスが再構築したものとしてスタンダード化している設計の一つ。重量は1.58㎏。レゾナンスはF#の少し上の設定になっています。
[楽器情報] 禰寝碧海 製作のオリジナルモデル 2024年新作 ’Fuente de las Batallas’ の入荷です。ラベルに記されたこのモデル名はグラナダの街に散在する壮麗で優美な噴水の名前であり、前作の’Cuesta de Caidero’ とともに彼の出自たるこのスペイン屈指のギター製作の街と師アントニオ・マリンへの敬意を自らの作品をもって表わした1本です。そしてラベルとは別にボディ内部に直筆でHomenaje a Maestro Antonio Marin'と記された本作は、あくまで師のスクリプトを採用したという点においては禰寝碧海氏の原点回帰の一作ということができます。そして特筆すべきはここでも彼はオリジナルの「再現」などに努めるわけもなく、師の製作美学を実地に吸収し尽くしたその体感とともに異様なまでの解像度で洗練させた一本として提示していることで、まさに傑作と言える楽器となっています。