〔楽器情報〕 桜井正毅ブランドのラインナップの中ではミドルエンドに位置づけられている model P.C.(Paris Competition) いわゆるパリコンモデル 2019年 No.10519 A Used の入荷です。文字通り1988年のコンクール入賞作をベースとして、その後の研究によるアップデートを加えた、ブランドコンセプトの粋を集めたような1本です。
表面板内部構造はサウンドホール上(ネック側)に横幅いっぱいに貼られた1枚の補強板と1本のハーモニックバー、下側(ブリッジ側)にも1本のハーモニックバーを設置し、この2本のバーはそれぞれ高音側と低音側とに1か所ずつ長さ4センチ高さ5mmほどの開口部が設けられ、それらの開口部を垂直に交わるように(つまり表面板木目と同方向に)通過する形で2本ずつ平行に設置されています。そしてボディ下部(くびれより下の部分)は、左右対称7本の扇状力木に、センターの1本以外の6本の先端をボトム部で受け止めるようにハの字型に設置された2本のクロージングバー、ブリッジ位置には駒板とほぼ同じ範囲に薄いプレート板が貼られているという全体の構造。これらの配置的特徴は若干の工夫が加えられていますが、一柳氏が傾倒する名工の一人ホセ・ルイス・ロマニリョスの代表的な力木配置を直ちに想起させるもので(ロマニリョス著「Making a Spanish Guitar」の中ではPlan1として掲載されている)、トーレス=ハウザー的スタイルをロマニリョスが再構築したものとしていまではなかばスタンダード化している設計の一つ。レゾナンスはGの少し上の設定になっています。